HACCP推進の世界的中心FDA(米国食品医薬品局)の最新動向

これからの規制対象5品目とリテイルHACCP 

ブレーンダイナミックス「燃えよリーダー」1999/7月号 フーズデザイン加藤光夫


1.FDAの今後の規制対象5品目の構想

 

HACCPが今後どういった方向になるかであるが、日本のHACCP制度は米国から来ている。米国では、現在「規制」として、食肉、水産製品があり、この流れが日本の厚生省の「承認制度」となり、取引基準になりつつあるわけである。米国でHACCPを推進している管轄は、USDAとFDAである。USDAは、食肉のすべてを扱う。そして、FDAは、食肉以外のすべてを扱っている。小売り(リテイル)におけるHACCPもFDAである。食肉はすでに規制に入っているが、FDA管轄で規制に入っているのは水産製品だけである。では、これからFDAがどうするかを見てみると、日本のこれからも見えてくる。そんなわけで著者は98年12月に米国FDAに行き、これからの方向を聞いてきた。このヒアリングは、非公式のもので、FDAの担当者名も明かせないし、向こうもこちらの名刺を受け取らなかった。写真だめ、テープだめ、の中で話をしてくれたものである。

まず、FDAが肉、魚に次ぐ、これから規制を考えているものは以下の5つだという。5つの項目はFDA側が言ったもので、解説は著者による。

1.非加熱のジュース

加熱殺菌をしない生ジュースである。米国ではリンゴジュースなどの生ジュースによるO-157事件が常に出ている。O-157は牛などの家畜由来のバクテリアである、それが何でジュースになってしまうか不思議かもしれない。木に生っているリンゴは、収穫をしたあと青果物としての「リンゴ」で販売をするのだが、リンゴジュースにするものは、木から地面に落ちてしまったものも使う。このリンゴ畑近くに畜産農家があったらどうなるか。O-157は牛の糞に混じって出来てしまうが、これがキツネなどの野生動物や、人間の靴、あるいはハエなどを媒介として落ちたリンゴに付着をしたらどうなるかである。

ジュースにするリンゴはもちろん洗浄してから絞るのだが、リンゴの傷などからO-157が中に差し込まれるなどして、洗浄で落ちなかったO-157が絞った生ジュースに入り込む可能性がある。ジュースは搾ったあと、大型のタンクに入り、撹拌されるが、中は水分と栄養がたっぷりとある。そうするとタンク内でO-157は増殖をし、全体に拡散し、ボトリングされることになる。加熱ジュースは殺菌されるが、生ジュースはされない。同じような理由によって、米国では夏の湖でのキャンプでのO-157事件が多い、家畜の糞が何らかの媒介によって湖に移り、その水が口に入ったり、野菜の洗浄などをして加熱をした場合など、危険性が出てくる。最近のO-157は水の上で8週間も生きている強いものが出ているという。

2.青果

ジュースと同じ理由によって、青果である。青果では温度管理が重要になる。野菜の種類によっては収穫後低温に維持しておくことが、鮮度管理、品質管理とともに、安全対策として重要なものがある。たとえばレタス、コーン、アスパラといったものは、6℃程度に維持することが望ましい。

3.殻付き卵

以前の卵は、殻の表面にサルモネラ菌が付着しているので、殻を割るときに気をつけろ、といわれていた。確かにその通りだったのだが、最近の卵はそうではない。サルモネラ・エンティリテイディス(SE)というのが卵の中の黄身に最初から居るのが出て来ている、しかもこの確率が次第に高まっているのである。生んだ直後SEは少ないから、そのまま生で食べても問題がないが、室温のまま何日か置いておくと、殻の中でSEが増殖していき、食中毒の危険性が出てくる。殻付き卵は7℃かそれ以下の冷蔵管理が望ましい。

4.冷凍デザート

アイスクリーム、フローズンヨーグルトといったものである。これらは乳製品になるので、日本ではすでに承認対象になっている。日本では一昨年ぐらいだったか、大阪のメーカーで製造された学校給食用冷凍流通のムースにサルモネラが入っていて、静岡県の学校で集団食中毒が出たことがある。バクテリアが混入していた場合、解凍後、長時間放置しておくと危険性が出てくる。

5.チーズ

これも牛から出て来る乳製品なので、同じ理由である。

 

FDAでは、これらをすぐに規制するという方向ではない。HACCPが食品の安全性を確保するために非常に有効だという、産業界の理解が進んできているので、この流れがさらに熟成をしていけば、規制を考えたいとしている。米国の産業界ではHACCPは最初「モンスター」といわれ、特に中小企業から反発が出た。しかしHACCPの問題解決の素晴らしさが中小企業にも急速に理解されてきていることがわかっているので、さらに浸透したところで、次のステップに進めたいという。そして、最終的には全ての食品を対象にした「ユニバーサルHACCP」に持っていき、「ファーム・トウ・テーブル」(農場から食卓まで)のHACCPチェーンを確立したいとしている。この考え方は日本の厚生省からも全く同じ形で発表されている通りである。

 

2.リテイルHACCP

 

FDAにはもう一つ大きな方向がある、それはスーパーマーケットやレストランなど、消費者に直接食品がわたされる場所での「リテイルHACCP」である、リテイルというのは「小売り」の意味である。

リテイルとは、「小売り」の意味だが、対象はどの産業レベルなのかというと、

インストアベーカリー

バー、居酒屋

民宿、ペンション

カフェテリア

キャンプ施設1カジノ

養護施設

孤児院

教会のキッチン

軍隊・鉱山などの売店

工場、大学などの食堂、喫茶室

コンビニ

地域等の○○フェア、一時的なアウトドアでのイベント

グロッサリーストア(デリ、サンドイッチショップ、サラダバー〕

老人ホーム、ヘルスケア施設

州をまたいでケータリングする営業

カタログ等で申し込まれて、食材を前処理して、消費者に郵送する営業

スーパーマーケット

家から離れれない人のための給食サービス

自動車による飲食店営業

レストラン(チェーン店、エスニック、ファーストフード、又はフランスレストランのようにフルサービスをする施設

道ばたで食品を売っている露店

学校給食

スナックバー

といったところである。代表としてスーパーマーケットで考えてみよう。スーパーマーケットというのは、大型の、それもかなり複雑なシステムで成り立つ食品工場である。総菜部門を考えてみると、原材料を仕入れ、加工、加熱調理をし、パックをして、売り場に並べて販売をする。これは食品工場のシステムである。そして問題は、食品工場のように一つのアイテムを大量に作らないかわりに、数量は少ないが、アイテム数が非常に多い、ということである。大型のスーパーマーケットでは数千アイテムにもなるだろう。この中でそれぞれの製品に対してHACCPを行うことは実際上不可能である。

リテイルHACCPを考える際、もっとも難しかったのは、何かというと、

扱う品目が多いので、難しい面があった。

スーパーマーケットでは、数千アイテムになる。

デリカテッセンストアでは、数百アイテムになる。

レストランでは、最低数十アイテムになる。

これらのそれぞれのアイテムについて、食品工場と同じHACCPを行うのは、現場の状況を考えれば、不可能である。しかしながら、消費者に渡る最終レベルなので、進める必要があった。

こういった中でFDAではリテイルでのHACCP手法を発表した。それは、全てのメニューやアイテムをたった3つの種類に分ける方法である。

1:加熱調理工程の無い食品加工(サラダ、冷たいデリカテッセンなど)。この以下のような工程でのHACCPを行う。

原材料受け入れ

保管

前処理

盛りつけ

保温

提供

2:加熱調理して、その日のうちに提供する食品加工(ステーキなどレストランなどでの暖かいメニューなど)。この以下のような工程でのHACCPを行う。

原材料受け入れ

保管

前処理

加熱調理

保温

提供

:複雑なプロセス(デリカテッセンで、陳列している弁当などを、電子レンジで温めて提供するものなど。あるいは、センターから運ばれてきた冷蔵スープを、店でケトルなどで暖めて提供するものなど)。この以下のような工程でのHACCPを行う。

原材料受け入れ

保管

前処理

加熱調理

冷却

再加熱

保温

提供

これならば、スーパーやレストランなどそれぞれの小売りの立場で、この3つの種類のHACCPシステムを確立していけばいいのである。米国の小売では大手企業がHACCPの導入を少しづつ行っているが、これならば日本の中小企業でも出来る。

資料 米国スーパーでのPP記録表

米国メリーランド州に店舗展開するスーパーマーケット「ジャイアントフード」での、店舗でのチェックシート。冷蔵庫や、陳列ケース、バックルームなど、主要な場所の衛生管理チェックシートで、毎朝このシートにしたがって監視をする。これがPP,GMPの監視で、これと平行して「今週のHACCP重点品目」が毎週1アイテム指定される。たとえば今週は「店内絞りの生オレンジジュース」その次の週は「デリカテッセン部門のローストチキン」といった具合。


株式会社 フーズデザイン 加藤光夫

 


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