豚肉生産者の、メーカー、パッカーへの営業方法

2013/05/25 7:08 に 松本リサ が投稿
先月号に引き続き、これから何回かにわたって、メーカー、パッカー、あるいは卸売り業者が、スーパーマーケット、レストランに、どのような営業を行なっているのか、ただ配送しているだけではなく、どのようなアイデアと工夫をした営業を行なっているのかを、事例の中から紹介していく。


バイヤーセミナー、パーティー


東北に工場と本社を持つあるブロイラーメーカーだが、このメーカーは、首都圏と、東北、北海道のスーパーマーケットに販売している。この営業の特長は、ひとつの地域に1社しか卸さないという主義である。

ローカルにおいては、いくつものスーパーマーケットマーケット企業がある場合、どうしても競合の問題になってきてしまう。それを販売するほうから調整していることになる。

ここでは、年に1回程度のバイヤー向けのセミナーを開催する。

場所としては、販売している企業のあるところを毎回変える。つまり、毎回違うところにいけるのである。

セミナーの内容としては、講師を招いての講演会や、市況動向、それにメーカーからのお礼、ということになるのだが、セミナーそのものの内容もさることながら、終了後のパーティー件情報交換会がバイヤーとしては楽しみである。

普通のパーティー形式であっても、集まるバイヤーがいろいろな地域から来るし、しかも、同じところからは1社しか来ない。つまり、競合するところは来ないので、お互いに、何が売れているのか、どういった販売促進をしているのか、といった情報交換の場にもなる。競合店に卸していないということは、こういったところにもよい状況が出来るのである。


チーフの為の料理教室


やはりスーパーマーケットだが、食肉を販売するためには、肉の料理を良く知らなければならない。しかしながら、独身で、学校を卒業してすぐに食肉の仕事を始めている場合、食肉をカッティングしたり、商品作り、陳列、といったことは覚えても、肉料理を覚えることは余りしない。

そういった教育がある食肉の職場がまだ少ないし、レストランに行ったり、惣材のことを研究することも余りしないし、出来ない。

そうすると、食肉を販売していても、お客様から「この肉おいしい?やわらいかい?」ということを聞かれても、おうむ返しに「ハイ、おいしいです、やわらかいです」といった言葉しか出てこない。

特に最近のお客様は、肉料理をますます知らない傾向にある。肉料理ばかりではなく、料理そのものを余りしなくなり、外食や総菜を買って食べるようになってきている。

という背景になると、食肉を売るためには、2つのことをやらなければならなくなる。

ひとつは半加工品やミートデリを充実すること、これについては、この連載の中で、いろいろな形で述べているとおりである。

そしてもうひとつは、肉料理をお客様に教えることになる。それもややこしいものではやってくれないから、ステーキとか、ソテーとか、煮込みにしても余り時間のかからないもの、しゃぶしゃぶとか、ボイルドビーフといったようなものになる。

こういった肉料理をお客様に教えて行かなければならないのだが、実際の販売現場にいる「チーフ」「主任」といった店の販売責任者は、肉料理を知らない。これでは精肉素材の販売は減る一方になる。

そこで「チーフのための料理教室」である。

例えば「ステーキの焼き方」である。

前にも紹介したかもしれないが、ステーキをうまく焼くというのは、今まで一度もやったことのない人にとっては、実は恐ろしいものなのである。

ステーキというのは、少なくとも燒肉用の肉よりも高いものだし。メニューのグレードとしても上である。そのステーキを買ってきて、「もし失敗したらどうしようか」という恐怖感はあるもので、それを取り除いてあげれば、そのお客様はステーキメニューのファンになってくれる。

そのために、チーフがステーキの焼き方を、親切に、優しく教えてあげられなければならない。それが出来るようにしてあげるのがこの料理教室の最大の目的である。

ステーキの焼き方をお客様に教えられれば、売り場にいるのが楽しくなる。

そういうことを知らないで、売り場で仕事をしていると、例えばセルフサービスのオープンケースに、パックした肉を置いた後、すぐにバックルームに逃げ変える、ということになってしまう。

こういう状況はじつに多いもので、「お客様からなにか聞かれたら、どうしよう、何も答えられない」ことになってしまう。

お客様と話すことが出来たら、お客様の要望をよく聞くことが出来る。要望がわかれば、その背景に潜在する欲求(これをニーズという)がわかり、それに応じた商品作り、売り場作りが出来る。

商品作りにしろ、肉の厚さ、量、名前、商品に付けるコメント、そういったもののお客様のニースがわかる、あるいは買いたいものにかなり近づいた物になっていく。

ところがこれと反対のことになってしまうと。お客様の声を聞くどころか、売り場に出るのがいいやだから、いつもバックルームで肉を切っている、ことになってしまう。この境になるのが、「肉料理を知っているかどうか」になる。

肉料理を知っていることは、売れる売り場になるかどうかを決めてしまうのである。

このチーフ向けの料理教室をやっているメーカーはいくつか知っているが、大体は、料理教室を借りて、そこの先生か、メーカーからの講師によって、毎月とか、年に何回といった形で行なっている。

ローカルスーパーマーケットにしても、いくつもの店にそれぞれ配属されているのだから、たとえ同僚でも、いつも会うわけではない。店での作業が終わったら、家に直接帰るのであるから、会うのは時々しかない。月に1回の精肉部門の会議とかいうときぐらいしか会わない。

そうすると、お互いの店がどうなっているのか、売れているのか、どうなのか。今月自分の店の売上は余り良くないのだが、他の店はどうなんだろうか。といった不安材料も出てくる。この料理教室は、こういった不安も解消してくれる。

会社の会議だったら、「お前の店は売上が悪いじゃないか」と言われそうにかも知れないが、料理教室はそうではない。試食もある。

こういったことは、スーパーマーケットが独自に企画するのがいいのかも知れないが、店という現場にいると、いつも忙しいし、また、こういったことを企画するのは本部のバイヤーなどになるので、そうなると、先月書いたように、じつに忙しいので、なかなか出来ない。

そこでこういったことをメーカーやパッカーがやってもらうと、助かるのである。

こういった機会を、メーカー、パッカー側が提案することによって、店との連帯感も出来、最終的には食肉原料がさらに売れるようになるのである。


消費者向け料理教室


同じ料理教室だが、対象が消費者、スーパーマーケットの店へのお客様である。

これは、チーフに体する料理教室を行なっているところ、あるいはチーフなど、社内の教育体制が充実している企業に体して、次のステップとして行なうといい。

集めるお客様は、ローカルスーパーマーケットならば、全店のお客様を対象にしてもいいし、店が大きなものになるのならば、ある特定の店のお客様のみを対象にしてもいい。1回に呼ぶ人数は精々50人程度。

どういったお客様がいいかというと、口コミの中心的な人が一番いい。

例えば、前の例と同じ「ステーキの焼き方」になれば、その料理教室に来てくれた人が、家に帰って、周りの人にステーキの宣伝をしてくれるような人、となる。

そんなお客様ばかり集めることが出来るかな?と思うかも知れないが、逆に、そういった人が来てくれるものである。

私がやったことのある料理教室の例だが、大阪の南にある、あるスーパーマーケットのお客様が対象だったが、そこでは「牛肉料理を楽しむ会」(確かこういったような名前だった)を組織していて、その会員は約300人ばかりいる。ただ、いつも料理教室に集まるのは大体50人程度であるが。

そこで行なった時は、売り場からステーキを持ってきて、そのステーキを使って焼き方を楽しく教え、次に6班に別れて、3人に2枚程度の大型のステーキを自分達で焼くのである。

普段その店ではステーキは結構売れているのだが、実際にステーキの焼き方を説明すると、間違ったやり方をやっている人がほとんどだった。

そこで実習になったのだが、ステーキの焼き方というのは、別にたいして難しいものではなく、却って今までやっていた間違えたやり方の方が難しかったりしたので、混乱もなく、たっぷりの量のステーキを試食した。これに、牛肉を納入するパッカーが協力したのである。

そして、この後、ステーキの売上が増えたのはいうまでもない。

個打った料理教室の時には、スパイスとか、野菜とか、他の部門、メーカーにも協力してもらうこと目で切る。例えばスパイスメーカーに協力してもらって、ブラックペパーの小ビンをおみやげに持って帰ってもらうことなど、じつに喜ばれる。

この場合には、スーパーマーケット側から話が行ったのだが、そうばかりではなく、メーカー、パッカー側からこういった話を持っていけばもっといい。

「そんなことをやると、試食用の原料のコストがかかってしょうがない」というかも知れないが、これを行なうことによって、牛肉の売上がそれからさらに増えていくのである。

お客様を集める方法は、上記のように組織してあれば一番いいが、そうでない場合は、店内のチラシ、ポスターなどでもいい。

場所としては、今では大体のところには「市民会館」「町民会館」などがあり、そういったところに借りれる料理教室がある。あるいは民間の料理教室に依頼するというのも出だろう。この場合には、講師もいっしょに依頼できる。

ただ、気を付けたいのは、この料理教室の目的というのは、肉の販売量を増やすためであるから、付け合わせだの、下準備だの、余り面倒臭い部分に時間をかけないでやりたい。

そこら片は、付け合わせなどは「冷蔵庫に入っている残り物の野菜を、ステーキを焼いた残りの脂で焼けばいい」といったように、簡単にしてもらい、肉料理の楽しさ、簡単さ、といった所を主にしてもらったほうがいい。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」98/3月号より
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