一桁上の価格マーケット

2013/05/23 18:35 に 松本リサ が投稿
一般的な弁当マーケットというのは価格が勝負で、安くは二百円台からあり、六百円台ぐらいまでの間に多くが入っている。価格勝負か体力勝負で、競争が激しい。新し

くなった羽田空港第二ターミナルに行ったら「空弁工房」というコーナーが出来ていて、最近流行りの機内で食べる弁当がいろいろ出ている。価格は一般的なものよりも高いがそれでも千円前後といったところだ。弁当製造会社の顧問を何社かしているが、こういった状況の中で「三千円の弁当を考えてみたら?」と言うとびっくりする。

そんな高い弁当が売れるのか? という反応に普通はなるが、先日この価格の弁当を作っている料理店に行って最近どうかと聞いたら、以前は毎日二十から三十ぐらいだと言っていたが「今日は百出ました」というのでこちらもびっくり。

この弁当は通称「勝負弁当」と呼んでいて、実に特殊なニーズに対応している。

ことは二年ほど前に遡る。この料理店は、店主が京都の老舗料理店系列で修業をし、関西のハモやぐじ(アマダイ)といった本格的高級魚を美味しく出してくれている。最近では関西の料理素材がやっと一般的になりつつあるが、十年前ぐらいまでは見ることもなかった。そんなところに、この店主は数年前に新しい店を造ったので、美味しいもの大好きな顧客でにぎわっていた。

そんな顧客の中に、大手の薬品メーカーの営業マンがいて、あるとき店の女将が作ってもいないのにふと「お弁当なんて、お宅では買いますか?」と話してみたら「え! 弁当あるんですか?」となった。弾みというのは面白いもので、女将は「はい」と自動的に口走ってしまったら「いくら?」となり「いくらぐらいなら良いんですか?」となり「三千円までなら」というので「それなら出来ます」と実態が無いのに決まっていってしまった。

製薬会社の営業方法というのは、大手の病院の医者の皆さんに薬の説明をして、使ってもらいたいというのだが、そのために説明する時間が当然必要になる。しかし医者というのは忙しく、おまけに何十人もの医者を一堂に集めて説明をする時間なんてとてもではないが出来そうにない。しかし、医者でも昼食はとるわけで、その時間、弁当をご馳走するからという仕掛けを作り、その間にセールストークをする方法をやりだしていた。それをやっている営業マンにこの話しがぶつかったわけである。

何で三千円になるかだが、これ以上高くなると、厚生労働省の関係だか何か知らないが、贈賄だかになってしまうので、これが上限のようなのである。

女将は主人にこんなことになってしまったことを話したら「それは面白い」となった。早速設計を始め出したのだが、コンセプトはこの料理店で出している料理をそのまま、グレードも何もかも箱に入れる、というものである。

 

ここで話しは遡る、新しい店をオープンして一年ほど経ったころだろうか、主人が「おいしい牛肉はないだろうか? ずーっと市場などで探しているが、これだという肉がなかなか見つからない」という。牛肉の和風ステーキをメニューに入れたいのに、それに合ったのが見つからないのだ。そこで私は言った「バカモノ! 何で私に最初に相談しないんだ」と言ったら「すみませんでした、でもそんな牛肉ありますか?」と聞くので「バカモノ! 肉を探すから見つからないんだ、牛をまじめに作っている人から探さなければ駄目だ」といった。「そんな人いますか?」というので「バカモノ! いるからすぐ米沢に行ってこい」

そんなことで紹介した牛肉は、牛を大切に優しく育て、いったん屠畜場に出してから全てを買い戻し、HACCPに対応した新工場まで建設して衛生管理しっかりと切り身までにして直送する「米澤佐藤畜産」というところで、さっぱりとしながら美味しさたっぷりの和牛肉を出している。これに主人と女将は出会い、すぐに話がまとまり、おまけに山形のおいしい日本酒まで見つけて東京に帰ってきた。

そしてこの牛肉をメインに弁当を作り、薬品の営業用に供給し始めたら、この弁当のおいしさに医者はびっくりし、営業もうまくいくようになった。何しろ一時間もの時間をとってじっくりと説明できるのだから、理解度、営業力もすごい。しばらくして次の昼食会の話をすると医者側は「この間のあの弁当・・・」と間接的に話をするようになり、次第に定着していったのである。そして、他の病院へ、おまけに競合他社の薬品メーカーにと少しずつ広がっていったのである。

何で「勝負弁当」と呼ぶようになったか、そう、売り込みのとどめとしての「勝負」に使うからなのだ。

その後鶏肉のニーズも少しはあるということで、東北の地鶏を入れた。最近時間をかけて計画しているのは豚肉で、角煮の試作もし始めている。使う豚肉はもちろん最高級のバラ肉で、これは「ベーコンはこんなにもおいしいものなのか」というベーコンを作っている小さなメーカーが使っているバラ肉を使用している。

肉のほかに入っているのは、鮮度抜群の芝エビを百パーセント使った「エビしんじょ」、これを食べたらもう他のは食べたくなくなってしまう「丸茄子」、なんとハモのかまぼこ、こんなに小さいのに香りたっぷりのミニアスパラ二本、ああ昔の味小芋、濃い味芝漬け、エキス凝縮ミニ玉葱、とっても高価で一口噛んだら山の土香詰め込み山ゴボウ漬物・・・そしてデザートは千疋屋で扱うレベルの巨峰だのイチゴだのを季節によって。これにお茶まで付けてしまっているのだ。

一緒に試食をしていた、銀座でおむすびショップを経営している社長は「これを三千円で買って、銀座で五千円で売ろうか」などと冗談を言っていた。

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