冷凍庫の掃除

2012/12/17 17:55 に 松本リサ が投稿   [ 2012/12/17 17:55 に 加藤光夫 さんが更新しました ]
小型の焼鳥工場で、冷凍庫の掃除をどうしようかと悩んでいる工場長がいた。
HACCPの構築を始め出していたのだが、冷凍庫の中が汚く、これを何とかしないとどうしようもないとわかってきたからである。
その冷凍庫は何と15年前のままで、床には木製の簀の子があることがかろうじてわかるのだが、簀の子の間にはぎっしりとゴミと氷が詰まっており、その上に氷がじわじわと鍾乳石の石筍のように乗ってきていて、しばらくしたら簀の子があること自体がわからなくなりつつあるのである。

HACCPの構築をする指導者(つまり私)が来る日が近づいて来た。
前回来たときに既に何とかしろと言われているので、意を決して2名の協力者を指名し、冷凍庫のスイッチを止め、解凍する原材料を冷蔵庫に移した。
原材料の解凍は普通は自然解凍をしているのだが、冷凍庫内の原材料を出来るだけ少なくするために、3日先までの使用原材料を冷蔵庫に移したのである。

残った原材料を、隅に寄せていくと、数枚使っている簀の子の境目がかろうじてわかってきた。
ドライバーやハンマーなどの工具を使い、境目の氷を慎重に我慢強く崩していくと、温度も次第に上がってきて、能率が良くなり、とうとう入口近くの簀の子1枚の周りを突き崩すことに成功した。そこで簀の子の端の部分に棒を差し入れ、テコの要領で押し上げると、バリバリと言う地獄の氷を破る音がして、15年間氷漬けになっていた簀の子が持ち上がったのである。

この1枚の冷凍簀の子を外に出して裏返して驚いた、普通簀の子の裏は空洞になっているのだが、これは全く違う、地獄の簀の子だ。裏はびっしりと何かが詰まっていて、厚い板になっていたのである。ハンマーで叩いて一部を崩して溶かしてみたら、それは泥だった。何故泥が簀の子の下にびっしりと?と考えたら、思い出した、最初の10年ほど、工場の前は舗装などされておらず、道路も砂利道だったのだ、原材料を入れるとき、車から降ろし、土足のまま冷凍庫にかついでいれていたので、その泥が簀の子のすき間から下に少しづつ落ち、次第に詰まり、びっしりと簀の子の下の空間を力強く支える土台になったのである。

1枚はがしたらあとはどんどん作業が進み、すべての地獄からの簀の子を外に放り出し、冷凍庫の中の仕上げ掃除をしたらきれいな床がぴかぴかと光っているではないか。
15年ぶりの日の光だ、喜べ!壁、天井から魔物の手のように出て来ていたつららと霜を取り除いたら、つるつるの空間だったのだ。

ホームセンターで買ってきたプラスチック製の1メートル四方、高さ約15センチの小型パレットを入れる。
これならちょっと荷物を寄せれば直ぐに外に出して掃除できる。通路はそのままだと滑るので、かみ合わせてつなぐことが出来る30センチほどのすべり止めを敷く、これならば荷物の下にならないし、直ぐに取りだして洗うことが出来る。

清掃後の冷凍庫は、容積が感覚的には2倍に見える。原材料を戻したら、すっきりすっきりで、胸のつかえが下りた。何度も冷凍庫に入り、この喜びを味わってから、外に出した簀子を見たら、泥と一緒に、指のゴムサック、発泡スチロールのかけら、ダンボールの屑、ヒモ、伝票らしきもの、どうしてかわからないのだが鶏の骨(中で骨付き鶏肉パーティーをやったことあるのか?)などが溶けるにしたがって続々と出て来て、地獄からの簀の子は時間とともに分解していったのである。

工場長はその後も毎日冷凍庫に入り、ほれぼれとした気持ちでHACCP構築に取り組んでいったのである。
とても真面目で立派な工場長です、HACCPは地道に取り組むものです。
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