豚の脂肪が高級調味料.ラルド

2013/05/23 18:24 に 松本リサ が投稿
以前、米国の豚の背脂肪が、何らかのルートを通じてロシアに流れていっているという話を聞いた。何に使うのか、加工品にでも使うのかと聞いたら、そうではなく、魚を焼くための調味料にするという。

背脂肪を短冊状切り、塩をまぶす。これを鼈に浸け込み、温度の低い所、但し凍らない程度の温度のところに置いておく。魚を焼くとき、フライパンにこの塩漬けの背脂肪を一本取り出して敷き、その脂で焼く。こうするとおいしい魚料理になる。

試しにやってみたところ、脂の乗っていない安物の魚を焼くときにこれを使うと、パサパサのクズ魚が、脂肪と塩で適度に味がついたうえ、脂肪でジューシーに焼き上がるのだ。

 

東京、新宿の伊勢丹本店では、多分毎年ではないかと思うが「イタリア展」をやる。イタリアの食品を中心に大規模なイベントだ。聞いたところ、伊勢丹ではイタリアに事務所を置き、食材を開発しているという。これに行っていつも必ず買ってくるのは皮付きハムだ。

ヨーロッパで豚の屠畜は湯剥ぎが中心だ。毛だけを剥がして、その下の皮は残る。そしてハム部分をハムにする。変な言い方だが、腿全体を部位の名前でハムと呼ぶ。これを加工したのも同じようにハムという。

特に日本では骨付きハムと言っている大型のハムだ。日本のハムとの違いは、皮がついているところだ。この皮がおいしい。

最初の日に行ったらなかったので聞いたらその日の分は売り切れてしまったという。やっぱり人気の商品なのだ。翌日またしつこく行ったらあったので、吃りながら「そ、そ、それをたっぷり」といったら、肝心の皮と脂肪の部分を出来るだけ少なくしてカットしようとする。

普通知らなかったらそうかもしれない。脂肪や皮がたくさん着いていたら文句を言う人が多いのだろう。しかし我が家は逆で、この皮と脂肪の魅力で買うのだ。「皮のところを出来るだけ多く」と特注した。「本当にいいの?」なんて言う顔をしてスライス始めたが、まあ、このおいしさを知らない人が多いほうが我が家は助かる。そうっとしておけばいい。

 

さらにウロウロ何かおもしろいのないかと探していたら、皮付きバラの脂肪部分だけを、香辛料と塩で半年漬け込んだという「ラルド・ディ・コロンナータ」というのを見つけた。

ラルドは、白大理石の桶に寝かされるとパッケージに書いてあったので、思い出した。これはイタリア最高の豚肉製品で、テレビのイタリア紀行番組を見ていてよだれを垂らしていたことがある。「豚の背脂の塩漬け塾製品」となる。

塩、黒胡椒、ニンニク、ローズマリーで漬け込んである。トスカーナ産だ。

 

家に帰り、早速ハムからつまみ出す。

厚く切ったハムの断面は、琥珀色に見事に色づいた皮が魅力的に輝き、その下にしっかり頑固そうな脂肪がつづき、そして赤身の本体につながっている。

公平になるように脂肪と皮に直角に扇状にカットして、一割皮、二割脂肪、残り赤身のスティックカットを口に入れ、三つの美味しさまとめたゴージャスなハムを楽しむ。ああ、幸せ。

こういうハム、日本で作れないものかとブツブツいいながら、ワインをトロリと飲み、また次の一切れに行く。

 

ラルドはいったいどうなんだろうと、とりあえず薄くスライスして食べてみる。

真っ白い脂肪に、香辛料の香りたっぷりの皮が着いている。脂肪部分はハラリと舌の上で溶ける。高級な脂肪だ。皮部分は熟成した筋のような食感で、コリコリと細かく齧っていくと、トスカーナの風味が口に広がるようだ。

一齧りした後、北海道から着いたじゃがいも「キタアカリ」が蒸されてきたので、この一切れにラルドのスライスをちょっと乗せてみた。熱いので、真っ白な脂肪がすぐ透明に溶けた。皮しっかり、脂肪トロッとかかり、口の中に入れたら、実にあう。

ラルドを使ってスープも作ってみた。

今度は三ミリぐらいの厚めにスライスし、玉葱やニンジンなどと煮込んだら、何も他に手を付けないのに、素晴らしい具たくさんのスープになった。この脂肪は、スープになってもヌルではなくホロリという上品な食感だ。

次は野菜を炒めてみる。

ラルドを大きめに刻んで、フライパンでパリッと炒め、脂肪がさっと出たところで野菜をバサッと入れ、ジャジャンと回し飛ばし炒める。

野菜の水分がまだ中に残っているところでドサッと皿に盛り入れたら、しゃっきりラルド炒めが出来た。

野菜を食べながら、しっかり形の残っているラルドをナイフでさらに小さくカットして齧る。ほんの小さな皮部分もたっぷり風味が残っている。野菜炒めのラルドと皮の組み合わせは、どんどんワインを要求する。

良い豚の背脂肪、バラ脂肪は、高品質の調味料、高級製品に変貌するのだ。
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