輸入食材の動向と、新発想による対応

2013/05/25 16:23 に 松本リサ が投稿
96年の輸入食材は、約200カ国から、2,000アイテムが入ってきている。全体の量は約5,747万トンで、前年対比でマイナス1.4%であった。わずかではあるがマイナスというのは、円安傾向だったためという見方を一般にしているようだが、実は違う、そんな単純なものではない。


まず、一つは、原料素材から、調製品に変わってきていることである。調製品というのは、例えば肉であれば、加工品にすることである。豚肉は台湾の口蹄疫やセーフガードで価格が上がり、困っている。ところがソーセージなどに加工をしたものはこのセーフガードの制限以外になるものが多いので有利になる。関税は普通の場合の豚肉は97年は22.5%なのに対して、ソーセージは10%とこれも安い。加工すると、重量的には減るが、高付加価値になる。

96年の輸入ソーセージは13,786トンで、前年の7,005トンに比べて伸び率97 %と、大幅に伸びている。国別に見ると、トップは米国で8,838トン、前年からの伸び率は91 %で、2倍近くになっている。2番のデンマークが1,784トンで、一位から大分離されているが、伸び率は98 %、3位は台湾で1,421トンの192 %。しかし台湾は口蹄疫が97年に入って出て来てしまった。この後、ドイツ、オーストラリア、カナダと続いているが、これから有望なのは何といっても米国で、十分な余力があり、以前と違って中小企業レベルでも製造してくれるメーカーがかなり出て来ている。輸入後の原価概算も598円で安い。米国食肉輸出連合会(USMEF)という組織があり、この東京事務所で橋渡しもしてくれる。次によさそうなのがデンマークとカナダである。デンマークは輸入後原価概算が513円で安い、しかし、最近になってドイツ、オランダ、スペインと、豚コレラが出て来ており、これらの国にデンマークから供給をしなければならなくなったために、価格は上がってきている。カナダは今までの量が少ないのだが、日本に輸出する意欲が十分あるし、価格も95年のCIF(通関前の原価)が676円だったのが96年には474円、これを通関した後の概算では563円と、米国よりも安くなっている。

この方法は原料でも使える。シーズンドポークといって、豚肉を荒びきにして、0.3%の胡椒を混ぜた原料で入れてもセーフガードを回避できる、この関税は97年は22.5%である。コンテナー単位での量は買えなくても、商社から売ってもらい、国内製造すればいいのである。原料価格も安定するし、品質も安定する。また、衣を付けたトンカツや、スライス肉に塩と胡椒をした製品も開発中の企業がある。


素材と加工品の関係だが、肉の素材全体では、95年から96年にかけての伸び率は2.63%である。また、魚の素材類の全体の伸び率は0.85%、両方あわせて計算するとわずか1.6%の伸び率である。ところが魚と肉を調理加工したものは合計で19.84%もの伸びを示している。この現象はミルク、穀物にも現れており、「酪農品」はミルク、チーズなどで、この分類の伸びは-5.79%で減少。また「穀物」の類は-1.19%。ところがトウモロコシの粉や、穀物類のフレークなどの「加工穀物」は、2.76%の伸び、ベーカリーミックスやせんべいなどの材料になる米粉調製品、パスタ類、ビスケットなどの「穀物、ミルクの調整品」では1.6.57%もの伸びをしているのである(表)。


もう一つ変わってきている要因は、「安い材料を探す」から、「原料を確保する」という目的に変わってきているものがある。

例えばイワシであるが、イワシの缶詰用の原料は年々取れなくなってきており、それをメーカーは世界中探している。95年の冷凍イワシの輸入量は6,955トンで、96年は4,054と減っている。国では、米国の96年が1,607トンで、前年比で121 %、次がモロッコで、96年1,530で前年対比-75 %、そしてメキシコが96年842トンで、前年比何と309%となっている。メキシコからは92年から94年まではゼロで、この間はチリから92年に24トン、93年に48トンが入っているだけである。そして、メキシコでイワシがとれることがわかった。

ある九州の中堅業者はメキシコに現地に加工工場を合弁会社で作っており、97年6月に完成の予定である。このイワシは「七つ星」あるいは「セブンスター」などと呼んでいて、今までは北日本で取れていた非常に美味しい高級なイワシである。中小企業では海外に現地工場を作れる力はなかなか無いかも知れないが、この現地工場を作っている企業にはいくつかの中小企業がついていて、原料をわけてもらえるようになっている。メキシコからのイワシは97年にさらに伸びることになるだろう。


原料確保と加工の両面でやりだしたのが魚のサバである。魚資源の確保のための輸入割当制度にサバは入っている。冷凍原料の全体量は93年20万トン、94年17.5万トン、95年15.5万トン、96年は11.5万トンになってしまっている。国ではノルウエーからが90%近くである。減ってきているのに、魚の加工品で「サバの味噌煮」はいつでもトップレベルのマーケットになっているので、この原料確保は大変なことになっている。このためにサバの価格は上がってきていて、CIF価格は全てに輸入国の平均で、93年はキロあたり97円、94年は92円、95年は101円、96年は144円になってしまった。制限は、量と価格の両面から決められるので、価格が上がると量が少なくなってしまう。量が少なくなると、現地国では余ってしまうので、これも困ることになる。ところが、その余った分を安く中国に持っていき、加工してから日本に入れれば制限外になってしまうのである。

そこでサバの調製品を見てみると、全体量では95年に920トンが、96年は1,244トンと急増している。国別だが、中国からは95年に81トンだったのが、96年は431トンで、伸び率433%という驚異的な数字になっている。ここら辺がわからないでいくらサバ味噌煮を何とか売っていこうとしても上手く行くわけが無い。通関後原価概算は、96年の中国からが499円、韓国からは1,160円、タイからは694円で、中国からのが最も安いので急増してきているのだ。この価格の味噌煮は、国産のものよりもかなり安く、惣菜、コンビニエンスストアなどのマーケットに急速に入っている。なおこの輸入割当制度は欧州連合(EU)が輸入割当の総額を増やすなどの改善を要求していたが、決着をし、97年後半に実施になる見通しである、しかし、量の程度でどのようになっていくか、慎重に見ている必要がある。


低価格の国が出て来て、輸入国が変わっている面もある。牛肉は以前はオーストラリアが主だったのだが、次第に米国が伸びてきて、ついに先日オーストラリアを追い越してしまった。生鮮のアスパラもトップの国が低価格で変わっている。アスパラは、92、93年には、米国、オーストラリア、フィリピンの順だったのだが、フィリピンの価格の安さを知ったユーザーが次第にシフトして、94年にフィリピンが2位になり、96年には完全にトップになってしまった。CIF価格を見てみると92年は、フィリピン322円、米国565円、オーストラリア660円だったのが、94年は、それぞれ374円、508円、628円で、相変わらずフィリピンがかなり低価格。そして96年は、420円、582円、632円、となっている。惣菜、低価格で小売りをするアスパラは価格でフィリピンを選んできたのである。このデータを見てから気が付き、オーストラリアからフィリピンに変えた企業も多い。


この他、輸入食材の過去5年の詳細データを見ると、こういった発見が次々と出て来る。手元の資料をぱらぱらとめくっているだけで、例えば、タコは、今まで主だったモロッコ、モーリタニア、カナリー諸島からが減ってきて、メキシコ、中国、ガンビア、ベトナム、セネガルが急増している。オニオンでは、今までの米国主力から、ニュージーランド、オーストラリア、に変わりつつある。高価なマツタケは、主力だった中国、北朝鮮が減り、カナダが出て来ていて、量は少ないがモロッコやトルコ、ブータンなどという国が出て来ている。カボチャはトンガが盛り返してきている。冷凍枝豆は、量は少ないが、インドネシア、ベトナムが急増しており、価格も中国よりも安くなっている。イタリアンブームでスパゲティの輸入が急増しているが、インドネシアからかなり安いのが入ってきていることもわかる。実際に、ある中規模の惣菜メーカーはインドネシア産のスパゲティを使い、低価格戦略が成功している。また、国別に見てみても、有望な国がいろいろと出て来ている(表)。

紙面の都合でほんの一部しか紹介できないのだが、中小企業が自社で直輸入する力はなくても、この動きを知ることによって、食材仕入れの交渉で有利になることが出来るのである。


この原稿のデータは、(株)フーズデザインが大蔵省貿易統計を、過去5年分、マトリクスに分析、発行した「97年版全輸入飲食材仕入れガイド」を元に書いています。


「ベンチャーリンク」97/7月号より
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