HACCPを構築すると売れて儲かるようになる理由

鶏卵肉情報センター「月刊HACCP」1999/11月号 フーズデザイン 加藤光夫 


 HACCPは金がかかる、あるいは効率が悪くなる、と考える。HACCPの言葉を聞くと、設備投資がすぐに頭に浮かぶ。これらはすべて間違いだ。HACCPを構築するには今までの多くの例から言って、発想してから2年ほどかかっているのが一般的で、いわば3年目からHACCPの本格的運用が始まるわけだが、ここまで来るとHACCPというのは売れて儲かるものだということがわかる。どうしてそうなるのか。

ある、無添加の食品を作っているメーカーがHACCPを導入しようと活動を開始した。ここの製品は無添加だから日持ちがせず、それまでは4日しか持たなかった。しかしHACCPを導入してからは1週間持つようになった、もちろん原材料を変えることなく、添加物も加えていない。

なぜ日持ちがするようになったかというと、まず、工場内が衛生的になり、温度管理もしっかりするようになったので、単純に製品の細菌が少なくなったのである。HACCPの土台となる一般的衛生管理では、汚染されている原材料や、きちんと手を洗わない従業員など、問題のあるものを入れないようにする。空気や水もそうだ。工場内ではそれまでのサニテーションを見直して、効率的、効果的な方法にする。細菌の増殖を抑えるための温度管理も徹底する。

これに加えてHACCPの本体で行なうことは、例えば製品の調理温度では、それまでは経験だけで行なってきたのが、HACCPを導入してからは、バクテリアをきちんと殺す温度でなおかつ加熱し過ぎでおいしくならない、つまり安全でなおかつジューシーでおいしい製品にすることが出来るようになった。それも安定して出来るのである。

最終的に細菌が少なければ日持ちは伸びる、さらに適正な調理で、どの製品も安定しておいしい、こうなると顧客が気がつくことになる。それまでは出来たばかりの製品を食べたらおいしいのだが、3日目ぐらいのになると鮮度が低価しておいしくなくなってしまう。4日目のを買った顧客はもう2度と買いたくない、となってしまう。ところが1週間持つようになると、4日目に買った製品も同じおいしさなので、あそこのはいつ買ってもおいしい、となる。評判が良くなると販売してくれる小売店も増えてくる。なぜ日持ちがしておいしくなったのかと聞かれるので、実はHACCPを導入したのだと答えると安心納得をしてくれて、新規取引が急増した。

売れるということは回転が早くなるのでそれだけでもちろん儲かるようになるのだがそればかりではない。HACCPは製造工程を見直し、工程順に正しく一方向に作業が流れるようにする。工程の流れは、スタートは汚染地域だが、下処理をしたりするもう少し清潔な「準清潔ゾーン」に入り、調理してパッケージをする最もクリーンさが要求されるところでは「清潔ゾーン」になって、最もいい状態で安全にパッケージされた後箱詰めされ、出荷にいく、ということになる。

このために、HACCP導入前には気が付かなかった無駄な製造の流れや、動線が交差してしまう交差汚染、人の無駄な動きなどが無くなり、製品の製造スピードが速くなった。また、HACCPで決めたことが出来なかった場合、なぜそうなってしまったか原因を見つけ、その場で直すだけでなく、2度と同じ問題が出ないように「恒久処置」まで行なうため、次第に製造ラインが止まらなくなった。HACCPを導入する前はしょっちゅうラインが止まっていたのだが、導入後は止まらなくなったのだ。これによって過去の1割増、2割増という形で製造量が増えて来たのだ、これは当然コストダウンにつながった。

工場がクリーンになり、製造量も上がった、これによって製品の日持ちが良くなり、おいしくもなり、生産量も上がった。だから「売れて、儲かる」ようになったのである。これがHACCPの姿なのである。

HACCPは設備投資から考えるというのも間違いだ。厚生省の方もよく言っているのだが、HACCPはソフトウエアであり、知恵であり、アイデアで行なうものである。HACCPを進めるに当たって、まず現在の施設設備はそのままで構築するという考え方から始めたらいい。現在の工場で、どのように一般的衛生管理を行なったらいいのかを考える、知恵を出して出来るようにするのだ。その中で、ネズミの穴があったり、虫が入ってくるなどの場所があったら応急処置でふさぐ。動線がおかしかったら機械や作業台を動かして直すことが出来ないかを考える。交差汚染の危険性を見つけたら、作業場所を離せるかを考え、だめならばパーティションを置くなどして工夫できないかアイデアを出す。サニテーションも居残りでやらせていたのでは早く帰りたくてやる気も出ないとわかったら、就業時間内で、科学的に手順を組んで行なう、これで古い施設でもクリーンにできることがわかる。そして、自分の工場がどのような状態になっているかを把握したら、最近続々と出て来ている食品衛生機器、システムの導入を検討したらいい。

HACCPは米国が先進国だが、米国の工場でHACCPを始めだすとき、施設設備をどうしようかという発想は出てこない、現在の工場内でHACCPを構築するためにはどうするかになる。もともと米国の工場は衛生管理がしっかりとしていることもあるし、広く余裕をもって強固にできているせいもあるが、HACCPはソフトウエアであり運営であるという考え方である。日本でも同じでいい。ただし、現在の工場はもう何十年も前に作ったのでもうつぶれそうだ、HACCPをきっかけに大改造か新築を考えよう、というのなら全く最初からHACCP対応工場を考えたらいい。HACCP対応にしっかりと作り、HACCPを運営すれば何十年も使える。


株式会社 フーズデザイン 加藤光夫

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