スモーク

2013/05/23 23:10 に 松本リサ が投稿
著者の家にはバーベキュー用のかまどがあり、金のあるときには牛肉、無いときにはじゃがいもやコーンを焼いて楽しめる。このかまどには煙り抜き用の小さな蓋があり、下の空気穴とこの蓋で火力を微調整する。だいぶ以前、この釜を買ったころ、スモークをしてみようと考えた。

スモークにはチップがいる。最近はスモーク流行りなので、アウトドアショップなどに行けばいくらでも売っているのだが、昔はそうは行かなかった。そこで材木屋に行き、ガーガーと電動のこぎりがうなっている横でオヤジに話しておがくずを譲ってもらう。

おがくずはのこぎりのクズの場合と、かんなくずがある。形が違うので、燻し方も違ってくる。水分が違うのだ。のこぎりくずもかんなくずもある程度水分を加えないとかまどの場合には煙が出なくてすぐに燃えてしまうのだ。かんなくずの方が水を多く加えなければならない。

適切に水を加えて湿らせたおがくずを、既に熾してある程度時間がたって落ち着いた炭火の上に適量を乗せると、スモークの燻し煙が出てくる。そこでかまどの上の煙り抜き用の蓋を取って、そこに台所用品売り場で買ってきたアルミのグリルカバーを丸くして煙突にする。

雨樋屋根の釘から塩シャケ一本を太いタコ糸でぶら下げてその煙突の中に入れる。あまりかまどに近いと焼けて落っこちてしまうので、高目の位置にぶら下げ、煙の調整をおがくずの量とかまど下の空気穴で調整をしながらスモークサーモンが出来るのを待つことになる。同じ方法で豚のバラ肉を漬け込んでからスモークすれば香り高いベーコンが出来る。

この方法でいろいろスモークを楽しむことが出来るが、問題はワインが約二本必要になることだ。スモーク時間が結構かかるので、待つ間に飲んでしまう。

 

スモーク調理というのは、もともと保存のための知恵で、魚や肉を燻すと、調理が出来ると同時に保存が効くようになるので、古代からされていた。しかし保存技術が出来てきた時代になってからもスモーク調理がすたれないのは、その食欲をそそる風味がかもし出すおいしさのためだ。食材のおいしさを出し、スモークの香りも一緒に楽しむためには、ヘビーなスモークではなく、ちょっと香り付け程度の「ライト・スモーク」が良く、これが最近の静かなブームになってきているのだ。

 

仙台で小じゃれたレストラン「shinpei」を見つけた。「牡蠣のちょっと蒸し」は、出始めの牡蠣をほんの少しスチームしてあり、身が風船のようにパンと張っていて、齧るとプリっとはじけて中のミルクが飛び出す。牡蠣の風味をたっぷり残すための微妙な短時間調理が微妙にうまくいっている。

「新サンマの一夜干し・肝ソース付き」は、一夜干ししたら、どうして頭も骨もあれほどやわらかくなるのだろうか? 骨付きのまま一口大を契って、横に添えてある小皿の「肝ソース」を付けて食べると、サンマもこうなってしまったら、世界に誇れる味となってしまう。サンマの肝は、相当鮮度が良いもので時々食べられる程度で、普通は肝合えと言って、身の切り身、つまり刺し身にこの肝を和えたものになるのだが、それをソースにして、ワインにも合うようになってしまっているのだ。

ここで出て来た一品に「鮭のハラス」があった、スモークサーモンではない。ハラスはマグロで言えば大トロの部分で、脂がたっぷりと付いている。大型の鮭の切り身が来たらこの部分を食べて、あとは他にあげてしまえばよい、ぐらいのおいしさだ。ハラスだけ食べられるのならこの上ない幸せだ。北海道の居酒屋やお土産屋でよく売っているハラスの干物は、多くはノルウエーから来ているようだ。

ノルウエーには多くのサーモン加工工場があり、ここから養殖のサーモンが全世界に輸出されている。この加工工場の中で、フィレ〔切り身〕を切り出すときにこのハラスがトリミングされる。ハラス部分は欧米のサーモンステーキには要らないからだ。そこでこのハラスがまとめて凍結されて「HARASU」という加工原材料になって北海道に来、加工されることになる。ハラスだけたっぷりと集まるのだからうれしいことである。

さて、来た料理は、ハラスを「ホットスモーク」したものだ。スモークにはコールドとホットの二つあり、コールドスモークは低温で、ホットは高温で燻る。コールドは時間がかかるが、保存は長期間出来る。ホットはどちらかというと保存向きではなく、スモークの香りを付けながら同時に加熱調理するもので、簡単にやるにはフライパンを利用しても出来る。

ホットスモークされたハラスは、ほんわりとスモークの香りが漂い、食べると中は脂肪とジュースたっぷりのジュクジュク状態。これと一緒にオーストラリアのキリッとしたシャルドネ〔白ワイン〕がお供にあるのだ。ああ、仙台の天国は国分町にあった。

 

上田と松本の間の山中に知人がロッジを造り、仕事を退職して横浜から移住した。友人に時々遊びに来てもらいたいが、タダ遊びに来いというと遠慮するから、3室を民宿として貸し出すことにした。民宿と言っても、友人知人以外には教えないから、変な客が飛び込んでくることはない、少しのお金ならすぐに出す素敵な友人達が集まり、ケチなやつは来ない、という手だ、素晴らしい。この人はレストランのプランナーをやっていたので、おいしいもの、調理システムはプロで、その設備も小型のをロッジに入れている。

そこでもちろん遊びに行った、二泊三日、のんびりと。最初の夕食に出て来たのが「岩魚のライトスモーク」だった。これはそれほど高温ではないオーブンでスモーク調理するものだ。

普通オーブンで肉などをローストするには180℃前後でやる。しかしこれを120℃程度の低温で調理すると、肉のジューシーさが失われず、やわらかく焼ける。時間はそれだけかかる。

ここで使われているオーブンは「ハローヒートオーブン」という低温調理専門のオーブンで、焼くだけでなく、鍋ごと入れて煮物も出来るものだ。これにスモークする機能が付いたタイプがあって、これを使っている。

オーブンは単なる箱といったもので、熱を出すケーブルが巻いてあり、その輻射熱を使って加熱をする。スモーク機能はオーブンの中に小さな皿が設置されていて、その上にスモークチップを乗せて加熱することで燻し煙を出すことが出来る。保存が目的ではなくてスモークフレーバーを付けるのが目的の調理機械なのだ。

ロッジの近くの岩魚やヤマメを譲ってくれるところから持って来た鮮度最高の岩魚を「ちょっと」ライトスモーク。

オーブンを加熱し、少しのチップを短時間使って調理した岩魚は、半生に近く、皮に少しだけスモークフレーバーが付いて、まるで山のたき木でちょっと焼いたようだ。身は半透明で刺し身のようだが、齧るとトロトロ!

スモークを考えてみませんか?


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