煮豚

2013/05/24 1:09 に 松本リサ が投稿
安定して人気のあるミートデリに、焼き豚と煮豚がある。焼き豚はオーブンや窯が必要になって、新しくやるには費用がかかるが、煮豚は鍋があれば出来るので、手軽に挑戦できる。部位のバランスを調整するためにも有効だし、ロスの低減にも役立つ。
ある店では、豚肉の仕入れを、セットプラスロース・ヒレ・バラのパーツで仕入れているのだが、いろいろ工夫をしても、日によって部位のバランスが崩れてしまう。顧客があっての販売だから、ぴったりと行くわけが無い。しかし崩れたバランスをそのままにしておくと、数日以内にしわ寄せが来てしまい、これがさらにエスカレートしてしまうと、当然ロスにつながってしまう。そこで、煮豚で調整をしようと考えた。

それまでも煮豚を店内で調理して販売したのだが、使用する部位は肩ロースを使い、いつも同じ安定した製品を作るようにしていた。しかしこれによってもバランスが崩れてしまうことにもなっていた。そこで考え方を反対にして、使う部位は余っている部位を何でも使ったらどうかと考えたのである。

煮豚というのは、ミートデリとして販売するには切り身にスライスをして、トレイに数枚並べて販売をする。この切り身の断面は必ず顧客に見えるわけなので、部位やスジ、脂肪の入り具合は誰にでもわかる。そして、顧客は、脂肪の多いほうが好きな人、赤身が多いほうが好きな人と、いろいろいるわけで、それはパックを見れば直ぐにわかることになる。使用する部位が、肩ロースと腕のこともあるし、モモ系統が多くなって、赤身の製品が多くなることもある。その日によって煮豚に使う部位のバランスが違うことになるのだが、これが色々な煮豚のパックになるために、かえって選択が増えることにもなった。従来からの肩ロースのに豚にこだわる人はそれを買えばいいし、ヘルシー志向の人はモモ系のを買えばよい。

こういった考え方で実施を続けていったのだが、気が付いたら以前の売り上げの倍以上の販売量になっていた。おまけに部位のバランス崩れなど無くなってしまったのである。製造方法は簡単で、量的に多い部位が夕方わかってくるので、その部位をサクにして仕込んでおき、翌朝早朝からすべての煮豚用材料を鍋に入れて2時間ほど煮て、荒熱を冷ました後、切り身にしてトレイパックし、売り場に出す。ということになる。ロスも激減した。


煮豚を作るときのポイントはいくつかある。まず、サクにするときに、繊維に添ってカットをすることだ。繊維に直角や斜めにカットをすると、タレが肉の中に早くしみ込んで、煮詰まる状態になり、肉が硬くなってしまう。また、いくつかの部位を一緒にこの場合は煮ることになるために、繊維に並行にカットしてあるサクと、斜めや直角にカットしてあるサクが一緒になると、仕上がりに大きなムラが出来てしまうのである。

サクの太さも出来るだけ均一にする必要がある。太さがあまり違っても仕上がりにバラつきが出る。サクの一方が斜めにカットされた場合、細い部分はオーバークッキングになるので、やはり硬くなってしまう。

テンダーライザーという機械がある、肉に細いサーベル状の数百本のナイフを刺し込んでスジを切り、食べたときの食感を軟らかくするもので「ジャカード」社製が最も古くからのもので定評がある。この機械を使う場合、繊維に斜めか出来れば直角に細いナイフが入るようにすると、スジがカットされ、効果が上がる。これを煮豚用のブロック肉にかけると、タレが内部に入りやすくなるために、味がしみ込むのが早くなり、煮込む時間も短時間にすることが出来る。

テンダーライザーを使う場合、タレの味、濃さを調整をしないと、味が強くなりすぎてしまうのと、煮込む時間の調整が大切である。テンダーライザーをかけない場合は、仕上がるまでの時間がある程度範囲があり、多少肉の太さが違っていても、煮込む時間にバラつきがあっても、仕上がりのバラつきはそれほど目立たない。しかしテンダーマチックをかけると、上手く仕上がる範囲がだいぶ狭くなる。ということは、少し間違うと製品にバラつきが出てしまうことになる。テンダーマチックをかけた場合は、加熱温度と時間を厳密に決めておく必要があるわけである。

ネット又は凧ヒモを使うと安定して調理することが出来る。肉の繊維を適当に締めることになるので、肉全体を均等に加熱味付けをすることになるのである。また、仕上がったサクにヒモの跡が残り、これが高級感を出すという点もある。

店の特長をいちばん良く出せて、美味しさのポイントにもなるのは煮込みタレである。自分のレシピをしっかりともっていて、独自に手づくりするのならそれで良いが、新しく始めるとなるとこれは難しい。そこでメーカーのタレを元にして、それを独自に調整をすることになる。各メーカーから出されているタレは多くの販売者の好みに出来るだけあうように、最も平均的な味になるようにしてある。これは当然で、でなければナショナルブランドのタレにならない。これに店の特長を出したい場合、ちょっと工夫をすることになる。女性の顧客向けにしたければ甘くし、おつまみとしてのアイテムにしたいならば辛くする、弁当用にしたいならば甘くする、といったことになる。地域によって味の濃さや好みが違う、主となる醤油の味でも、関東風、関西風、そして甘い九州風と違う。塩のレベルも、関東と関西では関西の方が薄くする必要がある。こういった調整を、メーカーのナショナルブランドに、ちょっと工夫をして、テストを繰り返して決めていくことである。

タレの味の工夫にもう一つ役立つのは、生鮮を使うことである。生姜やニンニクなどをちょっと強化したい場合、生を使うと味がぐっと引き立つ。ネギ、タマネギ、ニラなどといった野菜類も隠し味として大きくバックアップできる。フルーツを使って若い女性向けの味にする方法もある。その地域で売れている味噌を入れる、胡麻を加える、唐辛子を入れて辛くする、中華料理用の調味料、例えば八角などを入れて、中華味タイプにする、辛し味噌を入れる、カボスやレモンなどを加える、など、多くの工夫が出来る。付けタレはメーカー製品の小袋から選定するとよい。



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