工場の新造改修は、知識と経験があるところで

2013/05/01 23:44 に 加藤光夫 が投稿   [ 2013/05/01 23:45 に更新しました ]

食品工場の経験が無いところだけで施工すると、あとで問題が出ることが相当ある。

西日本の菓子工場では、土台ができ上がった頃、HACCP対応が必要、ということを知り、見て欲しいと連絡が来た。図面を見たら、準清潔と清潔作業室の間に通路があったり、清潔作業室の隣にトイレがあったりと、欠陥がかなりあるので、完成を遅らせて、出来るだけ直すことにした。

全ては出来なかったが、ある程度は直すことが出来た。しかし、いまだに最初の設計の後遺症が出て来ている。

東日本の加工食品工場から「工場を建てて2年ほど立ったが、いまだに使いにくくてしょうがないので、見て欲しい」という依頼が来た。

外見は、幅木のR構造など、できている。しかし、包材庫の位置と構造、入出庫場所の作り、作業室間の移動の問題、事務所との連絡がしにくいなど、数々の問題がある。

頑丈な造りになっていて、隔壁や通路など、ゾーニングと動線を根本的に直すことはもう出来ない。従事者が長い距離を歩く、包材の供給作業が効率の悪いままなど、せっかくの新築工場が、コストアップと危険の多いものになってしまっていた。人とモノが動くコストがかかり、露出距離と時間が長くなるため、異物混入の危険性が高くなるのだ。

東北の総菜工場で大型のコンベアオーブンを入れたが、使える状態にならないので見て欲しいと言ってきた。こういった大型オーブンの場合、かなりの廃熱が出るので、ダクトを強化しないと作業室が高温になると言っておいたのだが、工事業者は「大丈夫」といったという。言う通り設置したら、やはり廃熱で駄目なのだ。

オーブンのメーカーと話をしたら「専用の強制排気ダクトが必要」で、この費用は別途だという。

大丈夫と言った工事業者が悪いのか、工事業者とメーカーとのコミュニケーションが悪かったのか。

 

西日本の加工食品工場では、工場全体の湿度が高く、天井からの結露とカビで悩んでいた。新築して1年も経っていない。

行ってみたら、広い工場のほぼ真ん中近くに大型の洗浄室がある。ここで使う大量の湯と蒸気が、この部屋の換気が悪いために、工場全体に広がっているのだ。

ダクトを強化すれば解決できると思ったのだが、この部屋の上は機械類がぎっしりと置いてあるので、大型の排気トンネルをかなりの距離這わせないとうまくいかない。高額になるし、費用対効果は悪い。

洗浄室は、外に直接排気できる場所にレイアウトするべきなのだ。

 

西日本の小型のサンドイッチ組立工場では、低湿度対策をとった新工場にした。作業室の壁側から低湿度の空気が入って来る。

使い始めてすぐに顧客からのクレームが入って来た。パンが乾燥している、パサパサだ、ジューシーさが無い。

旧工場では、湿度とカビの問題があったが、これは工場内の問題で、製品の品質クレームにはつながらなかった。

旧工場内のカビ問題を解決するために、新工場は最初から低湿に設計したのだ。

しかし、サンドイッチの組み立てでは、パンが乾いてしまうという問題になってしまったのである。

解決方法は、作業中の空調は、適正な高湿度にする。風流が、直接組み立て場所に当たらないようにする。作業を終了して清掃洗浄後、乾燥させ、湿度低減させる。ということになるのだが、この工事の費用をどうするかが問題だ。

 

東北の弁当工場に行ったら、新築後3年経ったが、ハード面の問題山積みで、設計施工したところを集めて会議を持ったという。責任者探しと改修に持っていくためだ。

蒸気の通るところに、塩ビパイプを使ってしまっている。外側はステンレスなので、内側は見えなかったのだが、壊れてきて中が見え、溶け出しているのがわかった。これは、水と、湯と、蒸気の違いを、業者が知らなかったためだ。

食器乾燥庫の機能は、大金をかけたのに、欠陥運用のままで、解決のメドが立っていない。これは他にもよくある問題なのだが、弁当容器を洗浄機に通すと、水滴がまだたっぷり付いた状態で出て来る機械が多い。その容器を乾燥する場所と方法が無いと、水分が着いたまま盛り付け室に行ってしまい、細菌増殖や、盛り付け室の湿度上昇になってしまう。

入庫の扉は、扉のシステムそのものが、密閉機能を持っていないものだ。そのくせ費用は高い。空気穴まで丁寧に空いている。

盛り付け室のソックダクトは、元の方にフィルターをつけていないので、ソックの中がすぐに汚れてしまう。なぜフィルターがついてなかったのか聞いたら「オプションである」。それなら費用はどうする。

 

他にも色々な問題を見ている。これらは悪気無くても知らないで進めた結果だ。

「知らない」ということは「問題点は知っているけど解決方法は知らない」という場合と、「知らないことも知らない」つまり問題になってから「そんなことは知らなかった」となるものだ。

 

HACCPの知識と経験がある業者は日本にはまだまだ少ない状況だ。

地元で経験と知識のある業者がいるところは当然少ない。

でも、将来のメンテナンスを考えると、地元の業者を使いたい。

ではどうしたらよいか。知識と経験のある業者と、地元業者のジョイントでやる方法はどうか。よい工場が出来るし、地元業者もノウハウを得ることが出来る。そしてそれを将来のメンテナンスに活かすことが出来る。

大金を使うし、いったん造ったら長い年月使うのだから、単に安いというだけで選定をして大失敗しないように、慎重に。


著作:株式会社 フーズデザイン 加藤光夫
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