ローストビーフからのアイテム

2013/05/24 2:07 に 松本リサ が投稿
ローストビーフに使う部位だが、サーロイン(ストリップロイン)やテンダーロインといった高級部位で作るのも良いが、黙っても売れる部位をわざわざ使わないでも、低価格の部位を使えば値ごろで利益も取れる。モモ系当の部位は赤身部位なので、ヘルシー感覚な製品が出来る。シルバーサイドやトップサイドではブロックが大きいので、丸太状にカットをして焼くと良い。変わったところで利益が取れるのはブリスケットだ。ブリスケットでは硬いのではないかと考えると思うが、普通に焼いただけでは硬いが、熟成させることで柔らかくなる。熟成は一般的にはチルドの状態で2〜3週間冷蔵庫に保管するのだが、ローストビーフでは焼き方で出来る。120℃位の低温でローストをし、48℃ぐらいになったらオーブンの温度を55℃程度に下げて、数時間そのままの温度で保温する、このことをホールディングといっているが、この時間が長いほど柔らかくなる。

1時間の保温は2日分の熟成と言われていて、例えば夕方オーブンをセットして翌朝までタイマーで自動調理するのならば、8時間以上はホールディングをしていることになるので、16日間熟成したのと同じ効果になって、柔らかくなる。ブリスケットは丸太状ではなくシート状の形をしているので、そのままオーブンに入れても良いが、丸めてヒモで縛るかネットに入れてからローストするとよりふっくらと仕上げることが出来る。この場合は加熱時間が多少長くなる。いずれにしろブリスケットは低価格部位なので利益が取れる商材になる。

高級部位やモモ系統のローストの場合、ログの両端の部分の端材が出るが、この部分はぎりぎりまで商品にしないで、多少余裕を持って、例えば3センチぐらいをたっぷりと残して切り落としとして販売すると隅々まで売り上げが取れる。ブリスケットのローストは最初から「ローストビーフの切り落とし」として販売をしたら良い。切り落としというのか顧客にとっては「低価格でお得用」という感覚で、これがローストビーフということならば、高級牛肉の切り落としという見方になってしまう。

切り落としはサラダやサンドイッチ用として販売する方法がある。サラダ用の場合にはドレッシングを添付すると良い。ローストビーフサラダに合うドレッシングなのだが、和風味のものが良くあう。醤油系、ポン酢系のドレッシングで、ヘルシーな味付けになる。和風系の味付けというのは牛肉に良く合い、海外でもステーキハウスなどの牛肉主体の店に行くと今では醤油が必ず置いてあり、英語圏やヨーロッパ圏の人たちにも醤油味は普及している。

和風から言うとローストビーフはご飯とも良く合うので、丼メニューにも良い、ローストビーフ丼である。ご飯の上にローストビーフを乗せるわけだが、ローストビーフは切り落とし状のものを生姜醤油で味をつけて乗せ、刻んだ海苔とネギをまぶせると香りも見映えも良くなる。関西の料理で「鯛まぶし」というのがあって、刺し身をとった鯛の頭は潮汁、酒蒸し、かぶと焼きといったメニューになるが、本体の背骨の間に付いた肉(豚ならスペアリブ)は、醤油とみりんと出汁を使ったタレをつけてグリルで焼き、骨に付いた肉をこそげ取り、温かいご飯の上にまぶして食べるメニューである。鯛まぶしは以前は「まかない」メニューといって調理場の人達向けの食事で、お客様には出せない余り物などを使ったメニューだったのだが、その美味しさで得意客が特別に注文するようになり、そのうちにグルメ向けのメニューになってしまったのである。寿司の縁側などもまかないメニューだった。このローストビーフ版がローストビーフ丼といったところだ。

サンドイッチは高級メニューになる。ローストビーフサンドイッチは、ただ食パンに野菜と一緒に挟むのではあまりにも貧弱で悲しい。ローストビーフに合うパンは例えばフランスパンで、まず表面を焼き、焦げ目をつけて固めてからローストビーフや野菜を挟む。こうすると肉汁や野菜の水分がパンにしみ込まないで、パリッとした食感を楽しむことが出来る。肉汁の滴るローストビーフは食欲をそそるが、肉汁がパンにしみ込んでしまったサンドイッチになると今度は気持ち悪くなってしまうからだ。肉汁というのは美味しさで、肉汁の出てしまったステーキやローストなどは味の抜けた一応は食えるものでしかない。

肉汁で思い出したが、オーブンで焼き上げた後、そのブロックは直ぐにカットしてはいけない。焼き上げた直後だと肉の中の水分がまだ落ち着いてないので、しばらく、30分以上はそのまま室温の中において熟成させなければならない。焼けた直後のローストビーフを直ぐにカットすると透明な肉汁が飛び出してきてしまう。出て来た肉汁は美味しさである。これがしばらく置いておくと肉汁をたっぷり含んだ状態でスライスカット出来るので、ジューシーで美味しいことになる。たった30分でジューシーにできるかどうかが決まってくるのである。もし百グラムいくらで販売している場合、肉汁が飛び出てしまったものは、重量が軽くなって損するし、ジューシーでなくなり、硬く、不味くなる、というロクでもないことになる。

ローストビーフの方法をそのまま豚肉鶏肉に応用することが出来る。違いは温度で、豚鶏両方ともに72℃かそれよりも少し高い温度に焼き上げればよい。良く聞かれるのだが、ローストビーフは50度程度で良いのに、なぜ豚鶏はそうではないのか?あるいは逆にどうしてローストビーフだけ50℃程度で良いのか?と。牛肉の場合はO-157がたとえ付着していたとしても肉の表面で、これは表面を焼けば死滅してしまう。ローストビーフの焼き上がり肉中温度が50℃だろうが45℃であろうが、ブロック肉の表面は、普通のオーブンで焼けば180℃、低温調理オーブンやスチームコンベクションオーブンでも120℃になっているので、これで安全。豚と鶏肉は寄生虫などの問題があり、これは肉の中に入り込んでいるので、中まで焼かなければダメ、ということなのである。さらに突っ込んで、では、なぜ牛肉だけが中は生でも問題がないのか?となるのだが、本当のところは学術的にも議論があるのだが、どうも、草食動物は大丈夫で、雑食が問題がある、という所にあるらしい。馬、羊、も草食動物で、これも生肉で食べることが出来る。

ミートジャーナル 2001年11号より
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