異なる清潔レベル間の移動

2012/12/11 21:25 に 松本リサ が投稿   [ 2012/12/11 21:25 に 加藤光夫 さんが更新しました ]
「準清潔ゾーンでした処理した食材を、キャスターに乗せて清潔ゾーンになっている調理室に移動しているが、
そのキャスターは食材を清潔ゾーンに運んだ後、また元の準清潔ゾーンに戻ってくる。人も同じだ。問題は無いのか?

という疑問を持つところは多い。

この場合、準清潔ゾーンの従事者がキャスターと一緒に清潔ゾーンに入ってしまうのを避けるためには、境目で、清潔ゾーンの人にキャスターを渡せばよい。しかし、キャスターがその後逆行してしまう問題は残る。

最初からHACCPを考えて設計した工場でなく、古い工場ならこういった問題は普通にある問題だろう。

床は全て汚染ゾーン

汚染、準清潔、清潔、どのレベルのゾーンにおいても、床は汚染ゾーンである。
だから、床に食品を落としたら、それは廃棄にするのが一般的で、洗浄する場合も完全に洗浄できる場合に限る。
床に食材を直置きにしてはならないのはもちろんだが、出来るだけ床から離すように工夫するのが当然である。
最低でキャスターに乗せる、出来れば床からのはね水汚染を防止できる60センチ以上にする。

この考え方で行なえば、キャスターは清潔ゾーンに入り、食材をおろしてから、準清潔ゾーンに戻ってもよいことになる。
完全ではないが、認識して注意していればよい。
従事者もある程度お互いに出入りしなければならないところも多いが、床の汚染レベルがそれほどひどくなければある程度はやむを得ない。そうしなければ作業が出来ない工場は多い。

準清潔ゾーンの床があまり汚れていない場合にはこれでよいのだが、汚染状態によっては改善しなければならない場合もある。

ある食肉のパック工場では、部位別のブロック肉を、準清潔ゾーンで小分け、スジ引き、脂肪厚の調整トリミングなどの下処理をして、それを清潔ゾーンに移動してスライスや切り身加工してトレイパックをしている。
ところが下処理をしていると、脂肪やスジの小さな破片が飛び、床に落ちる。
そこにキャスターを持って来て、下処理した肉を乗せるのだが、キャスターのタイヤに床の脂肪片などが絡まり付いて、清潔ゾーンに持ち込まれてしまうのである。

この状態だと、下処理室の床に落ちた脂肪片が、キャスターによって工場中に運ばれることになってしまうので、改善しなければならない。
具体的には下処理室で使うキャスターはこの外に出してはならない。
原材料庫が下処理室の隣に併設されていれば、原材料庫と下処理室間での使用に留めることで汚染を拡散しないようにできる。

では、清潔ゾーンに持って行くにはどうしたらよいか?
パスボックスなりパスウインドウを設置して、そこを経由する方法がある。
また、受入側の境界にキャスターを置き、そこに下処理した肉を下処理側の従事者が置いてから、清潔ゾーン側の従事者がキャスターを引いて持ち込めばよい。

工場によっては、下処理作業の従事者は、下処理作業が終わったら、最終パックなり調理室なりの清潔ゾーンに移動して作業に入るところも多い。この場合、床は全て汚染ゾーンとはいっても、汚染レベルが違うので、出来るだけ新しく入り直したほうがよい。

食肉パック工場の例では、下処理が終わったら、いったん更衣をし直して、清潔ゾーン用の靴に履き替え、清潔ゾーンレベル向けのサニタリールームを通って入るのがよい。長靴の底に付いた脂肪片を清潔ゾーンに持ち込むことが無い。

ある学校給食センターでは、下処理が終わったら、いったん退場し、その隣にある清潔ゾーン向けのサニタリールームを通って清潔ゾーンに入る。ここではエアシャワーは予算の関係もあって、準清潔ゾーン側にはなく、清潔ゾーン側にはある。


床の汚染レベルがそれほど全てのゾーンでひどくない、という状況でも、全てのゾーン間をキャスターが動き回るのはよくない
キャスターが、汚染ゾーンである原材料の検収場所から、準清潔ゾーンを通って、清潔ゾーンまで抜けていってしまうなどというのはよくない。
工場内での食材移動用のキャスターは、汚染と準清潔間、準清潔と清潔間、という隣り合ったゾーン間での使用にするほうがよい

従事者のゾーン間の移動も、同じ考え方になる。準清潔ゾーンの床汚染がひどい場合はお互いの移動はしてはならないが、それほどでもなく、ある程度は仕方がない場合や、無理に移動禁止にすると従事者の移動距離が極端に長くなってしまう場合などは、ある程度の相互移動はやむを得ない。

ある総菜工場では、下処理した食材を、その準清潔ゾーンの従事者が調理室に運んでいる。
この工場は古く、下処理室と調理室が離れていて、通路を通って運ばなければならないのだ。
調理室に食材を運んだ担当者は、そのまま下処理室に帰ってはならない、というルールにすると、工場の構造上、いったん外に出て大きく回って戻らなければならない。
そうなると作業効率の大幅な低下だけでなく、いったん外に出るという大きなリスクも下処理室に持ち込むことになるのだ。

人やキャスターの動きは、出来るだけ短いほうがよい。
長くなればなるほど、作業効率が悪くなる。
人が1歩工場内で動くのに0.6秒かかるというが、その時間と歩数と従事者の人数をかけると大変なことになる。
安全にとってさらに重要なことは、移動距離が長くなると、異物混入や汚染の危険にさらされる確率も高くなるということだ。
どの方法をとったら、自分の工場での危険が最も少ないかを検討して、一番よい方法を選ぶのだ。
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