仔牛をメニューに

2013/05/25 16:31 に 松本リサ が投稿
仔牛肉は、ヘルシーで高級な肉として、量的には少量ながら、昔からレストランのメニューとして扱われてきた。仔牛というのは、普通は生後12カ月までの牛を呼んでいるが、実際に肉として流通する場合、9〜10カ月以下のものを言う。
牛を年齢で分けると、3年以上の長期肥育は、日本での和牛や、国産牛肉。2年程度が、米国やオーストラリアで一般的に行なわれているグレンフェッドビーフで、最も効率のよい肉用牛肉の生産期間だと言われている。これ以下、12カ月から18カ月程度が、オーストラリアやニュージーランドで行なわれているグラスフェッドビーフで、「イヤリングビーフ」とも呼ばれている。そして12カ月未満が仔牛であるが、仔牛肉として出荷されるのは9〜10カ月未満である。
和牛、国産牛肉は、脂肪交雑(マーボリング、サシ)を十分に出して、肉をとろりとさせ、重厚、高級感があり、高価格の牛肉を作るために行なわれる。しかし、低価格で、効率がよく、そして脂肪交雑もある程度ある、一般的に気軽に食べられるグレンフェッドビーフは、大体24カ月程度のものが多い。米国の牛肉はほとんどこれである。そして、穀物(グレン)を食べさせないで、草だけで生産をするグラスフェッドビーフは、12〜18カ月ぐらいが効率がいい。もともと牛というのは草を食べて育つのだから、それに穀物を食べさせて軟らかくするというのは、人間のニーズから来ているのだろうが、自然な感覚からいったらおかしいことである。グラスフェッドビーフは、広い土地と豊かで美味しい草があればいい。

さて、仔牛であるが、もともと仔牛というのは、乳用牛の生んだ子供、特に雄牛を、小さいうちに屠殺をして食べるという、食肉原料としての利用を行っていた。雄牛というのは、雌ではないので、子供をつくらない、牛乳も作らない。そのためにある程度は小さいうちに屠殺をして肉として取り扱ったらいい、そうすれば余分な餌もいらない、という考え方があったようだ。しかし、雄牛の子供を去勢して、牛肉を作るための生産が増え、「乳用去勢牛肉」が牛肉マーケットの中心になって来始めると牛肉原料を大事にするという考え方から、乱暴な仔牛肉の生産は行われなくなり、高級な食肉としての限定された需要に応じる生産体勢になってきたようだ。
仔牛肉は、Viel「ヴィール」、Calf「カーフ」、日本語でスモール等と呼ばれるが、暗くした繋留場で強制的に給餌されたものを「ホワイトヴィール」ともいう。
仔牛の生産が盛んなニュージーランドでは[ミルクフェッドヴィール」あるいは[ボビーヴィール」と呼ばれる。ミルクフェッドビーフというのは、ホワイトヴィールのような強制給餌ではなく、母牛のミルクのみを与えられた仔牛の肉をさす。牧草、穀物や硬いものは全く与えられていず、肉に草などの特有な風味がない。また、ミルクフェッドヴィールの特徴は柔らかく、赤身が多いこと。そして低カロリーで、多量のタンパク質、ビタミン、ミネラルを含んでいることである。ボビーヴィールというのは別名で、ヴィールを開発していたごく初期に、ニュージーランドの農家は、1頭につきほんの1シリングほどの支払いを受け取っていた(今日の円で1頭につき70円)。そして、ニュージーランドの俗語で1シリングはボブといった所から来ている。
現在ニュージーランドでは、14,000戸程の酪農家が80〜90万頭のミルクフェッドヴィールを生産しており。シーズンは7月中旬から10月末まで、しかし、フローズンの対応などで、製品の入手は年間を通じて可能である。
一般的な仔牛の枝肉は平均して17キログラムぐらいで、ニュージーランドの製品は以下のようなものがある。
▽ボーインヴィールカーカス(ポリエチレン+ストッキネットラップ)
▽同レッグ〔1.3キログラムまでIW(個別包装)〕
▽同レッグ〔1.4キログラム〜2.3キログラムまでIW(個別包装)〕
▽同レッグ〔2.4キログラムIW(個別包装)〕
▽同クロッドLP〔レイヤーパック〕
▽同トランクBP〔バルクパック〕
▽同テンダーロインLP〔レイヤーパック〕
▽同バックストラップLP〔レイヤーパック〕
▽ヴィールタンIW6×4キログラムインナー〔内装〕
▽同キドニーIW6×4キログラムインナー〔内装〕
▽ハートIW8×2.5キログラムインナー〔内装〕
▽同レバー750gまでIW8×4.5キログラムインナー〔内装〕
▽同ブレインIWインナーにつき6個、外側カートンにつき36インナー
また、米国のものは写真のようになっているが、ポーションカットをした製品は各パッカーから多く出されている。

仔牛の科学的組成概要
水分 72〜76%
粗たんぱく質 72〜76%
粗脂肪 2〜6%
灰分 0.9〜1.2%

メニュー

仔牛のステーキ
ステーキにするには、骨無しではロイン、ストリップロインを切り身にして使うか、骨付きのポーションカットを使う。仔牛はロインの断面が小さいので、軽い重量のステーキが出来る。ヘルシー嗜好に合う仔牛ステーキとしては、あまり重量的にボリュームがないほうが好ましい、その分、季節の野菜などをたっぷりと使ったガロニを充実させたらいい。豪華で、見た目にはボリュームがあるが、よく見ると肉が少なく、野菜が多いヘルシープレートとなるのがいい。
ソースを考えるなら、仔牛肉のさっぱりさをある程度カバーしたいならばグレービー系がいいが、この場合にソースの色はあまり濃くしないことである。仔牛の肉の特徴は色が浅いことで、見た目にこれが売り物にもなるので、ソースでこれをわからなくしてしまってはおもしろくない。
ヘルシーさをソースにも求めるならば和風がいい。醤油をベースに、生姜、大根オロシなどを組み合わせてもいいだろう。どちらにしろ、ソースの色で肉全体を覆わないようにして、肉の色を生かすほうがいいだろう。ラムのようにハーブを使う方法もあるが、あくまでも肉の味が蛋白のことを考えておくことである。ハーブの香りが強すぎると、肉が台なしになってしまう。

仔牛のカツレツ
淡泊な肉なので、カツレツは仔牛のとてもポピュラーなメニューである。メニュー名そのものにヨーロッパや、ウィーンの香りが入っている。ボンレスのラック、リブアイ、ロイン、ストリップロインを使う。チーズを使ったり、高品質の衣を使って組み立てたらいい。加熱はあくまでも牛肉なので、揚げ過ぎないことである。

仔牛のロースト
ロースト用にはホテルラックのリブ7本入りが最も高級メニューになる。米国の大体の規格で約5キロぐらいのブロックになるので、一枚づつのメニューにするか、パーティー専用メニューにするか、あるいはブロックのまま客席に持っていって、その場でカービングをする、米国のローストビーフの老舗「ローリーズ」のような形式にするか、店のタイプによって使い分けたらいい。
仔牛のサンドイッチ、あるいはサラダといったメニューにするには、低価格の部位をロースとして、細切れタイプにスライスをして使うといいが、この場合は、チャック、ショルダー、レッグのボンレスを使うといい。これらの部位はあまり日本には入っていないかも知れないので、サプライヤーと相談することである。チェーンなどで大量に使うのならこれだけで現地にオーダーが出来る。

オーソブッコ、シチュー
高級な煮込み料理で有名なオーソブッコは、普通の牛のスネ肉を使うことが多いが、本来仔牛の骨付きスネ肉を使う。丸ごと焦げ目を付けた後、スープやトマトジュース、トマトなどで長時間煮込む料理で、骨の髄からも味が出て、最高のシチューになる。フランス料理で使うフォンのフォン・ド・ボー(茶色のフォン)は仔牛の骨、肉から作るわけだから、それだけおいしいシチューになるのは当然である。ニュージーランドの仔牛の骨はスープ用として日本にも輸入されている。
オーソブッコ用には、丸ごとのフォアシャンクと、スネ肉を骨付きのままクロスカット(骨に直角にバンドソーで輪切りにしたもの)の2種類ある。大きなパーティー用の煮込みならば丸を使って、カービングサービスするのもいいだろう。丸ごとのフォアシャンクは1本が1キロ強ある。テーブルプレート用にはクロスカットが使いやすい。

独立系レストランでは、店の特徴あるメニューの一つにどうだろうか。ヨーロッパ系のレストランでは一つあったほうがいいのではないだろうか。スポットでイベントメニューで一度試してみるのも手だ。
チェーンレストラン、ファーストフード、サンドイッチハウスなどでは、仔牛肉のロースト、サラダ、サンドイッチなどのメニューがそろそろ出てきてもいいころなのではないだろうか。メニュー開発競争で奇抜なメニューがいろいろと出てきては消えていくが、いい素材を元にした次のメニュー開発に仔牛を考えてみたらどうだろうか。

柴田書店「月刊食堂」97/4月号より
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