期間限定、数量限定、売り切れあり

2013/05/24 1:01 に 松本リサ が投稿
品切れするとペナルティーになるからとか、許してくれない、等という理由で、産地を偽造したり、混ぜたりする事件がたくさん発覚しているが、生鮮食品やこれを原材料にした加工食品は、生産が天候に左右されるし、相場もあるし、季節によって味も変わるし、採れない時期もあるし、産地も時期によって変わるし、魚などは河豚に代表されるように、捕れる場所とは関係なくあがった港名で価格が良くなったり、常に変化するもので、これを安定的に供給させようということは自然に逆らっていることで、完全に出来るわけが無い。であるから不安定供給を基本としなければならないのに、無理をするから、欠品になり、それを攻めるから苦し紛れにズルをするようになるし、事件に発展してしまうのである。

消費者の感覚としては、生鮮は季節があるのは十分にわかっているし、時期によって味が違うのは当然だし、数量に限度があることも知っている。であるから、品切れになっても、旬が過ぎたからあとは来年ネ、という楽しみにもなる。なのに、品切れをしてはだめだというのは、販売者、あるいはバイヤーがバリヤー(障壁)になっている面があるのではないか?

生鮮を中心とした食品は、期間限定あり、数量限定あり、売り切れありが当たり前である。消費者だって、好きなときに好きなものを食べたいし、もし品切れでも、単純にあきらめて、次はもっと早く注文しようとなるだけだ。なのに、流通がそれを許さない、おかしな話である。これに対して、生産者も声を高らかに「おかしい」というべきである。

ニュージーランドのある大型チーズ工場に視察に行ったとき、視察の最後として、そこで製造しているチーズがずらりと並んでいたので、うれしくって、端から端まで全部食べてみた。さすが乳製品王国で、どれも特徴があり「どうだ!」とばかりに独自の味を主張している。しかしその中に2つだけ、ぼやっとして、どこかの国にあるタイプの実に中途半端ではっきり言って不味いチーズがあるので「すみません、はっきり言って申し訳ないのですが、この二つだけ美味しくないですね」と言ったら。工場の担当者は困った顔をしつつ、なぜか半分ニヤッとして「実はその二つは、日本行きの製品で、日本の方がお二人この工場に来て造っていった味です」ということなのである。

牛乳というのは季節のもので、一年中同じ味のチーズを作ろうと思ったら、最低の時期の最低の原材料に合わせなければならず、一年中同じ品質、味のチーズを製造出来るが、最も不味い味に統一することになる。だから、ニュージーランドでは不味い時期にチーズは作らないで、工場は休みにしてしまう。ワインなどは毎年の気候によって出来が違い、それで価格が大きく変わってくるが、これが面白さなのであり、このスリルとサスペンスを楽しむことが、高級な趣味にもなり、ワインを飲みながらの会話に彩りを添えるのである。

 

「築地倶楽部」は、高品質、限定、旬、といった、美味しいものが欲しい人のための生鮮ファックスオーダー会社で、産地に出向いて気に入ったもの、気があった生産者のもの、名人加工、等と、次第に扱い商品が増え成長してきた、会員制の知る人ぞ知るグルメ倶楽部だ。

毎月のパンフレットの商品リストには「入荷不安定」「稀少品」「食べ納め」「発送日注意」「初物」といった言葉があちこちに入ってくる。こんな断りを見るだけで注文したくなるのは美味しいもの大好きな人々の特性である。

「新モノ」となっていれば、カツオや、サンマ、コハダといった魚や新生姜等の野菜、米、新酒などが出て来る。「品質の良い時期に製造」なんてのは、アキアジの加工品なんてのを想像する。「期間中に産地が変わる場合も」だったら、雪解けとともに北上していく山菜や、秋に入ってから紅葉とともに移動していくキノコ。「カタログ期間途中に終了する場合も」なんて見つけたら、すぐに注文しなけりゃとなる。「天候や収穫状況により、お届け日が変わる場合も」で考えるのは、海のシケを気にしながら、今日は毛ガニがあるかな?といそいそと札幌薄野のいつもの本物海鮮だけしか扱わない居酒屋に行ったことを思い出す、何しろ時化て毛ガニの無い日が半分はあるんだから。「火、木、土、限定出荷」は、隔日に収穫と加工を行っている生産者工場なのかと想像される。「木、金、土、限定出荷」なら、週末の自宅でのご馳走やパーティー需要に集中しての出荷なのだろうか。「豚肉はご希望に応じて、300g単位で加工いたします。ブロック、豚カツ、薄切り、しゃぶしゃぶ等でご指定ください」高品質の豚肉なら、欲しい量だけ、好きなカットで欲しい、ならば多少高くても良いとなる。「名古屋コーチン、東京軍鶏は出荷時期により多少肉質が違います。詳しくはご注文の際におたずねください」これこそ親切、季節による肉質の違いによって料理も違ってくるだろう、それを肉を生産している人が教えてくれるなら、うれしい。「11月中旬より出荷予定」予定、となっているところがすごい、約束できない、どうなっちゃうのかわからない、一応予定で発表、注文してくれてもまだ出なかったらすみません許していただきます、である、胸を張って美味しくなったのを送りたいんだという気持ちがこもっている。大阪名物水ナスの漬物なんてのは、いつ出荷になるのかわからないところがワクワクする。「ご注文はお届け3日前までにお願いします」は、食べる日に合わせて慎重にオーダーしてください、という気持ちたっぷり。「入荷速報」は、突然やって来る美味しい海の幸山の幸がうれしい。「現定数200ケース!」これこそ本命数量限定。

無添加燻製工房・ぐるめくにひろ」は、東京杉並にある高品質のハムソーセージを製造している小さなメーカーで、ここに骨付きベーコンを注文すると「約一ヶ月後」ぐらいに届く、注文が来てから使う豚肉の枝肉を選び、3週間熟成後ベーコンに加工するからである。骨付きだから、枝肉から決めていかなければならないのである。この珠玉のベーコンをオーダーしてから食べるまでは、一ヶ月もの間首を長くしてよだれを垂らし、ワインは何にしようとコソコソ考える時間を過ごすことが出来る。たった一つのベーコンで、1ヶ月も楽しめるなんて!

 

スーパーマーケットの陳列ケースにおいてある商品が無くなると、生鮮品は特に、他の商品を入れて空白場所をうずめる。売り場を有効に活かすのは良いことなのだが、そんな中で、一部の特に限定している、例えば高品質の商品の部分だけは、うめないで「本日売り切れ、またあした」等の札をかけておいたら、その商品の価値は上がるのではないか?大体、閉店間際まで陳列ケースがほぼ一杯で、翌朝行ったらその日の日付のものが一杯、なんていうのは消費者にすれば「おかしい?」となるのは当然なのである。この商品は限定で、決められた数量しか入らないんです、それも季節によっても違うし、日によっても違うんです、ですから「品切れ宣言」を力いっぱいするんです、と言ったらどうか?

銀座のあるデパートのデリカテッセン売り場では、夕刻が近づくにしたがって急速に客が増える。当然欠品がどんどん出て当たり前なのだが、聞いた話では、フロアマネージャーが「欠品禁止」を厳格に言うために、余るのを覚悟で余分に陳列しなければならない。短時間に急増する顧客に合わせてロス無く品切れをしないで売り切るなんてのは出来っこないから、多くを捨ててしまう店も多いようだ。無駄も甚だしい、ああもったいない! 品切れしていいじゃないか!

(写真は、期間も、場所も、数量も限界ありの、フジツボ)


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