浅漬けによるO-157事故を自社の危害分析に応用する

2013/01/02 17:29 に 加藤光夫 が投稿   [ 2013/01/25 20:11 に更新しました ]
2012年8月、札幌を中心に起った浅漬けによるO-157食中毒事故については、堆肥からではないか等、原因を調査しているが、食中毒事故については不明なことが多い。

食品企業にとってこういった事故は、原因の特定発表を待つことではなく、原因の可能性の全てについて考察し、それらが自社で起こらないようすることである。つまり危害分析だ。

 

浅漬けの製造工程は、原材料野菜入荷→保管→洗浄カット→殺菌洗浄→漬け込み→パック→保管出荷、となる。

最初は原材料で、これについては、堆肥の可能性が指摘されている。牛はある程度の割合でO-157を持っているため、牛の糞にはO-157が含まれている。これを使った堆肥の製造過程で70℃以上に発熱し、O-157は死滅する。しかし何らかの原因で発熱が不足すると、O-157は生残し、これが畑に使われ、生産する野菜類を汚染する可能性がある。

食品工場の購入での対策としては、購入する農家が使う堆肥が加熱していたかどうかを確認してもらえると良い。ということは、堆肥を製造している所で、ロット毎に中心温度計を堆肥に挿し込み、安全温度に達温していることを確認して記録してもらうことだ。記録をしないと確認出来ない。

そこでこの危害分析は「原材料青果の細菌汚染」となり、対応は「堆肥使用の場合、発熱達温測定の実施」となる。

青果がO-157に汚染されていたり、その可能性があって事故になった例は、カイワレ大根、ほうれん草、メロン、モヤシ類など、多くの例があるので、青果を原材料にしている工場は、農業用水や肥料について充分に対策をとらなければならない。

  • 次の保管は温度と環境だが、これはこれまでの危害分析に一般的には入っているだろう。洗浄カットは洗浄水の安全と作業者の個人衛生でこれも入っているだろう。

    次は殺菌洗浄で、今回の事故では殺菌水濃度の記録をしていなかったことが指摘されている。濃度の確認は重要で、濃すぎればジアソーの場合残留による危害や臭いの問題になるし、薄ければ細菌の生残という恐ろしいことになる。


    手作業で殺菌水の濃度調整を行なっている場合は毎回の測定と記録は重要な作業だ。機械で行なっている場合でも、それが故障あるいは間違う可能性についての対策が出来ているかを確認する。

    ここの危害分析は「殺菌水の濃度不良」となり、対応は「濃度確認」で、頻度と方法と記録をする。同時に、濃度不良は洗浄剤についても、洗浄不足や濃すぎれば臭いのクレームになる事例も多く、問題は同じなので、この部分もチェックしてみる。

    青果類の洗浄については、形や部分による洗浄効果の違いに注意しなければならない。りんごやトマトなどの丸いものは洗浄しやすい反面、ヘタの凹んだ所が洗いにくく、汚染が残っていることが多い。

    白菜やキャベツなどの葉物は、葉の根本の汚染が取りにくい。葉を全部剥がして洗浄すればいいのだが、白菜1/4割りをそのまま漬け込む場合などは、葉を広げて充分に洗浄するなどの方法を徹底し、頻度を決めて洗浄効果の検証をする必要がある。

    洗浄水の量による違いもある。洗浄槽の大きさに対して、洗浄する量が多いか少ないかでは洗浄効果が全く違ってくる。当然多ければ汚染が残る。洗浄漕とロットの幅を決めることだ。洗浄水の温度による違いも把握して対応すべき。

    次の工程は漬け込みで、これは漬け込み液の精度と安全性だ。精度はミキシングが不良だと、味が違うことになるし、安全性に影響が出ることもある。使用水と液の製造場所の環境についての安全性の確認もある。また、液の温度と保管も影響する。

    ここの危害分析は「漬け込み液の不良」となり、対応は「精度、使用水、温度、環境」などの確認と頻度などになる。これは漬け込みを行なう全ての食品に共通だ。


    次のパックは、製造環境の安全性と作業者の個人衛生で、これは既に危害分析されていることだろう。

    危害分析は、HACCPを構築する時に最初行なっているが、そのまま追加しないで、あるいは見直しをしないで運営しているのを見かける。これではいけない。

    東日本大震災で放射能汚染が深刻な問題になっているが、今回の浅漬けによる事故のように、どこかで問題があった場合、それを傍観するのでは無く、自社工場でそれが起こる可能性について考慮、つまり危害分析を行なうことだ。浅漬け事故の原因がもし原材料の汚染であった場合でも、その他の可能性についても一緒にリストし、対応策を考え、現場に落とすことによって、製品の安全性は増すことにつながる。

    ある食品工場では、HACCP構築当時A-4用紙1枚の危害分析シートは、数年後、数頁に増えていた。では、安全対策は数倍に増えたかというとそうでは無く、内容、技術の進化と向上、統合整理などにより、それほど増えてはいない。つまり、危害分析はいくら増えていっても、現場での安全対策コストはそう増えては行かないということだ。

    新聞の社会面の下を見ると、回収やお詫び広告がよく出ている。これに注意し、その問題を自社製品の危害分析に加えることをルーティンワークにしたらどうだろうか。

    農林水産省では2011年に「生鮮野菜を衛生的に保つために」として、野菜の衛生管理ガイドラインを作っている。以下を参照

    www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_yasai/pdf/sisin.pdf

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