豆腐工場の衛生管理のポイント

2013/05/06 18:40 に 松本リサ が投稿
食品の安全管理と衛生管理は二つのカテゴリーで分けられる。一つは「一般的衛生管理」と言われているもので、「5S」整理、整頓、清掃、清潔、躾、という形で行われているところが多い。これは全ての食品工場、家庭のキッチン、フードサービスの厨房で共通である。まず、きれいな工場、清潔なキッチンを作ることである。もう一つは食品の製造方法や特性を元に、安全にするための関所を決め、そこを徹底的に管理することで、これがHACCPである。加熱して製造をする食品では、一般的に75℃以上に加熱することで、食中毒菌を殺すことが出来る。また、金属探知器で金属異物を発見するというものである。

HACCPは食品ごとに違ってくる、牛乳ならば、原乳の受け入れの検査、加熱殺菌工程、パッケージ後の金属探知器、この三ヶ所がHACCPのCCPといわれる安全管理のポイントになる。豆腐では、加熱工程とパッケージ後の金属探知器がCCPになりそうなのだが、加熱工程で煮沸を行わなければ豆腐が出来ないわけで、このような場合は安全管理というよりも、製品が出来ないのだから、あえてCCPにしないところが多い。ということは金属探知器の一ヶ所だけがCCPになる。

CCPというのは「劇的」に危害を排除できる場所で、温度、時間といった科学的な根拠に基づいて安全にするものである。これに対して一般的衛生管理は、「きれい」といった目視で確認するものが多い。どこまできれいにすればよいのか、科学的にはATP測定器なども出て来てはいるのだが、一般的には目で見て確認となる。

豆腐のクレームというのは髪の毛やごみの混入、パッケージ不良といったのが多いが、これらは清掃をしっかりしていなかったとか、作業帽をしっかりかぶっていなかった、パッケージ機械のメンテナンスが甘かった、といった一般的衛生管理が問題になっている。ということは、豆腐工場では一般的衛生管理をしっかりと行えばクレームが減ることになる。

一般的衛生管理は衛生管理面だけではなく、営業面でも重要である。販売先のスーパーやフードサービスのバイヤーが来たとき、汚れた工場では断られることさえあり得る。末端消費者が来たとき、汚い工場だったら、そのメーカーの豆腐は買いたくなくなるだろう。汚いから見せないというのなら、それも販売の弊害になる。顧客に喜んでみてもらえる工場にすることは、営業の重要なポイントなのである。

また、工夫できるところは出来るだけして、危害の元を少なくする。清掃しにくいところ、例えば機械の下を、機械の位置を上げて清掃しやすくすれば、ごみや虫の発生源を無くすことが出来る。落下する埃やごみの元、例えば天井周りにある埃溜まりを無くすなり、蓋をすれば、異物混入の確率が減る。危険なところを出来るだけ改善し、加えてサニテーションをしっかりとすれば、クレームは減っていくことになる。事実、一般的衛生管理を一年ほどかけて強化すると、クレームは必ず減ることは事例がしっかりと証明している。

事例だと分かりやすいので、ここでは、相模原にある共生食品の例を主として解説をする。共生食品は首都圏コープ事業連合に納入しており、ここ数年にわたって衛生管理を強化してきている。改修というハード面と、教育と運営のソフトの両面から地道に実施してきて、クレームの減少という実質的な効果を上げている。

動線とゾーニングについて

動線とゾーニングを整備することで、構造的にすっきりさせる。これによって交叉汚染を防ぐことが出来ると同時に、作業効率も良くなる。
最初の状態は、作業場全体が一つになっていて、衛生レベルが汚染ゾーンと準清潔ゾーンの二つのレベルにしか分けられなかった。また、製造室の装置類が渾然としており、交叉汚染しやすかった。これに加えて製造室の中をカゴ車やコンテナーが走り、これも異物混入などの危険をはらんでいた。
そこで、原料倉庫の外側の土地があったので、原料倉庫を新設し、空いたところに製造室にあったプラントを移した。これで製造室が広くなり、整備しやすくなった。
次に、パックした後の冷却槽の出口のところで仕切りをして、カゴ車やコンテナーが走る場所と区切りをつけ、同時に製造室をこれで独立させることが出来たので、ここを清潔ゾーンに格上げした。衛生レベルがトップの清潔ゾーンに入る従業員は新しく設置した仕切り壁の手前でもう一度手を洗って入ることにした。これで人もモノも清潔な状態になったので、パッケージ前にむき出しになった状態の豆腐も安全になったわけである。

大豆倉庫

床に簀の子を置いた状態で大豆袋を積み上げていると、原料大豆がきれいに無くなることがあまりなく、簀の子のどこかに大豆袋が置いてあることになり、簀の子の下の清掃が出来なくなってしまう。長い間このままだと、かなりのごみが溜まり、虫の発生の元にもなってしまう。これを防ぐには、20センチ以上下を開けた状態で積み上げられる台が必要になる。ステンレスで作ったり、ダネッジラックと呼ばれている台を置くと良い。また、外につながるシャッターのすき間から虫や埃が入る場合は、バーブラシを付けるなりしてプロテクトしたほうが良い。

蛇腹パイプ

大豆を浸漬槽に移動させたり、浸漬槽からグラインダーに移動させるパイプが全てビニール製の蛇腹パイプを使っていると、長い間に汚れがたまる。蛇腹パイプは清掃がしにくい。そこで、接続カ所などの一部の場所以外は、ステンレスパイプに変えると良い。特に浸漬槽の上はカバーがされていないのだから、この上に汚れたパイプがあったらごみが浸漬槽に直接入ることになる。

機械、装置、設備の下

よくある例は、パッケージ後の冷却水槽の下が、高さが数センチ程度しかなく、奥が深いために、清掃できなくなっていることである。清掃できなければどんどん汚れ、豆腐工場は水をたくさん使うので、湿気も多い。そこで奥の方に虫の発生源が出来、そこから小蝿が発生し、豆腐に混入することになる。
これを改善するには、位置を高くすることである。水槽だけでなく機械装置は重たいので、しっかりした土台を使って、デッキブラシや水切りワイパーを入れることが出来る20センチぐらいの高さにあげる。清掃が楽になればきれいに簡単にすることが出来る。

製品がむき出しになっている場所の上部

例えばパッケージ前の製品が流れているうえを見ると、埃だらけのパイプや電源ケーブルなどがある。高さがあるので清掃できないままなので、埃はますますたまることになる。ではどうすればよいか。
移動したりして位置を変えることで防げる場合がある。移動できない場合、天井部分全体をカバーするなど大変な費用がかかるので、下の製品が流れている部分をカバーする。例えばコンベアーの上に乗せるカバーである。カバーは清掃時に簡単に取り外せるようにしておけばよい。天井部分を走っているパイプ類の上部を清掃する特殊なブラシもあるので、これらも併用して危険を減らすことである。

製品キャスターを高く、床近くにサンテナーを置かない

豆腐工場ではサンテナーを多用しているところが多い。サンテナーを床に近い位置に置くと、床からのはね水やごみに汚染される。パッケージ後であっても、冷水で冷却してきれいになったパックが、その後で汚れて顧客のところまで行ってしまえばクレームになる。顧客が工場見学に来たときに、床ぎりぎりに置いてある豆腐のパックは買いたくないと思うだろう。何しろすぐ横を長靴が行ったり来たりしているのだから。この対策は、60センチ以上の高さから積み上げるキャスターを作ると良い。60センチというのは厚生労働省のガイドラインなどで、この高さが「床からのはね水の汚染が無い位置」としているからだ。
サンテナーを保管するにも、床から高いほうが安心だ。このために置ける枚数が少なくなったり、多少作業効率が悪くなる場合もあるだろうが、その程度ならばクレーム対策を優先すべきだろう。

排水溝の蓋を外せれば外す

奥まったところをうめてしまえば、そこを清掃する必要がなくなる。冷蔵庫などの天板部分が天井に近い位置にあった場合、その間にほこりが溜まるので、定期的に清掃しなければならないが、ここをうめてしまえば清掃をする必要が無くなる。この考え方を工場内あちこちに当てはめていくと、相当楽になることになる。次に、清掃を楽にする方法を考える。例えば壁側に排水溝があり、そこの上を人が通ることが無ければ、排水溝の蓋を取ってしまったら良い。蓋の清掃をしなくて良いし、床清掃の延長でそのまま(蓋など取らずに)清掃できてしまうからである。

衛生管理徹底するには

このためには五つの項目を徹底する。内容、頻度、担当者、確認者、記録、である。清掃する場所、機械をリストアップし(内容)、毎日・毎週・毎月といった頻度を決め、清掃担当者、当番を決め、清掃した人以外がきれいになっているかどうかを確認し、それを記録を取ることである。特に頻度は重要である。

全ての元は教育

なぜきれいにしなければならないのか、やらないとどうなるのか、異物混入になり、クレームになってしまう。食中毒の元になってしまう、といった、なぜなのかを認識しないと、手を洗うとか帽子をかぶるといったルールを守らなくなってしまう。そのために、例えば毎週水曜日の昼休み後15分間、衛生教育を行うといった、定期的な活動をする必要がある。
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