S=スティック・焼き鳥

2013/05/24 2:03 に 松本リサ が投稿
朝食は栄養菓子をかじり、昼食は菓子パンに炭酸飲料、夕食はスナック菓子にペットボトル、といった不健康きわまりない最近の食事パターンは、手でつまんで食べる、スナック、菓子の感覚で食べるという傾向だ。市内を走る電車内で食べるにしても、つまみ感覚のようである。こんな状態の中で、まともな食品も、串状にしたり、手でつまんで食べれる製品が定着してきている。それならスティック、スナック的製品をしっかりとした食事になるものにするのは、日本人を食事から健康にする手助けをすることになる。

おにぎりはこの十年ほどの間に大きく進化し急成長したが、これはスナック的食事の代表格である。手でつまんで食べる、中に入れる具をいろいろ変えられる、持って歩ける、その上栄養的にも申し分ない。てんぷらを入れたてんむすがヒットしたあと、続々と新しい具が開発され、ご飯の品質が良くなり、美味しく食べるための温度管理が良くなり、海苔をぱりっとさせて食べられる新しいパッケージが出来、手で握った感覚に近くなり、食感が良くなり、低価格になり、といった進化が続いてきたのでそろそろ終わりかと思ったら、今度はオーガニック食材を使った具が入ったり、高級な具を入れたりして高級高価格品が出てきた。

こういった開発、進化、そしてマーケティングによって、巨大マーケットになったスナック食事としてのおにぎりを、鶏肉で考えるとどうなるか。代表的な焼き鳥で見てみよう。

私のよく行く居酒屋の焼き鳥はトップクラスの美味しさである、鶏肉が良いだけでなく、副材であるネギも香り高い高品質でおろそかにしていない、それを備長炭で焼くので風味が良い、となるのだが、それに加えて焼き上げるタイミングが手品のごとく正確なのである。刺し身も切っているし、酒もかん付けしているし、鯛の頭の酒蒸しもやっているし、魚も焼いている、そんな大車輪を一人でやっているのに、焼き上がりのタイミングがピタッと決まっているのだ。(写真はカモネギ)

焼き鳥でも水炊きでも、鶏肉を最も美味しく食べるには、加熱をして、いちばん良いときを見計らって取り出すことである。早すぎれば生だし、ちょっとオーバークックになったら硬くなってしまう。ならばどこで判断するか。目である、目視である、「膨らんだとき」なのである。餅を焼くのと同じだ。

焼いているのをじっと見ていると、そろそろ焼けたかな?と思うころ、鶏肉がわずかにフッと膨らむ瞬間があり、このとき火から離すのである。肉の中の水分、ジューシーさが閉じこめられたまま加熱され、一瞬膨らみ、そのまま放っておくとプスッと小さな爆発とともに、肉から蒸気となって飛びだしていき、しぼんでいく。この後はさらに水分が出て行き、硬くなり、味が抜け、最悪の状態に突っ走っていくのである。

博多の老舗の水炊きはどうしておいしいのか?というグルメ番組をたまたま見ていたら、主人がお客の鍋に付いて、いちばん良いタイミングで鶏肉を鍋から取り出してくれる。そして主人は言った「鶏肉が膨れた瞬間に取り出します」。水炊きも同じなのである。

同じ食材を使っても、調理によって美味しさが全く違ってしまうのだから、どうやって美味しく食べてもらうかを工夫することが大切になる。生で販売するなら、焼き方。調理あるいは半調理して販売するなら、それをどう戻すのか。電子レンジでやってしまったらベタッとして美味しくないから、ガスレンジのグリルで焼いて、と言っても、洗うのが面倒くさいからスティック食事になっているわけなのでこれはダメ。しかしレンジグリルでもアルミフォイルを使ってとすれば洗浄の手間がなくなり、やってくれる率は高まる。オーブントースターでアルミフォイルを使って、という手もある。食べて美味しければリピートが来ることになる。

次は串。「地養鳥」というブランドがあり、これを使った串刺しの焼き鳥用を吉祥寺の「三浦屋」という高品質食品スーパーで売っている。これに使われている串は鉄砲串なのだが、指でつまむ竹が幅広くなった部分に「地養鳥」の銘の焼き印が押してある。普通スーパーで売っている串刺しの焼き鳥用は、海外で串刺し凍結をしたのを解凍して売っているのだろうとなるのだが、この店では、精肉で販売しているのと同じブランド肉をそのまま使って、それをこだわりにしており、串の銘で顧客にアピールしているのだ。

そしてネーミング。よく例に出すのだが、関西で「焼き鳥用串刺し」を販売していて、もっと売れないかといろいろ調べたら衣を付けて串カツにして食べてる顧客が多いことがわかったので「焼き鳥・串カツ用」にして売ってみた。結果は三倍売れるようになった。名前を変えるだけで三倍というのはすごいことである。今売っている商品のネーミングを全て見直すだけで大分違ってくるであろう。取っ掛かりとして串刺し商品でやってみたらいかがであろうか。

肉の種類も幅を広げる。もも肉ばかりでなく、胸肉、骨付きの手羽先の「船」型、これが売れるといちばん儲かるのはつくね。胸肉はパサパサ感で人気が無いのだが、欧米ではヘルシーということで胸肉の方が人気がある。胸肉をジューシーに食べてもらう工夫の一つとして熟成が開発されてきたが、もう一つは調理で「膨らみ始めた瞬間」だ。HACCPの安全管理との関連が難しいが、解決策の一つのコンセプトになる。骨付きの手羽先は肉が縮まらないのと、骨に付いた肉のおいしさから、もっと売れるようにできる。つくねはミンチの技術になる。練られないで、ふっくら感があり、ジューシーさがあれば、焼き物にも煮物にも使える。あそこのつくねは日本一、等となったら大儲け確実である。

焼き鳥は「タレか塩か?」で、これにもこだわる。独自のタレを開発するのも良いだろう。塩もブランドになっている塩がゴマンと出ている。そして七味である。

あるときコンビニエンスストアの鍋の開発をしていて、添付する小袋入りの七味を、我が家で使っている京都の「一休堂」のを使ってみたらどうかと勧めてみた、この七味を使うと料理がガラッと変わってしまうほど美味しいのだ。価格を聞いてみたら一般のものの何と四倍で一袋4円ほどになる。とはいっても1パック3円のコスト増を売り上げがカバーしたらいいんダロー!ということで試しに試食してみたら開発者メンバーもびっくり仰天。七味がドウタラと何も言わないでそ〜っと売ってみたら、じわじわと売り上げが伸び続けていったのである。京都への電話オーダーが続々と増え、あるとき一休堂が言った「お宅はんはずいぶん出前が多いんですねえ!」蕎麦の出前用だと思っていたのだ。こんな七味を使ってみたらいかがでしょうか?
Comments