ポークハンバーグをどう作り、どう売るか

2013/05/25 16:22 に 松本リサ が投稿
ハンバーグは、低価格のは、豚肉とチキンを主に使ったもの、一般的には、牛肉と豚肉を使ったものの2つのタイプに分けられる。牛肉と豚肉使用では、肉の比率が多いのが高級タイプで、これは食感がいい。低価格タイプでは、植物蛋白などの副材料が多く、食感が肉を食べているというには程遠いものも多い。しかし、ぐちゃっと軟らかいものでも、そういった食感で今まで来ている顧客はいるので、それはそれで大事なマーケットである。

そんな中で、豚肉だけを使ったハンバーグはどうであろうか。コンセプトからいえば、高級タイプで、こだわりを持った高品質豚肉だけを使い、もちろん豚肉比率の多いものである。

儲かる加工肉メーカーの重要な店は、一つはこれからは肉惣菜に力を入れていかなければならない点だが、もう一つは、ミンチを使った製品である。ソーセージが代表的なものだが、特徴の無いソーセージは伸びていない。現在伸びているソーセージは、肉を高品質にとか、特定JASにした物であるとか、香味野菜を入れたもの、といったものである。肉を高品質にしたもので圧倒的にランキングに入っているのは黒豚を使ったものである。

では、このような中で、豚肉のハンバーグを作るためには、例えば、SPFポークを使う、黒豚を使う、スパイシーにする、ハーブを入れる、野菜を入れる、などが出て来る。名前を付ければ「SPFポークハンバーグ」「黒豚ハンバーグ」「黒豚を使ったエスニック風ハンバーグ」「ポークとハーブのハンバーグ」「サラダポークハンバーグ」と言ったところになるだろう。

味や、ミックスするものはいろいろと出て来るが、いちばんの問題は、味のいい豚肉を使った高品質ハンバーグの基本をどうするかである。高品質ハンバーグの特徴は、まず、食感がいいことである。どのような食感がいいかというと、手で握ったオニギリ、の様なものになる。

日本人のハンバーグに対する食感はどうも特殊なようで、タダ軟らかいだけでは、「カマボコ」タイプになってしまう。カマボコのような食感は、カマボコならいいのだが、ハンバーグになると安物になってしまう。

ハンバーグの食感は、最初に噛んだとき、ハンバーグがさくっと崩れる軟らかさが無ければならないのだが、口の中でかみ砕くときは、肉の一粒一粒に肉の粒らしさ、肉粒感が無ければいけないのである。ちょうど御飯の粒のようにである。これがオニギリと同じような感じになる。

オニギリは、素人や、安い道具で握ると、圧力が強すぎて、食感が硬くなってしまう、さくっと噛み崩れないのである。素人が握ると、軟らかくしようと思っても、ただ軟らかく握ると崩れてしまう、それで崩れないように力を入れると、硬くなってしまうのである。オニギリを上手に握る人は、ふわっと握っているのに、崩れない。これを機械でやろうとすると難しいのである。

一流の中華料理店でチャーハンを食べてみてもこれが良くわかる。御飯の一粒一粒が独立していて、お互いにくっついていない、それなのに、ぱらぱらにはないっていないで、適当なバランスをとっている。食べてみると、御飯の一粒一粒の食感がきちんとあるのである。

これをハンバーグでやるためには、一つづつ、名人が手で握ればいいのだが、そんな生産性の悪いことは出来ない。ある程度機械化をしなければならない。

ハンバーグの生産工程で、これをどうしたらいいかを見ていってみると、まず、肉を挽く段階での温度管理になる。肉をミンチ(グラインド)をして食感を出すのに簡単なことは、荒びきにすることである。しかし、荒びきにすると筋が出るという大きなリスクがあるので、ほとんどのハンバーグは3ミリのプレートを使っている。この大きさだと筋や軟骨のリスクがかなり少なくなるのである。3ミリ以下の筋は通って行ってしまうが、歯に当たらない程度なので、クレームが来る率がかなり減るのである。

では、3ミリで食感があるようにするにはどうしたらいいかであるが、重要なのは温度である。出来るだけ低温、というのも一つの言い方であるが、そんな単純なものではない。冷凍原料と、チルド原料では、最も効果のある温度が違う。また、原料の品質、タイプでも違う。例えば部位によっても違ってくる。

さらに、原料ブロックから挽くのに、行きなり3ミリで引く方法もあるが、一度荒びきにしてから、その後3ミリで挽く方法が一般的である。では、最初の荒びきは何ミリにしたらいいかであるが、これも原料と温度の関係で、20ミリがいい場合もあるし、キドニープレートといって、いちばん大きなものがいい場合もある。原料、冷凍か冷蔵か、温度、そしてプレートの組み合わせと挽き方、これらの組み合わせを、それぞれの企業が開発しなければならないのである。

グラインドミートというのは、専門家にいわせれば、良くわかるまでに30年はかかる、というものである。まるで職人の世界だが、現実である。たとえ同じ原料、機器システム、温度でも、そのシステムを別の場所に持っていくと、全く違ってしまうことなどはしょっちゅうである。東京で動いているグラインドミートシステムと全く同じものを東北のある都市に持っていったことがあるが、同じ方法でやったら、予想どおり全く違った品質になってしまった。気候が違うからなのか、人が違うからなのか、機械をある程度使うと違ってきてしまうのか、いくつもの原因が複雑にからんでくるのだろうが、とにかく違ってしまう。同じものを作るために、同じ原料と機械を使っているのに、設置場所が違うために、開発に一カ月もかかることがある。

ミンチにした後は、副材料とのミキシングになるが、これも温度が重要になる。あまり温度が高いと、肉粒が壊れて食感が無くなってしまう。ミキサーで回している時間も重要である。ミンチにした肉と副材料をミックスするのだから、均一に混ざっていることが重要であるが、均一に混ぜるためには、ミキシングの時間を長くする必要がある。ところが、ミキシング時間が長いと、食感が無くなってしまう。完全にミックスできた時点でミキサーを止めればいいのだが、それが何秒ならいいのかを、突き止めなくてはならない。これはレシピによっても違ってくる。野菜など軟らかいものが多いレシピ、水分が多いレシピ、肉の比率が多い場合と少ない場合、それぞれ違ってくる。

ミキサーによっても違ってくる。例えば螺旋状の板でミックスするリボンミキサーと、ボートの櫓のようになった棒でミックスするパドルミキサーではまったく違う。レシピによっても違ってくるし、温度によっても違う。温度は低いほうがいいのだが、低すぎるとミックスしにくくなって、時間がかかり、食感が無くなってしまうこともある。

ミックスの時間は重要である。ミンチにした肉と副材料を均一に混ぜるのだが、そのためには時間をかければよく混ざるに決まっているが、時間をかけ過ぎると練り過ぎて食感が無くなってしまう。何秒で止めたらいちばんいいのかを、レシピ、温度で突き止めなければならない。さらに、ミキサーにどのくらいの原料を入れたらいいのかも重要である。ミキサーの容量ギリギリまで入れてしまうと、ミックスに時間かがかかり、練り過ぎになってしまう。少なくすればいいのだが、少なくすればするほど効率が悪くなってしまう。

副材料を一気に入れたらいいかというとそうではない。食感を出すために、同時に短時間に均一に混ぜるために、一部の副材料をミキシングの途中でいれる方法もある。そのタイミングも突き止めなけれはならない。

整形も重要なポイントだ。プレス式のものでは、どの程度の圧力でプレスするのもポイントで、圧力は出来るだけ弱いほうが軟らかく整形できるが、あまり弱いと形が出来にくくなったり、重要が不安定になったりする。安定して軟らかく整形できる圧力を突き止めなければならない。レオンという包餡機を使っているところが多いが、この機械だと軟らかく仕上がるので、手で整形したのに比較的近いものが出来る。もともと中に餡を入れて外側を皮でくるむ饅頭用の機械を、ハンバーグに使えないだろうかという発想が出た人がいて、やって見たら上手くいったのである。レオンは時間がかかる点があり、これがコストに跳ね返る問題もある。

ハンバーグを開発するためには時間と根気が必要であるが、高品質のポークハンバーグのマーケットはあると思う。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」97/7月号より
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