「品質」と「安全性」の違い

2013/05/19 22:36 に 松本リサ が投稿
ISO9000シリーズの思想は、品質管理体制の維持、である。これに対してHACCPは「安全性」であり「危害」になる。この「品質」と「安全性」が、HACCP先進国の米国でも混乱してきた。
分かりやすくするために、重量百グラムの焼きハンバーグで考えてみよう。焼きハンバーグというのは、原料肉をミンチに挽き、オニオンや調味料、パン粉などの副材料を入れてミックスをし、成形をし、加熱調理をして、冷却をし、パッケージをして出荷、ということになる。この工程の中で、原材料の細菌の数をまず考えると、細菌数というのは食中毒の元になるから、これは安全性の問題になる。いくら加熱の工程で殺菌されるから大丈夫だと言っても、原料肉そのものに危険があるものを誰も使いたくはない。

その次の工程では、ミンチに挽くことになるのだが、機械のナイフが切れないなどの原因で、挽いた後の温度が摩擦熱で上がってしまうと、バクテリアの繁殖率が高くなるので、これも安全性の問題である。同時に挽いた後の温度が高いということは、「食感」に影響が出る。食感というのは、食べたときに口の中で感じる感覚で、温度が上がってしまった挽き材をハンバーグにすると、練られた感覚、「かまぼこ」のような感覚になって、ハンバーグの場合はおいしくない、安物、といった感覚になってしまう。しかしこの食感は、食中毒などの危害にはつながらないから、安全性ではなく、「安物」「おいしくない」といった「品質」になる。挽いた後の温度は、安全と品質の両方に影響をすることになる。

次に「成形」工程で考えると、成形をしたあと加熱をして、出来上がったハンバーグが百グラムになっていなければならないことを考えると、成型機を出たときの重量は調理後の歩留まりを計算すると、たとえば115グラム無いといけない、といったことになる。それなのにもし110グラムしかなかったらどうなるかというと、焼き上がった製品の重量が「百グラム未満」という不良品になり、クレームになる。しかしながらもしそうなったとしても、軽いだけでは食中毒などの危害につながらないので、「安全性」にはつながらない、「品質」である。

この場合、もし反対に重量が規定よりも重かったらどうなるか。たとえば130グラムにもなってしまった場合だが、この後の調理加熱工程で、ハンバーグが大きすぎるために、肉の中心にまで完全に加熱することが出来ず、さらにそのハンバーグの中にO-157がいた場合、食中毒危害につながる恐れがでてくる。重量が軽い場合は、「品質」だが、重い場合には「危害」にもつながる恐れが出て来ることになる。

さて、HACCPの原点は「安全性の追及」である。ということはこの例の場合には、重量が軽い場合や、たとえば形状などは、安全性とは関係が無いので、本来ならばHACCPに入れる必要はないものである。しかしながら企業というものは「品質」を追及していかなければ、クレームになるし、競争に勝つことも出来ない。そこでHACCPでは、「安全」を追及すると同時に「品質」も行うことになる。


こういった意味で、HACCPは「即効性」がある。しかしながらISO側の見方によくあるのだが、企業全体の品質管理、という大きな枠までは及ばない面もある。企業全体の品質管理という大きな枠があり、その企業が食品企業だった場合、その品質管理体制の枠の中に、さらに製品ごとに絞り込んだHACCPで、安全性と品質を追及する、ということになるのである。そんな中で、もし、ISOとHACCPと、どちらを優先して取り組んだらいいか、となった場合、どんな企業でも即効性のあるものを優先させたいだろうから、この場合にはHACCPにまず取り組んで、そのあとISOということになろう。実際HACCP構築作業を行いはじめると、作業中に効果が出てくるものである。効果は何かというと2つあり、効率が良くなるのと、売れるようになる、というものである。言い方を変えると、利益がでて、売れるようになるのである。
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