野菜工場

2013/05/25 16:36 に 松本リサ が投稿
野菜を工場で製造するシステムが急速に伸びてきている。野菜を、閉鎖された空間で、人工的に製造することによって、相場の変動のリスクをなくすことが出来る。閉鎖されているので、バクテリアの管理がやりやすく、無農薬、有機栽培、オーガニックへの対応もできる。O-157の事故によって、HACCPが浮上してきて、HACCPによる安全な食品製造システムが出来ることが次第に情報として一般の業界に流れてきている。まだ理解の普及が始まった程度の段階だが、これから急速に知られていくだろう。このHACCPへの動きにも野菜工場は対応できる。

野菜を工場で作れるということは、ユーザー側にもメリットが大きい。フードサービスや流通業、食品メーカーにおいても、原料食材が、天候や相場に左右されることなく、安定して仕入れられるのであるから、経営にも貢献する。消費者のニーズで高まっている「ナチュラル志向」にも対応して、オーガニックの生産も盛んになってきているが、野菜工場ならば計画的に生産ができる。

埼玉県庄和町の「平成クリーン野菜工場」では、リーフレタスを生産し、銀座の高級フランス料理店や各地のホテルなどに出荷している。ビニールハウスの中で、コンピュータで、光、水、肥料、温度を管理し、水耕栽培で大量に作る工場産の野菜は、土耕ものよりも育つのが速く、農薬を使わないか、ほとんど使わないで出来る。

エス・テー・アイ・ジャパン(東京)は、消費電力を通常の三分の一以下に節約する植物工場システムを開発した。レタス栽培の場合、通常のメタルハライドランプを使った植物工場の消費電力の30%強に抑えられるという。

植物栽培技術の開発会社イー・ティー・ハーベストは、レタスなどの野菜を量産する大型の栽培プラント「植物工場」を東京・大田区につくる。室内に多段式の栽培棚を設け、無農薬で野菜を育てる。毎日500株のリーフレタスを出荷する予定。都内の外食店や高級スーパーなどに販売する。

キユーピーは完全人工光型植物工場「TSファーム」を茨城県五霞村を持ち、サラダナやリーフレタスを栽培する。特徴は、少菌、無農薬、省労働力、省スペース、通年収穫、同一品質、その他数多い。採れる作物は露地ものに比べて細菌数が1/100ということ。水で洗ったらかえって汚染されるレベルである。この植物工場システムは農水省の補助のバックアップもあって販売されており、静岡、福井、富山、京都、高知埼玉等に設置されている。これらの主な栽培野菜は、サラダ菜、春菊、リーフレタス、ホウレン草、レモンパーム、ブッシュバジル、また、花類も、ミニバラ、キンギョソー、セキチクなどができる。

福井県武生市勝蓮花町にある農事組合法人「施設野菜高度生産組合ハイテクファーム」は、完全無農薬栽培で低細菌のサラダナと、リーフレタスを周年生産している。販売先は、県内外のスーパーマーケットだけでなく、レストランやサンドイッチ業者など業務用にも安定供給している。植物工場ハイテクファームは、光、温度、養液、炭酸ガスを自動的にコントロールして、短期間で野菜を生産できる。サラダナ、リーフレタスとも種まきから収穫まで32日間である。

鹿児島のスーパーマーケット、タイヨーでは、コンピューター制御の無農薬野菜生産工場を鹿児島市近郊に建設し、店に供給する。工場は建物面積約1万平方メートルで、外気を遮断し、光、温度、湿度、二酸化炭素をコンピューター管理し、完全無農薬で栽培する。土は一切使わず、根に液体肥料を散布して育てる。生産するのは、当面グリーンリーフ、サラダ菜を日量3千株で、全量同社で販売する。

農業生産法人,新地グリーンファームではトマトの工場生産をしている。コンピューターで、気温、湿度、光を感知して、自動的にハウス内の温度とトマトに与える肥料、水分を調整する。作業が大幅に楽になり、通常300平方メートルを1人で作業するのだが,この施設では1人で1,500平方メートルをこなす。

東京の焼き肉チェーン、叙々苑では、福島県の白河フーズから工場産サマーレタスを毎日900個購入している「サンチュと同じように食べてもらうが、歯触りがよく人気がある。無農薬の安心野菜だし、一年中、同じ品が同じ値段で手に入る。土耕と違って砂やゴミもついていないのがありがたい」という叙々苑の評価である。

日本植物工場学会では、植物工場の技術研究を進めている。シンポジウムも積極的に開いており、経営できる植物工場を視野に入れて活動をしている。野菜工場の技術研究の原点になっていて、ここから発生したものが広く野菜工場の発展に貢献している。

この他多くの事例があるのだが、ユーザーのメリットは何といっても安定供給と、安全性である。野菜工場では外気と遮断するので、中での生産はどのようにもコントロールできる。農薬を使わないのはもちろん、成長レベル、収穫時期、量、均質性など、規格も含めての均質性があるということは、物流やパッケージでもメリットがあるが、ユーザーの使用段階、キッチンでも、カッティングや調理のマニュアルかが出来ることになる。マニュアル化がやりやすいということは、アルバイト、パートへの教育も楽になり、省力での均一調理がやりやすくなるのである。

価格的な安定性も魅力である。常に相場を気にしながらの仕入れ業務ではなく、年間での契約価格が可能になる。もちろん季節による佐もなくなる。野菜の場合季節性というのは「旬」という売り物にもなり、周年でいつも同じものを出せることは、安定したメニュー計画に寄与するからいいことなのか、「旬」をイベントとして販売するということが無くなるから、季節性が無くなっておもしろくなくなるのか、微妙なところだが、どうしても「旬」を売りたければ年間契約の中で調整すればいいのである。

「旬」を考えると別のやり方がある。野菜工場との契約を年間でしながら、その野菜の旬の時、市場に出ている相場が安かったら、それを別に仕入れればいい。そうすれば旬の時に拡販できるし、仕入れ全体のコストダウンにも貢献する。

野菜工場は技術的にまだ発展途中にある。電力コストを安くする方法であるとか、建設コスト、各種ハイテク技術の開発過程がまだまだ多い。進歩の途中なので、新しい工場との契約をしたら、そぐ後にもっといいものが出て来るかもしれない。現在のコンピュータ技術などは全くそうなってしまっているが、技術の進化がそれだけ激しければ、将来はますます明るくなるわけである。フードサービス業界はハイテク技術に今までうとい面があったが、これからは野菜工場を始めとして、バイオの部分まで研究をしている必要がある。


総合食品「ファームリーダー」97/3月号より
Comments