手づくりハム・ソーセージのいろいろマーケティング 学校、体験、福祉型

2013/05/25 16:40 に 松本リサ が投稿
手づくりハム・ソーセージは、実際に作ってもらって愛着を持ってもらう「体験型」や、作り方の「学校」的なものも変わったマーケティングになる。こういったタイプは、皿などの焼き物とか、手すきの紙、木工などの文芸的なものや、地引き網や釣り体験と行った狩猟型など、いろいろとあるが、ハム、ソーセージも多い。

愛媛県にある、城川自然牧場は、町営ハム工場で、ドイツ人マイスター直伝の手作りとうたっている本格高級ハム・ソーセージを作っているが、その販売促進として、牧場で作った製品のイベントを企画をした。テーマは、自家製ハム食べ放題やソーセージ作り体験などの「ハム&生ビールまつり」である。ソーセージ作り体験コーナーは予約制で、ハム工房の技術者と一緒にフランクフルトソーセージ作りをする。できあがったソーセージは後日、他のハムと一緒に自宅に届くことになっている。
方法は、一度にたくさん出来ないので、午前中と午後の部、それぞれ10人づつと多くは出来ないが、募集の広告で十分にPRにはなる。これだけでなく、牧場の近くにある三滝渓谷自然公園・ふるさと交流館でハム・ソーセージの食べ放題も行なわれ、150人を募集した。骨付きハム、特大フランク焼きなどが食べ放題。

帯広市の八千代公共育成牧場にある畜産物加工研修センターでは、十勝産の豚肉を使ったソーセージ作りを体験できる。学校の生徒なども含めて、生産基地での加工品づくりは、地味ではあるがそれなりの宣伝になる。センターは畜産の普及や振興を目的に10年ほど前にオープンし、肉製品や乳製品の加工研修も始めた。ソーセージ研修は約3時間半で、受講料は14,000円(30人以内)で、ほかに材料費。バター作りの研修もある。研修は平日だけで、予約が必要。毎年平均で1200人が講習を受けており、満員の状態が多い。また、このセンターでは、ハム、ソーセージの販売もしている。

愛知県東加茂郡足助町の町営パン工房「バーバラはうす」では、町シルバー人材センターから派遣された高齢者とパートが働いており、パンと一緒に、ハム、ソーセージも作っている。こちらの名前は「ジジ工房」である。全て手作りで、高齢者は売れていることに誇りとおもしろさを感じており、それが味にも反映している、という。

北海道、北見市川東の知的障害者施設・川東学園には、直営店「フレンズショップ・オーレ」がある。自前の農場で豚や鶏を飼い、野菜も栽培している。家畜は学園内の作業所「ワークセンターフレンズ」でハムやソーセージに加工して、訪問販売などで売ってきたが、職員や園生が「直営の売店を持ちたい」ということから、北見市からの補助などを受けてオープンすることができた。製品は全て無添加で、一般の価格の3割り引きぐらいのために、市民が買いに来る。

こういったタイプの手づくりハム・ソーセージは、技術の専門家から言わせると、技術的にそんな簡単にいいものが出来るわけが無い、という見方が多い。しかし、「本当に美味しいものを、それなりの価格で」というコンセプトとは一味違い、社会貢献的な面を持ちながら「ある程度」の味を作ることが出来て、価格が安い、というのも一つのマーケティングである。
しかし、ボランティアである必要は無い、かえってそうでなく、素朴な仕事、ビジネスの仕方から、適当な利益が取れることが望ましいし、それでなくては事業として成り立たない。そして、こういったビジネスの方法、マーケティングは十分に可能である。
体験的なものというのは、例えば焼き肉もその一つになる。焼き肉はレストランの厨房で焼くのではなく、生肉をもってきて、自分で好みに焼くのであるから、「調理体験型」のマーケティングになる。同じように、お好み焼きもそうだし、バーベキューもそうである。お好み焼きも焼き肉も調理に文句をいう顧客はいない、自分で焼くのだから。素材がだめならば問題だが、素材がよく、味で重要なタレ、ソースがよければ十分商売になる。流行っているところは、タレなどの味のポイントだけをしっかりと押さえている。
手づくりハム・ソーセージの場合は、2つのものを一緒にやったらいい。一つは技術者がきちんと作った製品を販売する。作っているところを見せたり、出来立てのパンを売っているベーカリーのように、ソーセージの出来る時間を出して、出来立てを売るなど、それなりの活気のある販売をしながら、同時にもう一つの「体験型」をやったらどうだろうか。いつも工場の中で作っている技術者が、一週間に一回、募集したきまった人数に作り方を教える。教える相手は、顧客でもいいし、子供たちでもいい。子供たちも一度体験したら実に言い顧客になるのは間違いが無い。
教えて、体験させて作ったソーセージが、よく出来たらその「生徒」は喜ぶ。しかし、もしうまく行かなくても、ソーセージの整形がうまく行かなくて、ケーシングを破っても、うまく形が出来なくても、「ソーセージを作るのは難しいもんだ」ということで、店で販売しているソーセージを見直して買ってもらえるようになるものである。
「体験、教育」費用は、販促費にしてもいいし、ある程度の「教習料」を取ってもいいだろう。帯広市の八千代公共育成牧場は、有料の例。愛媛県城川自然牧場は、販売促進費用の例である。
このような活動を続けていくことによって、固定客は次第に出来てくる。手づくりハム・ソーセージにとって最も重要な顧客は、製品の味にほれてくれる固定客である。マーケティングは4つのカテゴリーに分けられることを以前に書いた。一つは、固定客に、いつもの製品を売る。2つめは、固定客に、新しい製品を売る。3つめは、新しい顧客に、いつもの製品を売る。4つめは、新しい顧客に、新しい製品を売る。そして最も大事なのは、最初の「固定客に、いつものものを売る」である。この最も大事な固定客を増やすために、体験型のイベントを、定期的にでも、不定期にでも、技術者や、社長も含めて開いたらどうだろうか。味に惚れる顧客を作ることと同時に、顧客にとって店がもっと身近になることも大きな販促である。
ある、ソーセージや缶詰を作っている大手メーカーが、いつもそのメーカーの製品を買ってくれている顧客に対してアンケートを頼んだことがある。その中で「なぜわが社の製品を買ってくれるのですか?」という質問があり、その答えとして「子供の時に、御社の工場見学をしたことがあるから」という答えがだいぶあったそうだ。
また、東北の乳製品メーカーが、新しい工場をつくるときにのコンセプトに「観光工場」で進めた。観光客や、顧客がいつでも工場内をガラス越しに見れて、製品を試食できるようにしたところ、首都圏の販売力が増した。それは、首都圏から来た観光客が、工場を見たあと、首都圏で販売しているそのメーカーの製品を買うようになったからである。
このようなコンセプトの工場、メーカーはどんどん増えている。ただいい製品を作れば売れるはずだ、というのは100%は正しくなく、いかに自分のブランドを好む顧客を多く作るかがマーケティングで重要なことなのである。そのために「体験型」の小さな手づくりハム・ソーセージ工房は貢献する。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」 97/1月号より
Comments