効率的な一般的衛生管理チェックリストの作り方

2012/12/12 20:25 に 松本リサ が投稿   [ 2012/12/12 20:25 に 加藤光夫 さんが更新しました ]
一般的衛生管理とHACCPの運営の土台になるのがチェックリストだが、非効率的なものや、現場とあっていないもの、あるいはどのように作って行ったら良いのかがわからない例も多い。
そこで一般的衛生管理でのチェックリストの効率的な方法やアイデアを解説する。
  • ステップ1:作業内容の作成
一般的衛生管理で行なうのは5項目あり、「内容」「頻度」「担当者」「確認」「記録」である。
まず「内容」から作成していく。作業内容というのは例えば「調理室の床の清掃」という形になるので、最初に行なうことは、工場内を分類することである。一般的な工場では、受け入れと保管庫、下処理室、調理室、パッケージ室、製品保管出庫室、ユーティリティー(サニタリー室、トイレ、ロッカー、廊下、工場外周)といったものに分けられる。こそれぞれの作業室がチェックの基本的な単位になる。これを分けるのがステップ1になる。
  • ステップ2:衛生管理の対象をリストアップ
例として総菜工場の下処理室を考えてみると、建物に関するものは、床、排水溝、腰位置までの壁、腰位置から上の壁、天井、出入り口、冷蔵庫、照明器具がある。
調理に関係するものは、作業台、まな板、ナイフ、野菜洗浄のシンクやコンテナー、サンテナー類、カッター、ミキサーなどがある。
サニテーション関係では、手洗い、器具洗浄のシンク、ブラシやワイパーなどの洗浄器具類がある。これらが全て対象になる。
床ならば「床の清掃」という内容になる。
  • ステップ3:「頻度」を決める。
床は排水溝など、多くの対象の清掃は毎日になる、壁の腰位置よりも下も毎日になるが、腰位置よりも上は毎日でなくても良い、汚れの状態によるが例えば「毎月」などになる。
天井や照明器具はもっと頻度が少なくなり、一般的に多いのは「年に2回」といった形になる。
頻度を「毎日の清掃」と「月一度の大掃除」の2つに分けるものも出て来る。例えばミキサーなどは毎日、あるいは投入する食材が変わるたびに清掃になるが、月に一度程度分解して徹底的な大掃除をする必要がある。粉体のミキサー、例えばパン粉のミキサーや調理機器などは粉が器具の中にまで入り込むので、このような2重の清掃体制が必要になる。
  • ステップ4:「担当者」を決める。
「担当者」つまり誰がその清掃を行なうかを決める。
全員の場合はリーダーを決めておく、曜日別に担当者を変えてもいい、外注する場合は工場作業員と外注先との分担を明確にする必要がある。
  • ステップ5:「確認」
一般的には「目視確認」になるが、ATP測定器で例えば「週に1度」検査をする方法もある。この場合は数値を規定しておく。
この確認方法だが、清掃担当者が確認をしては無意味なので、違う作業室同士がお互いに確認をするようにする。
確認者にパートさんまで含めておき、交互に違う「目」で確認をすると、それまで気が付かなかった汚染や新しいアイデアが出て来ることが多い。こういった場合、チェックリストを付ける資格を内部で作っておき、その資格を持った人が見るようにする。これはISOの内部監査の方式と同じだ。HACCPは基本的には「内部監査」だと厚生省も表現している。
この考え方は厚生省が保健所に通達している文書にも明確に記述してあり、「自主管理」のための方法である。

  • ステップ6:「記録」
これには2通りの方法がある。
まず、一般的衛生管理の記録はほとんど「チェックリスト」で良いが、重要なこと、特別なこと、深刻な事態は「レポート」を別に作成するようにする。
例えばミキサーの清掃で、毎日のチェックでいつも「○」だったものが、ある日ジョイント部分に汚れがこびりついていて取れていなかった、そこでそれを確認者が指摘をする場合、「×」を付ければいいかというと、汚れたままミキサーを動かしては問題になる。どうするかというと、清掃担当者に伝え、清掃し直してもらうことになる。その間、他の確認事項を済ませ、ミキサーに戻って再び確認をして、正常になっていたら「ジョイント部分に汚れ蓄積、指摘した後○」とメモをして製造作業をスタートさせることになる。という事は確認の欄を見ると「○」か「何かの指摘メモがあってから○」かの記録が残ることになる、×はないわけだ。欠陥があるのに製造作業には入れないので当然だ、全て「○」になってから製造スタートになる。

さて、もしこの場合、毎日確認していたら、次第に「ジョイント部分の汚れこびりつき」が多くなってきた場合、今度はメモ程度では済まなくなる。これは欠陥になる。
構造上の欠陥の場合も多いが、費用をかけてミキサーを変えることも出来ないのが普通なので、運営で対応することになる。
具体的には清掃方法を変えなければならない。
それまでタンク槽も、ジョイント部分も同じスポンジタワシで洗浄していたのならば、ジョイント部分は歯ブラシタイプの洗浄ブラシを使う、というように改善をしなければならない。
こういったことは「恒久処置」で、基本的なマニュアルを変えることになる。このような場合チェックリストのメモ欄には「恒久処置必要、別途レポート」となり、対応策なり、アイデアなり、テストをしてよければマニュアルを換えた旨を1枚のレポートにして記録をすることになる。この恒久処置を重ねて行くと工場は次第に、ゆっくりとしかし確実に良くなっていくのだ。

ここで時々見かける「やり過ぎ問題」は、「○」でない場合全てに「レポート」を要求するところがある。
しかしちょっとメモをするだけで済むような殆どの場合にも、作業終了後時間をかけて無意味なレポートのためのレポートを付けても時間の無駄だし、作業者も嫌になってしまう。そのうちレポートを付けるのが嫌になり、見て見ぬふりをするようになる、という事態になることもある、これでは逆効果だ。

さて、ここまで来ると「5項目」を完了するが、これはチェックリストの元になる整理をしたに過ぎない。
これを元に、いよいよチェックリストの作成にかかる。
といっても、最初から完成品を目指してはならないし、直ぐに出来ない。
重要なことは「出来るだけ現場で使いやすく」「効率的」なチェックリストを作ることである。
そのためにまず「頻度」別にまとめるところから始める。

チェックリストは最初の原始的なものから次第に「進化」させていくものである。最初にリストアップした元表が「ステップ6」なので、この次のステップを解説する。

  • ステップ7:頻度別にまとめる
衛生管理の対象と頻度が決まった表を見ると、頻度のところは、毎日、毎週、毎月、年2回、となっている。この表をそのまま現場に持っていって使えるかというとそうではない。頻度がばらばらなので、これを頻度別に整理しなければならない。まず毎日の頻度になっているものをまとめて、それを「毎日の衛生管理チェックリスト」の元表にする。この出来たばかりの表を持って現場に行き、仮にチェックをしてみる。作業開始前にでも行って、きれいになっているかどうかを目視で確かめてみる。

  • ステップ8:チェックする順番に並べ替える
チェックをしてすぐに気付くのは、チェックをする順番がばらばらだということだろう。作業室の入り口に入り、右回りでも左回りでもいいから、チェックする順番にリストが並んでいないと、作業室をあちこち動き回ることになって、効率が悪い。

  • ステップ9は重要なものを強調する
作業室のサニテーションには2つのものがある、一つは「食品に直接接触する」もので、ナイフやまな板、ミキサーのタンクの内面、チョッパーの内面と刃、液体の食品でパイプラインで製造しているものならばパイプの内側、CIP(自動洗浄)で行っていても、手で洗浄する部分はある。要するに食品が直接接触する面や部分は洗浄の不備がそのまま製品に影響するので、これが特に重要になる。(総合衛生管理製造過程の「8.原材料の受け入れ、食品等の衛生的取扱い」の中の「器具類の食品に直接接触する部分の汚染防止」)そしてこれ以外の2種類に分ける。チェックリストの中でこの違いを明確にして、食品との直接接触面に特に注意をするために、チェックリストの中の該当するものを太字にするなり、書体を大きくしたり、「※」マークをつけたりして、強調する。そしてチェックリストの上にこの部分を特に注意してみる旨を明記しておく。チェックリストの付け方の方法として、「○」でなければダメだとか、その場合簡単なメモを入れるといった注意事項も入れておくこと。

  • ステップ10:現場で使ってみる
これまではチェックリストの設計者が行っていることが多いのだが、今度は現場の担当者が実際に使ってみることになる。
設計者がかなり考えて使いやすくしてきたつもりでも、現場に落とすとまだまだ不完全で、使いやすくないことが殆どだ。現場から出て来る声、意見をじっくりと一緒に検討しながら、時間をかけて使いやすくして行くことになる。
「字が小さくて分かりにくい、書きにくい」「意味がわかりにくい」といった初歩的な問題から始まり、実にいろいろな件が出て来るものである。でも、意見が出て来るのは成功している証拠である。使いやすくしようと努力をし始めているからだ。

「枚数が多くなり過ぎる」という問題が出ることも多い。
ある食肉加工施設がスタートしてから1月ほどしてから行ってみたら、サニタリールームやロッカールームの清掃後確認チェックリストが、大して書き込む件数がないのに、1日1枚を使っていた。大きな活字なので見やすいことは見やすいのだが、紙の無駄でファイルが増えるだけである。そこで1週間分を1枚にしたら、簡単になったうえに、1週間の動きがよくわかるようになった。もう少しなれて行けば一月1枚でもいい。あるソース工場では、およそ50項目ほどある一般的衛生管理のチェックリストを、最初は1日1枚で行っていたのだが、次第に実行が安定してから、用紙をそれまでのA4からA3に変え、1週間分を1枚にした。これでわかったことは、温度などの数値の微妙な変化が一目でわかるようになったことである。

  • ステップ11:管理者の監査シート
チェックリストが1月分たまると、それを別のファイルに移すわけだが、そのままではせっかく付けた記録の活用をしないままになってしまう。記録の目的というのは、実行を確実にするためであり、それを確認するためでもある。しかし、さらに、この記録から、何かを読み取って、今後の運営に活かす事も出来る。
そこで、一月分たまったチェックシートをHACCP管理室などの部屋にあるファイルに移すわけだが、とじ込んでしまう前に管理者数名、例えば工場長、HACCPリーダー、品質管理責任者などの複数者で監査をする。方法は、一月分のファイルの上に1枚「管理者監査記録」という用紙を乗せ、3名の管理者に回して見てもらう。

管理者の見方だが、チェック欄に行きなり「○」になっている部分が殆どだろうから、これは全く見る必要は無い。
集中してみるのは、何らかのメモがある部分である。書き込みがある部分を見ると、掃除をし忘れていたから指示したなど、その場だけで問題解決しているものも読み飛ばしていい。
ところが、ある機械のサニテーションがいつもうまくいっていないとか、ある担当者の意識が低いのではないか、といったことがこの一月の記録の中から読み取れることがある。
サニテーションがうまくいっていない部分が集中している場合、その方法に問題がある場合も多い。細かいすみの部分はブラシを使ってやらないとうまくいかないことが多く、このようなことを調べるように指示をすることは重要になる。こういった場合にはSSOPマニュアルを変更することも必要になる。

管理者記録にはこういったメモをそれぞれ入れるようにする。月初めの最初の週に管理者全員が目を通したあと、そのメモには「要検討事項」が入っていることもあるだろう。
これは皆で考えながら解決をしていく問題である。「恒久処置」として解決する事項であり、これを一つづつ解決していくことは、工場全体を良くしていくことにつながる。

この活動をじっくりと行っていくことは、例えば工場のラインが止まらない、バクテリア係数の減少、問題解決意識の向上といったものにつながっていく
つまり、マネージメントレベルで企業を良くしていくことにつながるのだ。
Comments