食品工場で考慮すべき化学的危害の予防 10ポイント

2012/12/17 21:00 に 松本リサ が投稿   [ 2012/12/27 18:59 に 加藤光夫 さんが更新しました ]


1.リスト化

工場内にある全ての化学物質のリスト化するが、この時どこに保管してあるかも一緒にする。表にまとめてもよいが、工場の図面にプロットすると、どこにあるかが見える。
工場内の一ヶ所にまとめておいてあればある程度安全だが、そこら中に分散していると危害の発生率が高いわけで、このリストを作る時点から改善の必要性がわかる。
ある飲料工場で、次亜ソーの原液ボトルがボトリング機の横に置いてあって危険なので「なぜここに置いてあるのか」と聞いたら、洗浄後の殺菌に使うので当た り前ではないか、という返事だ。しかし製造中の動いている機械のすぐ横にあってはとても危険なので、隣の倉庫に保管するようにした。

2.保管場所

ISO22002では「5.7清掃・洗浄剤、化学薬剤及び他の危険物質に対して(鍵が掛かるか、さもなければアクセスが管理されている)保管区域が提供されなければならない
」とある。
原液のボトルが一ヶ所に置いてあれば、危険物の拡散を防ぐことが出来るし、ここから現場で使う小さなボトルに入れてもって行く時に記録をつけるようにすれ ば、より注意をするようにもなる。在庫も一目で分かるので、管理業務もシンプルになり、コストダウンにも貢献する。
化学物質だけでなく、清掃洗浄用具も同じ部屋に置き、製造作業終了後にここに取りに来る工場がある。製造中に洗浄することはないので、製造室を広く使える。
ある工場では、篭車に危険物を入れ、それに南京錠をかけていた。

3.残留

2001年、北陸で、消毒剤が牛乳に混入した事故が起きた。原因は消毒剤の洗い流し不足で、回収になった。
2002年、九州でペットボトル入りの水に洗浄液が混入した事故が起き、これは洗浄液のすすぎ不十分が原因で、これも回収になった。
食品工場にとって洗浄は必須で、特に製造装置は分解洗浄を行なう必要がある。ところがすすぎ不足での危害が出るのは、洗浄の手順がしっかりしていないからだ。
ザル分 解した部品をザルに入れて泡洗浄をする方法は、効率が良いし効果的なのだが、部品の置き方によって洗浄効果が違ってくる。L字型に曲がっている配管継ぎ手 を、開口部を下にして置いてしまえば、管の内部が洗浄出来ない。開口部を上に向けておけば内部まで洗浄出来るが、そのあとすすぎ、そのまま放置しておく と、今度は管の内部に水が残留して乾燥しにくい。この場合は、泡洗浄をする時には開口部を上に向けて置き、すすぐ時は横に置いて内部に水が充分流れるよう にする。また、すすぎ水をかけるノズルの選択や、回数、時間など、効果的なすすぎに出来るように、効果を充分検証した上で、詳細なマニュアルにしておき、 これを厳守することだ。
1メートル以上の長い配管部品を数本洗浄する工場では、内部をすすいだあと、壁に設置した水切り棚に置くのだが、これがわずかに斜めに置けるようにして、すすぎ水が流れ落ちるように工夫してあるのだ。

4.希釈

ある惣菜工場では、洗剤の希釈を時々間違える問題が発生していた。大きな問題になってはいなかったのだが、いつ事 故に繋がるか危険な状況だった。原液を置いてある場所にはそれぞれの洗剤の用途と希釈のマニュアルがあるのだが、パートやあまり理解していない従事者が 時々希釈するので、間違えるのだ。
そこで「力量」制に登録することにした。希釈について理解して作業ができる従事者を「洗剤扱い者」の力量を持つものとして登録し、それ以外の人は扱ってはならないことにした。
4希釈について間違いが無いようにするボトルシステムもある。
何種類かある洗剤は、原液ボトルから現場で使う小さなボトルに入れ替えて現場に持って行くが、その小さなボトルのキャップが、四角形、5角形、六角形、丸 形と、形が違っていて、現場のユニットに入れるときに、違うボトルは入らないようになっている

5.装置

2001年、中部地方で、紙パック入り牛乳に洗浄用の次亜ソーが混入した事故があり、2万個が自主回収になった。原因は、瞬間的に洗浄スイッチに触れたのが原因ではないかとされている。
ある程度の規模の飲料工場はCIP洗浄といって、配管内を装置による自動洗浄を行なっている。製造終了後、CIPのスイッチを入れると自動で洗浄する。こ のスイッチを、何らかの接触で、瞬間的にスイッチが入ってしまったのではないか、ということだ。
次亜ソーの希釈装置や、機能水生成の為の装置で、殺菌剤を自動希釈している場合、正常に動いているかを定期的に検証しなければならない。装置には当然希釈 がくるったら停止する機能が付いているが、それそのものが故障することも考えられる。毎日の点検だけでなく、使用場所でも監視するようにしておく。
ISO22002では「11.4CIPシステム:CIPシステムは稼働中の製造ラインから分離されなければならない」とある。

6.食品に接触する部分

製造の工程で、食品が直接接触する部分や面に、化学的な危害が無いかを調査する。
1まな板、コンベアベルト、バット、ミキサー機のタンクの内側など、食品が接触する部分をリストアップして、これらに問題は無いかを調べる。
この為には、HACCPと同じ考え方を取り入れる。製造工程フローチャートが既にHACCP構築の際に出来上がっているが、その工程ごとに、食品が接触する部分をリストして、危害分析をするのだ。
ある給食工場でこの分析をした所、最終の食器への盛り付けで、食器そのものに問題は無いかと調べたら、いわゆる環境ホルモンの溶出の危険が出て来たので、食器そのものを入れ替えた。

7.口に直接触れる部分

2000年、ベルギーで、小学校児童が同じ清涼飲料を飲んで、集団食中毒症状になった。当然すぐにこの飲料そのも のが調べられたのだが、問題は飲料そのものでは無く、缶飲料を保管してあるラックに残っていた消毒剤が缶飲料の飲み口に付いたのだ。棚を清掃したあと、消 毒をし、それが残留している所に、缶飲料の飲み口の方を下にして置いたため、プルトップの飲み口部分に消毒剤が付着したのだ。子供はわずかな化学物質にも 敏感だ。
食材を置く棚にこのような問題は起きないだろうか。特にサラダ等の非加熱製品の食材置き場に注意することだ。

8.蒸気、ガス

ISO22002では「6.3ボイラー用化学薬剤:清掃・洗浄用水又は間接的な製品接触(例えばジャケット付き容器、熱交換器}のリスクがある場合に適用する水は特定の品質及び適用に関連する微生物学的な要求事項を満たさなければならない」とある。
蒸気に使う水が汚染されていれば、その蒸気にさらされる食品は汚染される。また、蒸気を送るパイプ内のスケール〔垢〕を無くす為の清缶剤も、食品専用を使う必要がある。
また「6.5圧縮空気及び他のガス類:コンプレッサーに油が使用されそのコンプレッサーからの空気が直接製品に接触する潜在的な可能性のある場合は使用する油は食品用グレードでなければならない」とあり「油のない圧縮器の使用が推奨される」となっている。
食品工場では蒸気やガスは多用しているので、これらを検証する。

9.薬剤を使わない防虫対策

食品工場内で殺虫剤をかけまくるなどとんでもないことで、直接食品を汚染しなくても、装置や環境から汚染されてしまう。

これからの食品工場の防虫は、周囲の環境の浄化、外との接点〔隙間〕の封鎖、工場の陽圧構造、工場内の洗浄と洗浄後の除湿乾燥、入荷する原材料と資材及び従事者からの侵入防止といった、薬剤を使わない総合防虫を行なうことだ。


10.GMP要請

原材料由来の化学的危害を防止する為には、生産地での薬剤師用をコントロールする必要がある。この為に生産者に対してGAP(Good Agricultural Practice)「適正農業規範」管理を要請することだ。GAPは、農薬、飼料、環境、家畜のO-157等の細菌汚染、ネズミや害虫、等の危害から生産物の安全性を守る方法。生産者が農薬使用記録を付けることで、化学物質の汚染をモニタリング出来る。

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