床、幅木、排水溝

2013/05/01 20:51 に 加藤光夫 が投稿   [ 2013/05/01 21:08 に更新しました ]

床については、洗浄可能、漏れ止め、排水のための傾斜がポイント。


ISO22002とAIBでは、以下のように記述している。
[加工区域の壁及び床は清掃・洗浄が可能でなければならない:22002/5.3]
[ウェットな加工区域では床面は漏れ止めされ、及び排水できなければならない:22002/5.3]
[床は水溜りを避けるように設計されなければならない:22002/5,3]
[水や廃液が排水溝および排水ピットに向かって流れるように、床に傾斜を付けていること:AIB/2.5]
当然のことを書いているが、施工業者によっては、特に住宅施工業者では、床は平面が当たり前だと考えている所もあり、注意が必要だ。
傾斜は1/75程度が適当だが、工事がヘタで凹凸があると水溜りになる。
水溜まりが出来てしまうようだと、乾燥が出来ず、細菌とカビの発生につながる。
この対策のためには、洗浄後ワイパーで水切り作業が必要になり、無駄な作業コストになる。

幅木について、ISO22002は推奨、AIBは必須の記述になっている。
[加工区域では壁と床の接合部に丸みがあることが推奨:22002/5.3]
[清掃を容易にするため、壁と床の継ぎ目やコーナーの部分をアール構造(曲面)にしていること:AIB/2.5]
幅木はあった方が汚れは溜まりにくくなるし、清掃洗浄がしやすくなる。しかし、中空構造の幅木材だと壊れ、継ぎ目に隙間が出来るので、中が虫、カビ、細菌の棲みかになる。床と壁工事の時に一緒に施工するか、中空で無い幅木材を隙間の無いようにある程度柔軟性のある接着(ゴム系、ビニール系)、あるいは耐熱性・耐水性・耐油性に優れているエポキシ系など、製造環境にあわせた接着をする。

排水について注意が必要だ。というのは、排水溝の構造と洗浄しやすさについて、

[排水はトラップされ及び覆われなければならない:22002/5.3]

[水を使用する保管場所や洗浄場所では、グレーチング(格子)付きの床面排水溝を設置し、維持管理し、機能させていること。

清掃や検査のために、排水溝のグレーチングが容易に取り外せるようになっていること。AIB/2.5]

とあるが、この「覆わなければならない」「グレーチング(格子)付きの床面排水溝」「排水溝のグレーチングが容易に取り外せる」についての解釈が問題。

作業室中央に排水溝があるなら、蓋を付けるのは当たり前だが、壁側にあるのなら、蓋は無い方が良い。蓋があれば洗浄しなければならない。無ければ洗浄の手間が減るし、乾燥もしやすい。壁側のドブ型排水溝は蓋を取った方が衛生管理はしやすい。

以前オーストラリアの屠畜研究所に行ったら、作業室の中央と壁の中間ぐらいの位置から、テーパー式に排水が出来る構造になっていた。これは排水溝というよりも「床の一部」のようなものだ。

(写真と図は、テーパー式排水路)

そこで、最近の排水方式として、浅いU字を床に付ける方法が行なわれている。床の一部のようにしてある。大きな作業室の場合は中央部に設置してあるが、キャスターが通る所だけ蓋をしてあり、洗浄時には外すだけでいい。


そこで、床、壁、幅木、排水を一緒に考えると「床に傾斜を付け、その先に床の延長の浅いU字構造があり、そのままR構造(幅木)で壁につながる」という、全てを一体化し、清掃洗浄が実にしやすい構造になる。そして排水の先に排水枡があり、そこは蓋をし、トラップがあれば良い。

ISO22002の7.4では[排水方向は汚染区域から清浄区域に流れてはならない]とある。
これは困ったことだと考える所は多いだろう。なぜなら、当然この方がいいが、そうなっていない場合の修理はかなり大変だからだ。
ゾーニングが3段階の場合、製造動線は、汚染→凖清潔→清潔→凖清潔→汚染となる。しかし排水方向はこれでは困る。排水の流れは、清潔ゾーンから外に向かって流れていかなければならない。清潔ゾーンから出た排水は、一方で下処理を行なっている凖清潔ゾーンを通り、原材料庫を通って外に出ていく。もう一方は、製品の外包装などを行なっている凖清潔ゾーンを通って、製品庫などがある汚染ゾーンを通って外に行くのがよい。あるいは、各ゾーンからそのまま外に出てもよい。
一般的な製造では、下処理を行なう凖清潔ゾーンで最も汚水が出る。野菜の下処理の洗浄水、肉の下処理でのドリップと脂肪混じりの汚水、魚の加工では魚体洗浄や内臓処理の汚水などが出る。この汚水がそのあとの清潔ゾーンに行っていたら、たとえ床でも汚水が足の下を流れるのは問題だ。
設計段階で計画すれば、この排水の方向は問題無く対応出来るのだが、排水がこのように逆流してしまっている場合、ISO22002認証取得は出来なくなってしまうのだろうか?
この問題について、ISO22002が出た当初、審査組織がどう対応するのかを見守っていたが、今の所「検証によってハザードにならないように対処出来ていれば適合」という方向になってきているようだ。

凖清潔ゾーンの下処理室からの汚水が清潔ゾーンに行ってしまっている場合、清潔ゾーンの排水溝に密閉式の蓋をする。蓋を開けないで作業をし、作業終了後、排水溝を洗浄する。翌日作業開始前、汚水が流れ始める前に密閉の蓋をし、作業開始する。これが標準作業手順書になっていて文書化され、作業開始前のチェックリストに入り、実施の確認チェックがされていること。そしてもう一つは、汚水があふれ出ないことを観察やデータ(排水量と排水溝の規模のバランス)で証明出来ていることだ。
壁面の下に浅いU字排水溝を設置している場合は、蓋無しの効率的洗浄が出来るという利点があるが、逆流してしまっている場合はダメなので、この場合も密閉蓋をすることになる。排水量が多くてあふれる可能性があれば深堀り修理が必要になるだろう。

排水溝を無くして排水枡に

排水溝は床の構造を弱くするのと、床との接点からクラックが生じやすくなるので、出来るだけ無くして、排水枡に床の傾斜を付けて流し込むようにすると良い。小さな作業室なら中央か端に1箇所、広い作業室なら複数箇所に設置する。こうすると作業でのキャスター移動がスムーズにいくし、洗浄も楽だ。(パレットなどで保管する倉庫の床は、傾斜があると使いにくいので、平面にしても良い)


排水枡だけにして傾斜を付け、使いやすくした床:水切りをしないで自然に流れて乾燥する

著作:株式会社 フーズデザイン 加藤光夫
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