スペアリブの製品化

2013/05/25 16:14 に 松本リサ が投稿
動物の肉でいちばん美味しいのはどこか?と、欧米の食肉の専門家に質問をすると、たいていは「肋骨と肋骨の間の肉」という。牛肉ならばショートリブ、豚肉ならばスペアリブである。米国でスペアリブは最も親しまれているバーべキューアイテムである。スペアリブを外すときには、ナイフを使わないで、ピアノ線を使った道具で、糸で筋の間をはがすように、スペアリブを一気に外してしまう、一枚のスペアリブが5秒ほどできれいに外れる。

バーベキューにする際には、肋骨の4番目と5番目、あるいは5番目と6番目の間から後ろを一枚の板のまま焼く。骨の間は薄い肉でつながっているので、ちょうど楽器の木琴を外して焼くようになる。もちろん前の部分のスペアリブもそのまま販売されている。味付けはケチャップとパイナップルの絞り汁に、塩、胡椒、クズ野菜などをいれたソースを刷毛で何度も塗りながら焼く。

パイナップルの絞り汁は、肉を軟らかくするのに使う。肉を軟らかくするには、パイナップルや、パパイヤをよく使う。パイナップルにはブロメライン、パパイヤにはパパインという酵素が入っていて、これが肉を軟化させる。キウイにも肉の軟化酵素が入っている。スペアリブを焼くには、肉を軟化させながら、味も一緒に付けながら焼くことになる。ハワイでは豚肉料理にはよくパイナップルを使うが、あれはパイナップルの産地で、米国人は甘いソースが好きだから、という事情だけではないのである。

パイナップルの汁を使ったバーベキューソースは、家庭での調理だけに限ったほうがいい。パイナップルの生の酵素は、肉を軟化させるのだが、軟化の効果が止まらない。肉を浸したままずっと置いておくと、最後には肉が溶けてどろどろになってしまう。かなり強力な効果がある。これを止めるには加熱して酵素を失活させなければならないが、そうすると業務用に製品にはならなくなってしまう。もちろん決められた良く話がわかっているレストラン向けに、決められた期間、例えばその日中に調理すること、として販売することも出きるが、保管温度によって軟化の進行が違うなど、難しい面がある。製品として販売するには、最近は、ある程度軟化したら、自分で勝手に活性がストップする酵素が出て来ているので、これを使ったらいい。

スペアリブは日本でも定着をしてきている。15年ぐらい前に「これからスペアリブが日本でも売れるようになる」と言ったら、多くの人が悲観的だった。中には「そんな骨ばかりのものを売ったら、顧客からクレームが来る」などと言う人までいた。しかし今では売れ筋になっている。日本でスペアリブを取る際には、ベーコンが3枚肉ではなく、2枚肉になってしまって困る、という事情があるが、スペアリブが売れるようになったらそちらの方が高く売れるようにもなってきた。特に高品質の豚肉ならば、骨付きのまま料理したほうが美味しい。

スペアリブはバーベキューばかりではない、加工肉も多く作ることが出来る。塩漬をして、加熱、スモークをする。ハムのスペアリブ版である。スモークスペアリブとしてかなり日本でも定着をしてきた。デパートなどの高級な豚肉製品売場では売れ筋になってきている。シーズニングに漬け込んでバーベキュー用として販売するのもいい、真空パックにしておき、そのままバーベキューに出来る。家庭用として販売も出来るが、レストラン向けの業務用としても魅力的な製品になる。

レストラン向けについては、米国式の提供の仕方をもっと進めたらいい。日本のレストランでは数本をていねいに調理して出すのが普通だが、米国では一枚を家庭のバーベキューのように丸ごと焼き、そのままプレートに盛り付けて提供する。ということは、かなり大きな皿でないと乗らないことになる。このような提供方法を中堅加工肉メーカーの米久が御殿場でやっている地ビールレストランで流行っており、人気のようだ。皿からスペアリブがはみだして、すごいボリュームである。

スペアリブをフードサービスで使うには、長さがそろっていないので、使いにくいという。たしかに数本を出すには、長いのと短いのをうまく組み合わせて使わなければならない。しかし、一枚丸ごと出せば、そんな心配はいらない。数人で一枚のスペアリブを、ビールのおつまみにどうぞ、とやれば受ける。

スペアリブで人気のあるところは、歯のいい人向けだが、肋骨の先端の軟骨である。これを歯でガリガリ齧っていると、実に味が出て来る。沖縄では「ソーキ」といって、この軟骨のついたスペアリブが珍重されている。そばに乗せた「ソーキ蕎麦」は有名である。

本来のスペアリブは、骨の並びに沿って一気に外したものだが、外さないで、そのまま一本ずつ骨を外す場合もある。要するに骨付きのバラ肉で、骨にはたっぷりと3枚肉が付いていることになる。これは最初スペアリブのカッティングを間違えて、あるいは理解しないで、骨付きバラにしてしまったようなのだが、知らないでそのまま顧客に出していたある東北のスーパーマーケットでは、このまま煮込みに使うと、骨から出汁が出て美味しい、というのでよく売れるようになった。一本の長いままではなく、2〜3センチぐらいにカットをしてあるので、調理しやすい。米国人からすればとんでもない間違いになるかもしれないが、これはこれで売れるのだから、正しいことになる。売れるのだから、きちんとした商品である。これならば2枚肉が出て困るということはない。

この骨付き3枚肉は、カレーやポークシチュー、中華のトンポーローなどの煮込みに使えば美味しい。そこで、カレー、煮込み用で売らないで、骨付きカレー、骨付きポークシチューに調理したものを、製品として販売したらいい。真空パックを使った製品にする場合には、骨の角がフィルムを破ってピンホールになりやすいので注意をしなければならない。これならばフードサービスに販売すれば、そのままメニューとして出せる。

この場合のカットしては、やはり2〜3センチにバンドソーなどでカットをすると、骨の長さの長短関係なく、ロスが無い。しかし、長いまま数本をそのまま調理したら、これは見事なメニューになる。肉がたっぷりと付いたバラ肉が、ブロックのままシチューになっていたら、ボリュームがある。

スペアリブではないが、ちょっと変わったヒット商品は、骨付きのソーセージだろう。見た目はスペアリブのようだが、肋骨を入れたソーセージである。最初見たときにはこんなものが売れるのかなと思ったのだが、面白さからか、良く売れているようだ。製品になったものを食べてみると、いい味で作っているものが多い。これならば、3枚肉も取れるし、骨も製品として販売できる。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」97/9月号より
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