手づくりハム・ソーセージの自家消費を伸ばそう。鮮度重視も重要。

2013/05/25 16:32 に 松本リサ が投稿
ナチュラル志向だから、自家消費を伸ばせる

ハム、ソーセージに対して、消費者は「添加物」という恐怖感を持っている。便利性からハム、ソーセージを長年消費してきて、大きなマーケットに育ってきたが、潜在的には「体に良くないものが入っている」という感覚は常に持っている。手づくりハム・ソーセージは、これに対して、「無添加」「安心」というイメージがあり、事実、多くの手づくりハム・ソーセージは出来るだけ添加物を使わないで、そして美味しく作る方法を模索してきている。
手づくりハム・ソーセージのメーカーは小規模なところが多いが、「まじめに作っている」ことを感じている。価格については「ちょっと高い」が、「美味しくて安全」だから買う。このような背景から固定客が多く、定期的に購入してくれる顧客が多い。また、ギフト需要が多いのだが、これから更に顧客を拡大していくためには、自家消費、自分の家で日常的に食べるマーケットをもっと開拓していく必要がある。安全な加工食品だから、家庭のメニューにもっと使ってもらいたいのである。このキャンペーンをどんどんしたほうがいい。
ギフト需要はたしかに大きな売り上げにつながるが、一時的なものがある。しかし、自家消費マーケットでは、1回の売り上げは少なくても、一年中途絶えない売り上げがある。ギフトの単価は5千円、1万円といった大きなものだが、自家消費はそんなに高くはならない、しかし、年に2回のギフトマーケットに加えて、例えば毎月1回でもいいから、小さな売り上げを加えたいったら、今の売り上げを倍にはすぐにできるだろう。

地域限定、地元マーケット

地域限定というマーチャンダイジングは、ビールではたしか「サッポロクラシック」が最初の頃ではなかったかと思う。もう10年以上前になるが、サッポロでしか飲めないビールがあると聞いて、わざわざ飲みに行った記憶がある。現地でしか飲めないというせいか味も良く感じたのだが、こういったマーケットは最近急速に伸びてきている。
手づくりハム・ソーセージは、宅配便によって全国に売ることが可能だが、反面、そのメーカーに気軽に行ける範囲の小さいマーケットも重要になる。前述した自家消費マーケットを充実させるためには、地域限定商品を、地元のマーケットに販売したらいい。
北海道の池田町がやっているワイン事業では、「地元還元ワイン」というのがある。地元専用のワインを一般の製品とは別につくっていて、それは地元の町民にしか渡らないのである。このワインを飲みたくてあらゆるルートを使って手に入れている町民以外の人もいる。
このアイデアを、手づくりハム・ソーセージメーカーは使ったらどうだろうか。鮮度重視、今日中に食べてもらうソーセージ、一日に例えば50パックしか出来ないスライスハム、毎日20ブロックだけ販売するベーコン、こういったものを、車も含めて30分以内のマーケットだけに重点的に宣伝をして知ってもらう。車で30分といったらかなり大きなマーケットエリアである。このエリアの潜在顧客は大変な数がある。来店してもらうのに、特別金をかけた店舗は必要ない、かえって素朴に工場の横の業務用冷蔵庫から販売したほうがいい。

東京、吉祥寺の商店街に毎朝早くから長蛇の列が出来る羊羮屋がある。間口一間の本当に小さい店舗なのだが、ここの羊羮は地元に人たちには有名で、この経営者がこの店舗から少しはなれた工場で、一日にきまった量しか作らなく、それが美味しいのでこうなってしまったようだ。定量しか作らないのは、設備のせいなのか、多く作ると味が落ちるのか、余分な仕事をしたくないからなのかは知らないが、とにかくその日に作った羊羮はその日の朝には無くなってしまう。
今はもう無いのだが、やはり吉祥寺に小さいビストロ(フランス料理の居酒屋)があって、ここの生ハムが絶品で、これを食べにわざわざ来る人がいた。この生ハムはメーカーのものではなく、そこのシェフが自宅で自分でつくったものを店で提供をしていたのである。だから量は少なく、「今日は品切れ」も多かった。
これを手づくりハム・ソーセージに応用すると、例えば、工場で製造した製品を、地元のきまったレストランにだけ提供する。この製品は、一般に販売している製品ではなく、提供レストラン用の特別なもので、そのレストランに行かないと食べられないもの、となる。あるいは、手づくりハム・ソーセージメーカーがレストランを持つことにもなるかもしれない。レストランではなく、サンドイッチハウスかもしれないし、惣菜ショップになるかもしれない。地元のデパートに小さな店として出店する形もあるだろう。
いずれの形にしろ、ポイントは、地元のマーケットだけに対しての販売であり、限定製品であり、限定量であり、ギフトではなく自家消費であり、鮮度重視でもある。

出来立て志向、鮮度重視

焼き立てパンが拡大してきている。工場で焼き立てのパンを販売するスタイルだが、同時にレストランを併設している店舗もある。規模的にはファミリーレストラン程度のものだが、ファミリーレストランよりもグレードを上げ、しかし、価格はそれほど高くはなく、そしてベーカリー工場を店の横に持っている。
レストランのメニューで提供するパンはもちろんそこで焼いた焼き立てのものを提供するのだが、あるチェーン店ではパンは食べ放題である。客席にパンを持ったウエイターが「パンはいかがですか?」と回ってくる。ちょうど香港の飲茶のカートと同じだが、違うのはいくら食べても無料なこと。そして、レストランのレジの横、ベーカリーエリアの前には、「焼き立てパンショップ」があり、これだけを買いに来る顧客が多い。
駐車場はレストランの分があるので、マーケットエリアも広い。パンの種類も多く、人気は時間を決めて焼く、食パン、フランスパン、クロワッサンなどである。何時何分に焼き上がる旨の表示があり、それにあわせてくる顧客も多い。

ソーセージは鮮度が重要なことは手づくりハム・ソーセージのメーカーの技術者は皆知っている。それならそれをもっと顧客にアピールすべきである。一番美味しいのは、工場で作ったのをその日に買って帰って、家で食べることですよ、と教える。この美味しい食べ方を知っているのは、その工場の従業員だけ、では顧客に悪いではないか。

鮮度が重要なのはたくさんあるが、コーヒーもそうである。ドトールコーヒーショップで何年か前、信じられない店がいきなり出てきたことがあった。所沢に新しく出来た店の、店頭売りの挽いたコーヒーの粉の袋売りが、その店がオープンしてしばらくしたら、全国平均の10倍にもなってしまったのである。何でそんなに売れるようになったのか本部がすぐに調べに行った。
その店のオーナーは青果店をやっていて、青果を売る方法をそのままコーヒーの粉を売るのに使ったのである。青果、特に野菜は鮮度が命である、そこでその店では市場に仕入れにいったトラックが、今日は何時ごろ店に到着するかを、毎日大きな看板で知らせていたのである。その時間を知って地元の顧客は少し前に並び、箱から最初に出した青果を買っていた。このおかげでその店は繁盛していた。
そこで、コーヒーにはどうしたかというと、毎日工場からコーヒーの原料がトラックで店に運ばれてくるが、その到着時間を知らせたのである。コーヒーは挽き立てが美味いので、その工場で挽いて、店に到着したばかりのものを、箱から出しながら販売したのである。
青果店と同じように顧客は並ぶようになった。魚の刺身ではないのだから、1時間ぐらい違っても香りは変わらないのではないかと思うが、心理的な面が大きいのだろう、あるいは実際に味が違うのかも知れないが、とにかく「到着仕立て」のコーヒーは売れ、ケタ違いに売るようになってしまったのである。このことを手づくりハム・ソーセージに応用したらどうなるか?
限定、鮮度、このたった2つのキーワードを考えてみて下さい。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」97/4月号より
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