肉の衣付きメニューを売ろう

2013/05/25 16:43 に 松本リサ が投稿
トンカツ

関東はトンカツ中心でここのところトンカツブームで活気がある。トンカツでは第一に肉のグレードで特徴を付けている。まず、高品質化で、黒豚とか銘柄豚で肉の品質を売り込むものである。この点では、最近「地域」に限ったり「産地」にこだわったりすることが顧客の「安心感」につながる一つのトレンドにもなっているがこれを高級志向タイプのトンカツに使うことも出来る。明治サンテオレでは、「知床チキンバーガー」「十勝チーズバーガー」、合同酒精は「福島産もも」「和歌山産みかん」を使った低アルコール飲料、千葉そごうでは「上総の満点たまご」、といった方法である。トンカツでは例えば新潟のトンカツ店ならば「越後もち豚のトンカツ」東京ならば「江戸豚のトンカツ」埼玉なら「いるま黒豚」、あるいは「鹿児島直送の黒豚使用」をテーマにする、といったところだ。

次には安全性を打ち出したもので、SPFポークに代表されるもの。SPFには国内産と輸入品に分けられる。SPFについては、米国で最新は「SPFポーク」と言う言葉は既に死語になってきている。というのは、最近の米国の豚肉生産は巨大な汚染されていない土地を使い、そこに外部からのバクテリアなどの影響の無いようにして、環境そのものをクリーンにして飼育する方式になっているからである。
この方式だと、SPFポークのように母豚から帝王切開するなどの人工的な手を加えなくても自然のままで生産できる。重要なのは、広大な土地である。この点から日本でこの方式は難しい要素がある。
そして次には低価格のポークを使ったトンカツになる。低価格のポークは輸入ポークになるのだが、広大な土地で自然に生産した豚肉がこれから米国やカナダからの低価格の豚肉になっていくことを考えたら、「低価格」で「ナチュラル」なポークのトンカツ、という非常に有利なものになっていく。同時に、ロイン(ロース)とテンダーロイン)だけに絞って買うことが出来るのである。
トンカツでもう一つ低価格対応は、セーフガードに引っ掛からない衣付きの「豚肉調製品」で輸入する方式である。セーフガードは豚肉の輸入が急増した場合、関税を一時的に上げるシステムで、これが発動すると二十数パーセント輸入価格が上がってしまう。既に何度も発動されていて現在も発動中である。しかし、豚肉の切り身に衣を付けて凍結した「衣付き豚肉」ならばセーフガードの対象にならず、定率の関税を払えばいい。セーフガードは、発動している期間としていない期間が交互にあり、その状況に応じて国内の豚肉価格も含めて豚肉相場はかなり混乱している。これからもこの混乱は続くだろう。そうなると原価がいつも不安定になってしまう。この点で調製品で輸入の場合は原価も安定している。
トンカツ調製品で必ず問題になるのは衣である。米国でもオセアニアでもカツにする衣は「ハードクラム」で硬い衣が普通で、日本式に軟らかいものは使わない。向こうのカツを食べるところもがとても硬く、日本人の口に合わない。その上に「ダブルクラム」と言って肉の上にバッター液を付け、その上に衣、更にもう一度バッター液、そしてもう一度衣、という状態が普通で、衣が硬いうえに二重になっているのである。米国で日本式の衣は一部で製造しているだけなので、なかなかうまく手に入らない。加工する工場の近くで衣を開発したりする必要がある。

ビーフカツ

関西では肉の消費は牛肉主体で、カツもビーフカツが多い、しかし関東でもビーフカツは売れる。トンカツ専門店でビーフカツを出すのはどうかと思うが、レストランでビーフカツは高級感があっていいのではないか。
ビーフカツのポイントは調理である。ステーキと同じでオーバークックしてしまったら硬くなる。ミディアムレアのビーフカツ、といったところがいい。ビーフカツの場合、肉の切り身に加工することがいろいろと出来る。筋を切るという基本的なことも簡単で、固めの輸入牛肉でも軟らかく出すことが出来る。筋を切るのにナイフの先で手でやるのもいいが、ある程度の規模になったら「ステーキマスター」という簡単な機械を使ったらいい。切り身肉を機械に通すだけで細かい筋きりが一瞬にして出来てしまうものである。もちろん豚肉にも使える。
牛肉の場合は漬け込んでから揚げる方法もある。一般的には牛肉に合う醤油をベースとした液に漬け込んで下味を付け、それに衣を付けて揚げるのである。こうすると肉自体に薄味が付く。店の味、腕の見せどころである。ビーフカツはステーキと違って衣を付けたものを短時間で揚げるので、厚さはあまり厚くなく、1センチ程度が手ごろだろう。

串カツ

串カツは関西が本場ではあるが、関東でも、その他の地域でも焼き鳥に準じた食べやすさで売れている。関西のスーパーマーケットでの例だが、焼き鳥用の串刺しにしたものを顧客がどうやって食べているかの調査をしたら「串カツ」と言う答えがずいぶん返ってきた、そこで「焼き鳥用」としてあったのを「焼き鳥、串カツ用」としたら3倍も売れるようになった。また、関西のスーパーマーケットが関東の茨城県に店を出すときに、この串カツも一緒に持ってきたらかなり売れた。串カツは全国的なものなのである。
レストランでは大きめの串を、弁当、惣菜では標準型を、居酒屋では標準型と「ミニ」を使ってもおもしろいだろう。関西の串カツ(串揚げ)居酒屋では串の長さや種類によって価格を分けていて、最後に会計をするときにその串を使うところが多い、回転寿司の皿と同じである。牛、豚、鶏肉に各種野菜を組み合わせたり、魚類やエビももちろん入れた「立ち食い串カツ居酒屋」といったものも考えられる。串カツは、刺してある食材の大きさを揃えれば全部同じ調理時間で出来る。小型のコンベアオーブンを使えば調理に失敗はなく、アルバイトでも出来る。「キャベツの乱切りはいくらでも」などのサービスもできるだろう。

メンチカツ

吉祥寺にある「さとう」という食肉専門店ではメンチカツを一日二千枚も売るという。ミンチ肉を使ったアイテムが売れるのは、端材肉を利益にしてしまう魔法のようなもので、売れるミンチメニューがあればメインメニューを安くしても全体では儲けることも出来る。ミンチを使った代表メニューはもちろんハンバーグだが、衣を付けたメンチカツは食感もフレーバーも違ってきて新しいメニューとして並行して売ることが出来る。もちろん惣菜、弁当でも売れ筋にすることが出来る。
メンチカツのポイントはシーズニングなどのフレーバーと食感である。フレーバーはハンバーグと同じでそれぞれのノウハウでやればいいが、食感は挽き方、練り方である。多くの顧客が好む食感というのは、肉の粒の食感があり、しかし全体では軟らかい、というものである。オニギリの食感を思いだしてもらいたい。売れるオニギリというのはかじったときに簡単に崩れるもので、熟練した人が手で握るとこれが出来る。そして軽く崩れたものを口に入れて噛むと、御飯の一粒一粒の食感がしっかりとある。これをメンチカツに出すのである。
そのためにはミンチを挽き過ぎては出来ない、しかしあまり短時間しか挽かないと味がうまく平均にならない、また、肉を挽くときの温度が高いと練れてしまって食感が出ない。低温の状態で、出来るだけ短くしかも均一に混ざるように挽く、これがポイントである。このためにあらゆるハンバーグメーカーが苦労をしているのである。

てんぷら

和風メニューが流行っている、ヘルシーだし、さっぱりとしているし、やはり日本人だからたとえ洋風メニューでも和風の味付けが落ち着く。ステーキソースでは和風ソース、サラダでは和風ドレッシング、ローストビーフでも生姜醤油が人気である。そこで肉の和風メニュー、てんぷらである。昔「肉天」というメニューがあったのを覚えているだろうか。定食屋などでよく出ていた。どちらかというと東日本、北日本のメニューだったような気がする。
著者は以前ラムの日本でのキャンペーンのためにオーストラリアにラムの調査だけで2週間もいたことがある。このときにラムのモモ肉をてんぷらにして生姜醤油でオーストラリア人に食べさせたところ大好評であった。日本に帰ってきても「ラム天」を紹介したらどこでも大好評だった。別にラムでなくても、牛、豚、鶏と、どんな肉でも使える。肉をてんぷらにする場合には赤身の部分がいい、牛豚ならばモモ肉、鶏肉ならば胸肉がいいだろう。昔の定食屋の「肉天」では豚肉だった。タレは天つゆに大根オロシ、生姜、といったオーソドックスなものでもいいし、最近はミネラルたっぷりの天然塩、自然塩に人気があるので、高級な塩だけで食べさせてもいいだろう。てんぷら専門店の中には塩で食べさせるところも多い。

フリッタ

一口大にスライスあるいはスティックにした肉に塩、胡椒、あるいは漬け込みなどなんらかの下味を付けたものに粉を付けて揚げたメニューである。洋風のてんぷらみたいなもので、ケチャップソースなどを付けて食べる。肉のスナック的なもので、ビールのつまみにもいい。居酒屋のおつまみメニューなどに使える。調理も短時間で簡単にできる。レバーをスティックにカットをしてフリッタにするとレバーの臭みがなくあっさりと食べられる。


柴田書店「月刊食堂」97/3月号より
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