Q=クオリティ

2013/05/24 1:59 に 松本リサ が投稿
品質を優先するとコストが上がる、と思っている人も多いが、そうでもない。加工品の場合など、品質を上げようと努力をした結果、コストが下がる、要するに利益が出るようになる例が数多くある。鶏の焼鳥の製造をしていて、焼け具合で、生焼けに近かったり、焼き過ぎでジューシーでなくなり硬くなってしまったり、ちょうど良い状態で焼けない状況で、クレームが多く、信用問題になり、きちんと直さないと取引停止の問題に発展しそうになり、さらに考えてみると、焼き過ぎは「かたいぞ!」というクレーム程度ですめばよいのだが、生焼けで食中毒の心配も考えられることがわかったので、何とかしようということになった。

どうやって安定して焼けるかを考え始め、まず焼け具合の状態を調べてみようということになった。このためには、一体どのような状態ならば美味しいのかを調べたら、ジューシーに食べるためには焼き上がりが一番低温、つまりあまり焼かないほうが美味しいことになる。しかし、ちょっと生焼けの方になってしまうと今度は生焼けだというクレームになり、さらに食中毒という恐ろしい事態になるわけだから、それならば、両方を満足させるためにはどうしたら良いのか、美味しさと安全性の両方を求めるためにはどうしたら良いのか、となって、それは焼き上がりの肉の中心温度、ということがわかってきた。それならば、それは何度が良いかとなると、安全性の最低温度は72℃で、これ以上になればよい。そして、これ以上温度が上がるほどジューシーではなくなっていって、90℃を越してしまったら、硬いというクレームになっていくことが、温度測定と試食でわかった。大体これに気がつくまで肉中温度計なんか工場内に無い状態だった、これそのものが最低の状態で製造をしていたことに気がついたのである。

そうすると、72℃以上で、出来るだけこれに近い温度がいちばん良いとなるのだが、さて、工場にある焼き機でこれを実現させるにはどうしたら良いかとなる。焼き具合は、バーナーのパワーとコンベアーのスピードとのバランスになり、両方を安定させればうまくいくことになるのだが、しかし、作業室の温度の状態によっても微妙に変化してしまう。季節によって、暑い夏と冬では違ってしまう。また、海外で生産された冷凍の原材料と、国産の高品質のチルド材料とでも違ってしまう。顧客によって、原材料の品質や重量、刺し混む中身、肉だけのところもあれば、ネギと一緒に刺し込む顧客もある。バーナーのパワーを強くしてコンベアーのスピードを速くする場合と、バーナーを弱くしてスピードを遅くした場合の仕上がり具合も違う。

いろいろやったあげく、最初は強火で表面を固め、肉の中の水分、ジューシーさを閉じこめ、その後弱火にしてふっくらと焼き上げると、仕上がり温度が安定して、ジューシーに、理想的に焼き上がることがわかった。こうすると歩留まりも良くなり、重量も多く仕上がることになる。それではこれを実現するために、焼き機の調整と改善を行ったところ、かなりの試行錯誤のあげく、素晴らしい改善ができた。

この状態を常に保つために、機械の調整を、毎朝行い、定期的な頻度で温度の測定をし、焼くアイテム、グレードと、機械調理の方法をマニュアル化して、製品ごとの変化にも簡単に対応して安定した焼き上がりになるようにできるようにした。このような最新の注意をはらう製造を行うためには、原材料の品質から保管までの管理が重要になることがわかったので、原材料サプライヤーにまで改善の要求を行なった。その結果、安定しただけでなく、品質の良い原材料になった。

品質の良い原材料を工場に運び込むまでの温度管理も重要で、これによって焼き上がりの状態が違ってしまうので、運送を委託しているロジスティクス会社にも安定した温度で運ぶように注文をし、それを確認するために運送車の庫内の温度測定まで行なうようになった。これによって物流での安定性まで確保できるようになった。ロジスティクスは原材料仕入れだけでなく、出来た製品についても全く同じように改善をした。せっかく良い状態で製造した製品を、顧客のところに運ぶ最後のしかも工場外のところで悪くされてしまったのでは元も子もないからである。

これら行なったことは、かなり多岐にわたるが、考えてみたら、これはHACCPそのものであった。改善の途中で温度管理だけでなく衛生管理、サニテーションの徹底によって、バクテリア数値を下げることも出来たし、異物混入クレームも激減させることが出来た。

さて、こういったことを行なってきて、結果的に何が出て来たかというと、美味しさ、安全性といった、ビジネス上最も重要なところが上手く出来るようになったわけだが、コスト上も大幅に改善された。コストダウンにつながったのである。まず、失敗作が無くなった。そして工場の製造が失敗や機械の調整などでストップしなくなった。以前は焼け具合が悪くて、ラインを止めて調整することがしょっちゅうあった。これでは、不良品がたくさん出て捨ててしまうし、第一工場の生産効率が無駄な停止によって落ちてしまっていたからである。ところが多方面の改善によって、ストップしない工場、ノンストップ工場になり、同じ従業員、同じ機械設備で、以前よりも数段生産できるようになったのである。これがコストダウンに大きく貢献をし、美味しくて安全なうえに利益率もアップさせることになったわけである。

以前、工場はちょっちゅう止まることが当たり前だったのが、この改善によって、ノンストップになった。ノンストップになってから振り返ってみると、過去の製造で会社がぎりぎりながら成り立っていたのが嘘のようで、どうして今までこういったことを行なわなかったのかと大反省したわけである。品質を上げたら、利益率が上がるというのは、こういうことなのである。
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