報償による異物発見

2013/04/13 16:11 に 松本リサ が投稿
日本にも賞金の時代が来た
映画の西部劇によく出て来るのは賞金稼ぎで、逮捕状の出ている犯罪者を捕まえてその褒章を稼ぐ。 
歴史を継承して、米国では犯罪者の発見情報に対して賞金を出す方法はとられていて、イラクの元フセイン大統領追跡についても多額の報償金が出ていた。 
そんな方法は日本では出来ないと考えられていたが、最近はオウム事件の逃亡者に対する報償金が出ていたように、既に定着している。 
食品への異物混入対策に頭を痛めている工場は多く、これに対して発見の報償を与える方法を数年前に提案したら「日本ではそんなこと出来ない」「そんなモラルの無いことは出来ない」という反応がすぐに返ってきた。 
しかし、最近は変って来た。成功しているのだ。

千円の効果
西日本のある惣菜工場では、顧客からの異物混入クレームはある程度あり、大量の出荷の一部は仕方がないのでは無いかとあきらめていたが、ある時「かならず原因を探って報告せよ」と言う過激な顧客に出会ったきっかけで、対策を練った。 
基本的なことは一般的衛生管理の強化だが、同時に実験的に褒賞金を出すことにした。
工場内で、原材料由来も含めて、異物を発見したものには千円を出す、という方法だ。 
これを決める過程で「自分で入れて稼ぐヤツが出てくるのではないか?」などという不正が心配されたが、そんなことを考えるよりも社員を信用しなければ、ということで実施に入った。 
実施を初めて、真っ青になった。どんどん異物が見付かるのだ。 
藁クズ、虫、骨の細片、毛髪、糸くず、ビニール片…… 
今までの顧客からのクレームの十倍以上の比率で出て来たのだ。 
これらが、今まで工場内で見過ごされて、出荷されて行ったのだ。

工場内で発見される問題は原因追跡出来る
不良製品に出会った顧客のうち、クレームを言うのはほんのわずかで、大半は何も言わずに、そして二度と買わない。更に困ったことは、人に言う、言いふらす、ということだ。したがって、メーカーは何も分からないまま顧客が減って行くということになる。 
「一件のクレームの背景には、その十倍の潜在クレームがある」ということになる。 
ところで、工場内で発見される問題は、顧客からのクレームと違って、原因追跡の確率は飛躍的に高くなる。 
顧客からのクレームは、「○○が入っていた」という情報だけだったり、現物を郵送してもらっても、どのように入っていたのかは分かりにくい。 
毛髪混入では、製品に練り込まれていた(調理時か、原材料由来〕のか、トレイの下とその上に乗っている製品の間に挟まっていた〔つまり、トレイに毛髪が落ちていて、その上に製品を入れた〕のか、製品の上に乗っていた〔工場のパッケージ工程で落ちたか、顧客が開けた時に自分の毛髪が落ちた〕といった状態が分かれば、原因追跡に役立つ。しかし、顧客から現物だけ送られてきたのでは、原因追跡は難しい。 
これに対して工場内で発見されれば、発見された工程で、どのような状態なのかがすぐわかる。しかも、今回の場合、十倍以上のサンプルが出て来ているのだ! 
調理工程で食材を釜に入れる時にビニール片が発見されれば、食材が入っていた袋を開けた時、あるいは食材の袋以外なら、その食材に元々入っていたのかがわかる。原材料由来ならサプライヤーに対応を要請する。骨の細片が発見されれば、その原材料肉由来なので、これもサプライヤーに要請する。

報償による異物発見
この異物発見報償活動で、初期にかなりの異物が発見され、それぞれの対策を順次行っていたが、工場内での混入に対しては、個人衛生と清掃洗浄の強化になった。 
これは、今までも行なっていた活動だが、これまではマニュアルや頻度といった活動だったが、工場内発見活動では、どの場所でどのような、という実に具体的な場所と状態が分かったので、集中的な改善ができた。 
例えば、黒い異物を調べたらカビの死骸で、原材料を裁断する時に混入したと見られた為、カッターを分解して調べたら、同じカビの死骸がこびりついた部分があり、これが落下してカッティング時に混入したことが分かった。そこで、これを洗浄し、これからは毎月分解洗浄をすることにした。 
骨の細片では、サプライヤーに対策を依頼した結果、サプライヤーではX線検査器を試験的に借りて検査した。そして骨の細片が入っている確率が高く、許容出来ないレベルだと分かった為、この検査機の導入を決めた。

報償の千円は、初期にはかなり出され、大変なことだとわかった。報償金が多く出たことよりも、これだけの異物が顧客に行ってしまっていた事実が分かり、青くなった。 
過去何年もの間、営業強化策で、積極的に顧客を増やす活動をして来ていて、新規顧客獲得数の発表グラフは結構良い成績だったのだが、全体の出荷数は横這いだった。これは離れて行った顧客も同数だったからだが、「飽きもあるだろうし、仕方がない」と考えていたのだが、今回の活動で違うことがわかった。クレームを言わずに、黙って「もう買わない」顧客だったのだ。

クレーム1件幾ら?
 ある工場では、クレーム一件につき3万円のコストとしている。別の工場では10万円で、ここは全国に出荷しているので、顧客の所まで行かなければならない場合のコストにしている。 
しかし、黙って買わなくなる顧客のリスクはこのコストどころではない。金額的なものではなく、信用につながり、ネットで広がるなどの問題になってしまえば、製品の命取りまで発展してしまうからだ。 
工場内発見を強化することは、安全体制の効果的な構築につながる。
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