安全の為の明確な目標

2013/04/25 1:42 に 松本リサ が投稿
ISO22000の、5.2 食品安全方針の最後、f)に「 判定可能な目標によって支持される」という要求事項がある。
このたった一言を、理解しているかどうかで、組織の方針が大きく変ってくる。
単に「わが社は安全な食品を作ることを目標にする」と表現しているのを見かけることもあるが、これだと「判定可能な目標」が具体的には何なのかわからない。
ISO22000を構築するのでなくても同じことになる。消費者の安全安心の為に、という表現だけで意味は分かるが、ではその組織では、それをどう成し遂げるのか、その判定がわかる為のものは何なのかがなければ、単なる政治的な掛け声になってしまうかもしれない。
組織の現場が分かる、顧客も「ああ、そういうことなのか」と理解出来る「判定可能な目標」を掲げる必要がある。
具体的には何なのか、数値がある、活動の結果が分かるものである必要がある。
まずCCPだ。CCPの数値。
加熱調理工程で、加熱後中心温度が「75〜85℃」になっているかどうかを確認する。基準値内に収まって入れは食中毒菌が死滅しているわけだから、安全を確認出来る。明快な判定可能な目標だ。
では、これだけで安全を確認出来るかというとそうでは無い。
加熱殺菌の後、冷却、包装が終わるまでの間に、せっかく加熱殺菌した食品を、包装機、落下菌、人の手などによって汚染してしまえば、その製品は安全では無くなる。惣菜のあえ物などは、ブランチング(加熱)の後、冷却して味付け、パッケージまでの間に汚染されてしまい、食中毒になってしまった例はいくらでもある。
そこで、加熱殺菌後からパッケージが終わるまでの工程で、全ての関係機器の食品が接触する部分を、製造開始前にATP検査をし、例えば「100以下」であることにする。
こうすると確実になってくる。「判定可能な目標」が明快にあるからだ。
製品の細菌検査ももちろん目標だ。公定検査でなくとも、簡易検査を毎日行ない、同じ検査を毎月1回外部公的機関に出し、内部検査の精度を検証する、といった方法でも良い。
安全管理に対する認識は、CCPやATPの数値とは違って、個人個人がどのように理解しているのかで、ずいぶん違ってくる。同じ教育をしても、理解の仕方、認識の違いは、人のそれまでの知識、経験、力量によって違ってしまう。しかし、この認識が無いと、いくら測定などの科学的検証があっても、それを行なう人が理解していないと、安全管理効果は半減してしまうことにもなる。
では、これを「判定可能な目標」にすることが出来るのだろうか。

ある食品工場では、毎週一分間の一般的衛生管理教育を行ない、毎月衛生管理パトロールを、その都度指名した食品安全チームのメンバーが行ない、2ヶ月に一度食品安全チームの研究会を行ない、半年ごとに内部監査を行なっている。半年ごとの内部監査は、ISO22000の要求事項を行なっているかどうかと、製造プロセスの作業管理を、交互に行なっている。
そして、この実施を「判定可能な目標」に入れている。
急に大きなオーダーが入り、しばらくの間教育やパトロールが出来ない状況になったため、しばらく中止、ということにしたが、この為に製造現場のチェックがおろそかになり、不良品続発、といった事態になる事例はよくある。
ところが、これらが「判定可能な目標」となっているため、実施をしないと「記録」にならない。記録がなければ「マネジメントレビュー」に「判定可能な目標が実施されていない」ということになるので、意を決して実施し、無事問題を出さずに大量注文をこなすことが出来た、ということになる。
牛挽肉の偽装事件で、多くの食品工場は自社の製品の原材料の証明を顧客から要求され、原材料の確認が重要なことを認識したところも多いと思う。
原材料の確認は、証明書、検査データなどを求めることになるが、それらに加えて、そのサプライヤーを訪問することも効果的な活動になる。
単に工場監査というだけでは無く、その工場の生産システムを見た上で、それならこの製品も出来ないかとか、製造上の工夫などもお互いに話し合うことも出来る。
これを「判定可能な目標」にしたところもある。
具体的には「主な食材サプライヤーへの2年に一回の訪問と、新しく主な食材のサプライヤー候補が出て来た場合、商談開始前の工場訪問」だ。これを行なわないと、仕入れは出来ないということになる。
全国の工場を視察して回り、原材料の安全性を確認出来るだけでなく、原材料の開発にもつながり、それが自社工場の製造システムの工夫にもつながることになってきた。
これらの「判定可能な目標」を文書化すると、以下のようになる。
弊社は、以下を、安全な製品を造る為の目標にする。
  1. CCPの数値と、逸脱した場合の修正と是正処置の実施。
  2. OPRPの数値と、逸脱した場合の修正と是正処置の実施。
  3. 規定した頻度の細菌検査の実施。
  4. 規定した頻度の教育、パトロール、監査の実施。
  5. 主食材(別添リスト)サプライヤーへの定期的訪問と、新サプライヤー選定のための訪問の実施。
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