豚肉生産者の、スーパーマーケットへの営業方法

2013/05/25 7:05 に 松本リサ が投稿
豚肉をスーパーマーケットに売り込みためには、窓口のバイヤーが何を求めているかを知らなければならない。スーパーマーケットのバイヤーが言う「最近どうです?」というものの中身だが、バイヤーというのはじつに色々な仕事があり、忙しい。

産地も行かなければならないし、商品のチェックもしなければならないし、店への指示、伝達、店巡回、会議、とにかく色々な仕事があり、一つ一つの仕事をていねいにやっていられない状態にある。

そういった中で、何が知りたいかだが、

1)他社、他店、競合店の情報。どんなイベントをやっているのか。その状況はどうなのか。成功なのか、失敗なのか。

2)時代の流れ。トレンド(流行)。何が流行ってきているのか。最近は特にトレンドがめまぐるしく変わるので、今売れているものは何なのか。

3)オーガニックとか、こだわり原料肉など、新しいコンセプトの豚肉や加工製品が出て来ているが、売れているのか、どうなのか。

4)食品衛生対策を各社がやっているが、その状況はどうなのか。

その他、数え上げれば切りがないが、要するに時間を取って、色々なもの、状況を見ることが出来ないまま仕事を進めているので、あらゆることを知りたいのである。

そういった状況のところに、ただ「今作っている豚肉はいいものです、是非買って下さい」とか「今度私どもの産地にきて下さい」と、売り込み側の勝手な言い分を言いに言っても、バイヤーとしては面白くはない。そんなところに、バイヤーの知りたい情報をもっていけばいい。

自分の売り込みたい商品に関する情報ではなくても、仕事に関連するあらゆるものでいい。そんな情報を持っていって、それこそ仕事に関する雑談を散々したあと、帰り際に「そうそう、この製品を検討してください」となれば、話は全く違ってくる。「

あれだけ情報をもっているのだから、その人が売り込む商品ならいいのではないか」という印象を持つはずである。そして、次にどんな情報をもってきてくれるのかが楽しみになれば、その営業の第1ステップ成功したようなものである。

ここまで行くにはかなりの時間がかかるが、それだけ信用を持たれれば、太いパイプができたことになる。また、そうなってくれば、反対に「ここら片はどうなっているのか?」「こういったことは出来ないか?」「こういった商品は出来ないか?」と要望にもなってくる。こう来たら、たとえ不可能そうであっても「任しておいてください」と言って帰ってきて、それから開発に走り回る。ということになっていく。

決してそこで「無理です」と言ってはいけない。「絶対無理だ」と思っても、そんなことは言ってはいけない。そして、次のときには、わずかに進んだだけでも、その報告をしておくことで、「やってくれている」となる。悩みながら進めていても、何も言わなければ、やっていないと思って、他社に同じ依頼をしてしまうだろう。こういう進め方を「営業からスタートした商品開発」という。

バイヤーはまた、これから売り初める商品が決まったあとが大変なのである。

決まったものを各店に「新商品」として、あるいは今まで販売していたものをさらに売り込むために、店の担当者に指示、教育をしなければならない。店の担当者は、バイヤー以上に外に出れないから、どのように売り込んだらいいのか、どういうように陳列をしたらいいのかが分からない。これが出来るかどうかで、その商品が売れるかどうかが決まってしまう。商品の善し悪しではなくなってしまうのである。この仕事が大変なものだから、新商品をためらう面もあるかも知れない。

そこで、売り込む側としては、売り込む商品そのものだけではなく、それを店にスムーズに販売してもらうものを一緒に持っていくことが重要になってくる。

それは単なるPOPやポスターといった販促物だけではない。商品のマニュアルや使い方、食べ方、お客様への説明の仕方、カッティングやパッケージングの方法、そういった一連のものを、店側が分かりやすいようにして、それこそ漫画にでもして持って行く。それをバイヤーはそのままコピーして使えるようにまでしておけば、大変に助かる。

そして、さらに重要なことは、店の担当者に、実体験をしてもらうことである。


2.バイヤー、店の担当者を集めた試食会


売り込む商品のサンプルをバイヤーに持って行っても、忙しさで食べないままになってしまうことが多い。冷蔵庫に入ったままということである。そのようにしてしまわないで、サンプルを持って行ったら、その場で食べられる仕掛けもしていくのがいい。

ハムの様にその場で食べられるものはいいが、焼いたりしなければならないものならば、商談の時にホットプレートまで持って行ったらいい。どこにでも100Vの電源はあるから、それを借りて、ソースやタレも持って行って、一番いい状態で食べられるようにするのである。これをさらに進めると、試食会になる。

各店の担当者に伝えるために、書類は必要になるが、それだけでは全く力不足である。聞いたこと、読んだことは、その場では感心するが、すぐに忘れてしまう。しかも、読めばいいが、忙しい中で、読む時間もない。そんな状態では、正確に商品が店に出ない。しかし、実際に体験するしてもらえば、印象に残るし、その商品に愛着も出る。そのためには試食会を行なうのが一番である。

試食会は、ローカルスーパーマーケットの場合などは昼頃にやるといい。各店の担当者は、午前中の作業が終わり、誰でも昼食をとるから、その時間をうまく利用する。

試食会の内容は、一般的な世間の情報。商品に関する説明。試食件昼食。ということになる。

これをやることによって、商品の味だけではなく、意図、性格、売り込みの方法までしっかりと伝わる。そして、もっといいことは、バイヤーのやる仕事をある程度行なえることである。ここまでやらせてくれとバイヤーに言うことは、バイヤーも乗り気になることにもなる。


3.カッティングセミナー


食肉の素材の場合などは、やはり店の担当者に集まってもらって、原料から、カッティングをして、トレーにパッケージングをするところまでのセミナーを、バックルームやセンターなどでやるといい。

ここのところだが、どうも売り込む側は、原料をどのようにカッティングして、パッケージングしたらいいのかが、良く分かっていないことが多い。商品を作って、あとは分からない。スーパーマーケットがやってくれるだろう。といった所がある。

それは、自分の作った商品が、どのようなものなのかを認識していないことになる。

昔は大体物がなかった、食べ物が不足していた。したがって、肉があったら「おーい、肉が入ったぞ!!」と叫べばお客様は来てくれた。これが昔の商売だった。

したがってメーカーとしては、商品、製品を作ればそれで良かった面がある。しかし、約30年ほど前から大きくそれは変わってきた。豊かになってきて、食べものも多くなってきた。それにつれて、商品のデザインをしないと売れなくなってきた。

商品のデザインということは、消費者に受け入れやすい、消費者が求める、使いやすい、食べやすい形にすることである。

味は基本的なものだが、売るためのデザインの要素は、大きさ、厚さ、量、使いやすく、保管しやすく、印象深いパッケージング、センス、親しみのある名前、といったあらゆるものである。同じ性格の製品でも、売れるものと売れないものが出てくるのはそのためである。

これは有名な話だが、米国のある洗剤メーカーが、洗剤を入れる箱、パッケージのデザインをしていて、3つの箱のサンプルが出来上がった。そこで、この3つのデザインの箱に、同じ洗剤を入れて、数百のモニターに送って、「3つのうち、どの箱の洗剤が汚れが一番落ちますか?」という質問をした。そうしたら、その中の一つの箱が「これが一番汚れが落ちる」ということになった。中身が同じでも、パッケージデザインで全く違ってきてしまうのである。

食品では、牡蛎の例もある。中身も、量も、価格も同じ2つのパッケージングに、片方は黄色のイメージマークを入れて、陳列ケースに隣合わせに、同じ量ずつ置いて販売したら、黄色のイメージマークを入れたほうが、圧倒的に売れた。

トンカツをパッケージするのに、ただトレーにいれるのではなくて、トレーの下にキャベツの千切りを敷いたところ、大ヒット商品になった。こういったことはいくらでもある。カッティングや、消費者に使いやすい、訴える商品作りをすることは、良いデザインをすることになる。こういったことを理解したうえで製品を作らなければいけない。

よく「セミナーとか、試食会をやったらどうですか」と提案をすると、尻込みするメーカーが多い。しかし、自分の売り込みたい商品のことがよく分かっていたら、こんなことはないのではないだろうか。

自信のある製品を作っているならば、販売してくれるところに言いたいことはたくさんあるだろう。どのように食べてもらったらおいしいのか、どの部位を、どうやって食べたらいいのか。商品化についても、こうカッティングして欲しい、温度管理はどうして欲しい、といったスーパーマーケット側に伝えたいことはたくさんあるはずである。スーパーマーケットは、販売のプロであるが、生産者、メーカーの作っている側からの情報を、もっと商品づくり、販売戦術に取り込むことによって、さらに売れるようになるはずである。

生産者からの提案、要望が何も無いということは、商品を知らないことになる。生産者と小売り側のコミュニケーションをもっと良くしなければならない。たとえ組織が大きくても、コミュニケーション手段はあるものである。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」98/4号より
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