ワンフローズン

2013/05/25 16:33 に 松本リサ が投稿
最近「ワンフローズン」と言う冷凍食品が出てきている。「一回だけの冷凍」と言う意味になるが、これがデリ、惣菜にとって、品質のいい原料素材にもなっていく冷凍食品というのは、食品を凍らせるのだが、食品には水分があり、食品を凍らせることによって食品内の水分が凍る、水分が凍るということは、食品の味を傷めることにもなる。

瓶に入った飲料水をそのまま凍らせると瓶が割れてしまうのは誰でも知っている。凍らないのはアルコール分の高いスピリッツなどで、冷凍室に入れて極低温にして楽しむ酒がある。しかし、普通の清涼飲料水などでは瓶が壊れてしまう。これは水分が凍ると膨張して大きくなり、瓶を内側から膨らませてしまうからである。

これと同じことが、食品にも起こる。肉でも野菜でも、凍らせると、凍る過程で食品中の水分が膨張して大きくなり、それが細胞を壊してしまう。細胞の中には水分があるので、その水分が膨張して細胞自身を壊してしまい。細胞が壊れて中の水分が外に出てしまい、その後完全に全てが凍ることになる。これを解凍するとどうなるかというと、細胞から外に出た水が溶けてだだの水分になって、水として食品の外に出てしまう。これが「ドリップ」である。そして食品中の細胞は壊れてしまって、美味しさ、みずみずしさの元である細胞内の水分はなくなってしまっているので、味が無くなっている。これが冷凍食品の欠点である。この現象を出来るだけなくすために、冷凍食品の技術がある。急速凍結をするのはそのためで、出来るだけ早く、食品中の水分が凍らないうちに瞬間的に凍らせると、細胞があまり壊れなくてすむ。トンネルフリーザーとか、スパイラルフリーザーというのは、そのために開発されたものである。

さて、食材はこの約10年の間に海外から入ってくるのが急速に増えてきている。輸入食材は円高時代に急増した後、円安になってきているが、それでも増えている。円安になっても海外からの食材のコストはまだ安いのと、国内の生産が少なくなっているものも多い。そんな中で、海外から食品の素材を輸入して、それを国内に入れてから解凍をして、それを使って調理済み冷凍食品を生産をしている。

これを考えると、まず最初に海外の産地で凍結をする。それを国内に入ってから解凍をして、再び凍結をする、ということになる。凍結が2回で、解凍が一回だが、消費者が食べるときに解凍をするから、凍結も解凍も2回になってしまう。これでは食品素材の美味しさが、いくらいい凍結機を使っても失われてしまうのは仕方がない。

そこで、ワンフローズンになるのである。輸入食品を海外に求め始めたころは、加工技術が海外産地に無く、食品素材を入れてきていた。しかしその後海外産地での加工が次第に盛んになってきて、技術的にもよくなってきたおかげで、調理食品まで出来るようになってきた。それならば、野菜や肉など、冷凍すると味が損なわれる素材が採れる産地で、採れた素材をそのまま早く使って、生素材を加工して、調理などの加熱調理までしてから、初めて凍結をする方法が出来るようになってきた。これをそのまま輸入をして、キッチンで戻せば、凍結も解凍も一回ですむ。急速凍結機を使っていれば、かなりいい品質のものが出来ることになる。

また、ワンフローズンは海外ということではなく、国内でも同じである。生鮮素材でいい調理加工品を作ろうという方向なのであるから、調理の技術といいフローズンシステムがあればどこでも出来る。


このワンフローズン製品が昨年あたりから出てきている。日本水産はチリ近海でとれるメルルーサという白身魚フライの生産を「ワンフローズン」方式で始めた。衣付けの最終工程まで加工してから凍結する。欧米にも輸出する。日本水産では、ワンフローズン方式をニュージーランドでも導入していて、この方式を強化している。凍結する工程が一回だけなので素材の鮮度を保ちやすいため外食産業などからはワンフローズン方式で生産された水産加工品の引き合いが強くなっているという。

また、日本水産では、中国で鶏肉加工品のワンフローズンを行い始めた。中国安徽省の提携工場で生産した業務用の冷凍鶏からあげを、日本に入れる。農場で放し飼いにしている地鶏を、隣接する工場でそのまま加工するのである。

北海道漁業協同組合連合会はオホーツク海産のホタテやホッケなどのフライ製品で、ワンフローズン方式を始めた。鮮度を維持するため製品化はパン粉付けまで産地で製品化する。道内の全農ルートを通じて試験販売していたが、今秋から首都圏の量販店、外食産業などに販路を広げていく方針。

ニチロも家庭用冷食からワンフローズンの手法を積極的に導入し始めた。電子レンジ食品の「新中華街 麻婆茄子」は、インドネシアで採れた新鮮なナスを現地の協力工場で裁断し、油で揚げてから凍結して日本に輸入する。久里浜工場でタレをかけてパッケージをして、そのまま量販店などに出荷する。

ニチレイ、マルハなどの大手もワンフローズン製品の拡充を進めている。

デリ、惣菜の今後は、高品質、ナチュラル、安全性といったキーワードが必要である。これを満たすためには、2つの方向がある。一つは生鮮素材のいいものを店に入れて、店内調理をするという方向。もう一つは、このワンフローズンのような高品質の調理済み、あるいは半調理済みの原料を使うことになる。チェーンでは、この2つの方向をいかに自社のシステム、製品の品質に活かせるかがポイントになる。

ワンフローズンにはもう一つ有利な点がある、それはHACCPチェーンに対応しやすいということである。HACCPについてはこれからの方向であることは間違いが無く、あらゆる食品に関係する企業がHACCPにどう対応していくか、現在試行錯誤中である。まだ気が付いていないところ、方向がつかめていないところもあるが、それも時間の問題である。HACCPチェーンというのは、生産、加工、流通、販売あるいは調理、という一連の食品、食材の流れの中で、それぞれの中での独立したHACCPが確立され、それが全ての流れのそれぞれのHACCPが出来上がっていなければならないということである。生産、農場段階でのHACCPがあり、それが完結した後、加工工場に運ばれる物流段階でのHACCPがあり、加工工場でのHACCPがあり、それがユーザーに行くまでのHACCPがあり、小売りならば店舗内のHACCP、フードサービスならばキッチン、ホール、デリ惣菜の場合にはそれの売り場でのHACCPがある。このそれぞれの段階でのHACCPが完成されていれば、製品の出所が全て明らかになるし、安全性もより確かなものになる。加工品の場合何かトラブルがあっても、原料素材まで遡って調べるのは難しい、多くの農場から集まる野菜類などは全くお手上げのことが多い。しかし、この生産段階から全ての段階でのHACCPチェーンが確立されていれば、履歴まですぐに分かって、調べやすくなる。ワンフローズンではこれが出来るのである。


総合食品「フードライフ」97/4月号より
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