手づくりハム・ソーセージの、いろいろマーケティング

2013/05/25 16:49 に 松本リサ が投稿
 1 地ビールレストランと



手づくりハム・ソーセージでは、単に生産をして、直販する、宅配をするといった販売だけではなく、他の自然食品などと組み合わせたり、外食と一緒になったり、教育と組み合わせたり、社会貢献型だったりと、多様なマーケティングが数多く行なわれている。どのようなマーケティングがあるのか、いくつか見ていってみる。
今回は「地ビールレストラン」。


川越市にあるドイツ風のパブレストラン「クリ(九里)より(四里)うまい十三里」。江戸から川越までの距離が13里だというところから付けた名前だというこのレストランは、サツマイモで作った「サツマイモラガー」が売り物。原料は川越産の有機栽培もの。「地域性のある“地ビール”」ということで醸造を始めたという。正確には発泡酒になるが、味はビール。そして、ビールに付き物のつまみはハム、ソーセージとなるのだが、この店のメニューにあるのは、無添加のハム、ソーセージ。また、他のメニューもドイツ料理が中心だが、全て国内の有機栽培野菜などを使っている。
長野の伊那食品工業では、地ビールレストラン「ひまわり亭」を工場内に建設した。地ビールは同社などが出資した南信州ビールから樽で供給を受け、「まほらいなビール」の名称で販売している。このメニューは、地元産の軍鶏(シャモ)肉を使った「ところ天サラダ」「寒天グリーンサラダ」、地元産「したし豆」「手作りソーセージ」などがある。
那須町高久甲にある地ビール製造会社「那須高原ビール」、ビールの名前は「那須ランドビア」。現在のビールは、小麦100%ビール、黒ビール、重厚な味のものとの3種類だが、将来増やす計画。レストランは200席で、窓越しにビール工場を見ることができる。メニューには、地元産の和牛、露地野菜、卵などを使った料理や、那須の農家の手作りソーセージなどが入る。


地ビールは規制緩和の産物だが、地域振興という効果を生む。手づくりハム・ソーセージでは地域の味、地域限定、産地生産、小型企業といったキーワードが並ぶが、同時に、自然志向、安全食品、高品質、といった性格も強い。これが成長著しい地ビールとうまくあっている。更に、ビールのつまみにかかせないのがハム、ソーセージである。この2つをうまく連携させない手はない。お互いに盛り上げながら販売が出来る。


もう少し事例を見てみよう。どういった業態があるかを見てみると、地域活性という性格上、町、組合、第三セクターといった、企業ではなく、地方自治体、団体が主体でスタートをしたものがかなりある。

呉商工会議所の産業活性化懇談会は、地ビールづくりを計画し200近い地元企業の出資で呉ビール会社を設立した。名称は市民からの公募で「クレール」とし、醸造工場を備えたビアレストランをオープンさせた。ビールは4種類、ピルスナー、ヘレス、アルト、バイツェン。そしてつまみの中心はもちろんソーセージである。
静岡県函南町と函南東部農協、地元や東京の食品会社、神奈川県の生協などは共同で第三セクターを作り、酪農と人との交流施設「酪農王国」を丹那盆地にオープンさせる。これは、乳製品や地ビールの製造場、レストラン、資料館、宿泊施設、ハムなどの手作り工房、家畜の動物園などから成る。一部のオープンは、97年夏ごろ。
また、後述する鳥取、東伯町等も同じような組織の形である。
このような業態に自社の作る手づくりハム・ソーセージを販売するためには、共同出資の企業に参画するとか、第三セクターに参加する、合弁会社をつくる、といったことが必要になってくる。そのためには、公共団体や、農協、自治体がどのような動きをしているのか、普段からそれらと交流を深めていなければならない。そうでないと構想段階での情報が入らないからである。地ビール事業を考えているところは、地域活性を考えているところが多い、その最初の段階から参加するのである。
地ビールは小型の醸造だとはいっても、設備投資にはかなりの資金がいる。醸造技術の取得にも、勉強すればいいというものではなく、売れる地ビールにするためには、技術者を呼んだり、いくつかの企業が行っているようにドイツから人を呼んだりすることまで必要になってくる。
レストランを作るにも、かなりの資金がいる。外食というのは単にものをつくるのではなくサービスという大きな付加価値を付けなければならない。味はもちろん美味しくなければならないが、サービスがよくないと人は来ない。これは自分が気に入ったレストランを考えてみたらわかる。また、レストランのサービスに気分が悪くなったことは誰にでもあるが、それを思い出してみたらわかる。その重大なサービスを従業員、パートも全て含めた組織で構築しなければならないのである。
レストランの企画からオープンまでのまともなコンサルティング費用は、ある農協系のレストランの一つの例では2千万円だった。それだけのソフトウエアが必要なのである。だから、大きな組織で開発し、自社としてはその一環として手づくりハム・ソーセージが売れるようにしていく必要があるのである。


地ビールからのスタートではなく、ハム、ソーセージを造っている企業が更に事業を拡大して地ビールを始める逆の例もある。これは資金のある加工肉メーカーが出来る。

食肉メーカーの米久は、主力商品であるハムやソーセージの販路を拡大するため、地ビールレストラン「御殿場高原ビール」を始めた。レストラン運営会社には、50%の出資をした。レストランは、ホテルやテニスコートを備えたレジャー施設「時之栖(ときのすみか)」の中にある。ビールは3種類で、普通のビールに近い黄色の「ピルス」、小麦の麦芽を使った南ドイツ風の「ヴァイツェン」、色が濃い「デュンケル」。ドイツのエッセン市からビール醸造の職人を招いて技術指導を受けた。料理メニューは、ソーセージ盛り合わせ(780円)、生ハム盛り合わせ(680円)など、当然だが、米久で製造している食材を生かしたものが多い。
鳥取県東伯町の手づくりハム・ソーセージは有名だが、やはり販路拡大のために、地ビールとハム・ソーセージのレストランや直売所などを備えた「東伯プラッツ」を作った。。経営はJAとうはくが95%出資した東伯食品。ドイツ式の地ビールと、畜産、手づくりハム・ソーセージを組み合わせて東伯町を打ち出す。

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酒のメーカーが地ビールを造り、それに手づくりハム・ソーセージが乗る例も多い。 北海道北見市の地ビール会社、オホーツクビールは、原料の麦芽に一○○%地場産の麦を使用した試作ビールを製造しており、レストランも経営をしている。料理との組み合わせも試み、カッテージチーズと玉ネギをあえ、ボイルしたポテトとソーセージに盛り合わせたドイツ家庭料理「ヒュッテンケーゼ」をメニューに入れた。
合同酒精は茨城県牛久市の「牛久シャトー」に、地ビールレストラン「ビアレストラン“バウアー”」をオープンした。「牛久シャトー」は歴史のあるシャトーで、年間50万人以上を集客している。ここが地ビールを開発したわけである。地ビールはレギュラーとして2種類、入れ代わりになるビールが1種類の合計3種類。メニューはジャガバター ローズマリー風味600円、牛タンのバジルソース800円、まいたけサラダ700円、ソーセージと野菜の煮込み大皿2000円など。
和歌山県伊都郡かつらぎ町の野半酒造店は、出来立てのビールが飲める「ビアブルワリー紀泡館」を作った。手作りソーセージや地元特産のコンニャクがつまみに出る。
愛媛県川之江市の清酒メーカー「梅錦山川」は、地ビール工場「梅錦ガーデン丹原麦酒醸造所」を作った。アルコール度が低い清酒の開発も狙っている。醸造所にはハーブ園もあり、ビアレストランのテラスから眺めながら、特製ハムやソーセージなどをつまみにビールが楽しめるようになっている。



色々な形の地ビール事業があるが、地元産、美味しいビールのつまみとしてこの事業に乗るというのをマーケティングの一環にすることが出来る。


地ビール企業リスト(一部)

 社名         ビール名      所在地    開業年月
オホーツクビール  オホーツクビール  北海道北見市  95年 3月
アレフ       小樽ビール     北海道小樽市  95年 7月
東日本沢内総合開発 銀河高原ビール   岩手県沢内村  96年 4月
上原酒造      エチゴビール    新潟県巻町   95年 2月
新潟ロシア村    森の地ビール    新潟県笹神村  96年 2月
銀盤酒造      秘境黒部ビール   富山県黒部市  95年 4月
南信州ビール    南信州ビール    長野県宮田村  96年 7月
隅田川ブルーイング 東京地ビール    東京都墨田区  95年 3月
ホッピービバレッジ 赤坂地ビール
          深大寺ビール    東京都港区   95年 8月
多摩ブルワリー   多摩ビール     東京都八王子市 96年 2月
住商開発センター  台場地ビール    東京都港区   96年 7月
チャルダ      (商品名は特になし)横浜市中区   96年 6月
大和葡萄酒     甲斐ドラフトビール 山梨県勝沼町  95年 8月
御殿場高原ビール  御殿場高原ビール  静岡県御殿場市 95年 6月
山栄        浜名湖ビール    静岡県浜北市  96年 5月
クニロクビア
 ファクトリー   長良地ビール    岐阜県岐阜市  96年 7月
伊賀の里モクモク
 手づくりファーム モクモクビール   三重県阿山町  95年 7月
長浜浪漫ビール   長浜浪漫ビール   滋賀県長浜市  96年 4月
黄桜酒造      黄桜麦酒酒蔵仕込  京都府京都市  95年 6月
寿酒造       大阪国乃長ビール  大阪府高槻市  95年 8月
ヤマトブルワリー  倭王ビール     奈良県大和高田市95年10月
三田屋       地ビール三田屋   兵庫県西宮市  95年 4月
小西酒造      白雪ビール     兵庫県伊丹市  95年 6月
エムズ・コーベ   UBプレミアム   兵庫県神戸市  96年 5月
宮下酒造      独歩        岡山県岡山市  95年 7月
多胡本家酒造場   作州津山ビール   岡山県津山市  96年 5月
               ITSUHA
呉ビール      クレール      広島県呉市   96年 5月
東伯食品販売    東伯麦酒      鳥取県東伯町  96年 6月
梅錦山川      梅錦ビール     愛媛県川之江市 95年 3月
ゆふいんビール   ゆふの豊純     大分県湯布院町 95年 6月
雲海酒造      綾の地ビール    宮崎県宮崎市  96年 4月
ニシダ       HIDEJIビール 宮崎県延岡市  96年 7月
霧島高原ビール   霧島高原ビール   鹿児島県溝辺町 95年12月
薩摩麦酒      薩摩ヴァイツェン  鹿児島県国分市 96年 7月
 (社名は国税庁調べ。5月末現在で国税庁からビール製造の本免許を取得した業者)

鶏卵肉情報センター「養豚情報」96/11月号より
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