抜き打ち検査の勧め 食品工場や厨房における衛生状態の監査方法

2013/04/26 0:13 に 松本リサ が投稿
ATP測定器は、素早く汚れの状態をチェック出来る

ある公共施設では、民間業者がその施設を衛生的に使うように、清掃と洗浄のチェックリストを付けることを義務づけている。しかし監督者である自治体の担当者は「見ないでマルを付けて提出しているのが実態でしょう」と言う。

ある給食工場では定期的な細菌検査をしていて、検査の成績は良いのだがどうも実態とは違うような気がすると管理者が言う。そこで視察という目的で現場に入って、いきなりATP測定器でチェックをしたら、5万10万はざらで、最高は95万などというとんでもない数値が出て来た(ATPの数値は一般的に1,000以上だと汚染されていると判断する)。
見た目にも整理整頓がされていなくて、食中毒と異物混入の問題があることがわかる。何でそれまでの細菌検査の数値が良かったのか調べたら、検査に入る日を事前に連絡していて、その直前にアルコールを噴霧しまくって待っていたのである。
悪気があったにせよ、面倒だったにせよ、忙しくてというのにせよ、管理が悪いために食中毒などの事故は発生してしまう。

最近年末から翌年始め頃までノロウイルスによる食中毒事故が猛威を振るっている。ホテルで、レストランで、老人施設でと、多岐の場所にわたっている。
ノロウイルス食中毒は手洗いの不備から起きる確立が圧倒的に多い。手を良く洗えば防ぐことが出来る。ほとんどの施設では手洗いマニュアルは持っていて、それが教育もされていて、手洗い場所に掲示もされているだろう。しかしサボってしまえば何にもならない。
衛生管理の基本は清掃、洗浄、そして個人衛生である。これらをしっかりと行なえば、ゴミや毛髪、食中毒菌やウイルスが減る。そうすれば異物混入クレームと食中毒の危険が減ることになる。単純なことだ。

衛生状態を調べるための、効果的なチェックリスト

前述した給食工場では、抜き打ち検査をすることで実態が明らかになった。これをきっかけに、衛生管理の重要性を全従事者に認識をさせ、一般的衛生管理を実施することで大きな改善につながった。厨房の効率が良くなり、きれいに安全になり、料理の品質が安定していったのである。
そこで、ふき取りやATP測定器による抜き打ち検査を行う方法がある。施設設備の清掃洗浄と個人衛生で実施する事項をチェックリストにして実施をするまでの構築を行なってから、定期的だがスケジュール未定の検査をするのである。おかしな頻度なのだが、例えば、ほぼ毎週検査をするが、いつ行なうか、どこを行なうかを決めないのだ。

ある総菜工場では、チェックリストにしたがって衛生管理を行なっているが、それが実際に満足できる状態になっているかをATP測定器で検査をしている。ATP測定器なら検査結果がすぐに出る。検査場所は多岐にわたり、数十個所になるが、それらを6つのグループに分けた検査項目リストを別に作っている。検査1から6まであるわけだ。検査は毎週1回行なう。しかし何曜日か決めていない。検査の1から6までのどれを行なうかも決まっていない。
検査担当者は、自分の仕事のスケジュールに合わせて翌週の何曜日に検査をするかを決めておく。その週に入ってから決めると、忙しいまま週末になってしまうので、あえて前週に決めておいて強行実施するためである。
その週は、月曜日に実施することを決めていた担当者は、月曜日の朝、作業開始時間の1時間前に工場に入る。これは残業時間に組み入れられる。約十ヶ所を検査して、あらかじめ決められているそれぞれの検査個所の合格数値と比較した表を作成し終わったころ、その日の朝礼が始まる。朝礼で初めてその朝検査を行ったことがわかり、同時に成績表が発表される。この日の検査は「2」だった。
なぜグループに分けているかなのだが、理想的には全個所の検査をしたいのだが、費用と時間の面でそうも行かないので分けているのだ。検査場所はサイコロを転がして決めるために、6ヶ所に分けているのだ、これはニュージーランドのMAF〔保健所〕の担当者が行なっている方法をまねさせてもらっている。MAFの担当者は、自分の検査する工場が一日数ヶ所あり、一つの工場が大きいと、短時間に回れないので、その工場内を6ヶ所に分けておいて、工場に着いてからサイコロを転がして目の出た検査場所に行くのである。

検査「2」の場所は、野菜下処理場所のまな板、肉下処理の包丁、パススルー冷蔵庫の魚の保管庫の中段の棚、3番の蒸気窯、サラダ組み立て室のボウル・・・といった所になっていた。検査数値が全て基準以下ならそのまま作業に入るが、数値以下の場合、再清掃なり洗浄が行われることになる。なぜ数値以下になってしまったのかの原因も追跡する。まともにマニュアル通りに洗浄が実施されていれば大丈夫なのになぜそうならなかったのかは重要なのだ。状況によっては洗浄マニュアルを改善しなければならない。
検査はこの6つのグループ以外にもう一つあって、作業者の手の検査だ。これも毎週1回行なうが曜日は決めないでいきなり実施する。時間も決めない。水曜日の作業開始直前に行なうこともあるし、金曜午後の作業中の場合もある。ランダムに作業者を約10名選んでその場でATP測定器検査をする。最初の頃は数万にもなっている作業者がいたが、この抜き打ち検査が安定して行われだしたら数値は良くなった。ということは手洗いが徹底したということになる。
この検査を行い始めたころはやはり成績の悪い数値がかなり出ていた。数値が悪いということは、マニュアル通りやっていない場合もあるが、マニュアルが悪いこともある。これらを改善していくことは、効果的な実施方法と、習慣、あるいは躾を徹底させることになる。この活動は、検証と内部監査を行なうことにもなるのだ。
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