オーガニックの大型店NY「ホールフード」

2013/05/23 18:32 に 松本リサ が投稿
ニューヨークのセントラルパーク南端、西側のコロンビアサークルに、映画のタイムワーナー社の巨大なツインタワービルが完成した。そして、このこの地下に、世界で初めてのオーガニックフーズを前面に打ち出した巨大スーパーマーケット「ホールフード」が出現した。

オーガニックと自然食品主体の店舗というのは、過去十年ほどの間に増えてきているのだが、小型の店舗が多かった。日本では生鮮とわずかな加工品を扱う小規模ショップが多い。米国では二十年ほど前から高級で体に良い食材を扱う小型スーパーマーケットがじわじわと出現し始めてきていた。チェーン店舗も増えてきていたのだが、大型店はなかった。

オーガニックというのは有機農畜産物や養殖魚などの生鮮とそれを使った加工食品だが、自然食品は天然の食材とそれを使った加工品である。魚で言えば、海で捕ってくるのが自然食材で、養殖魚は、オーガニックの飼料を使って育てたものになる。牛ならば、欧州やオーストラリア、ニュージーランドなどで、自然の牧草だけで育てたのが、グラスフェッドビーフとかパーチャスフェッドビーフと呼ばれている牛肉だ。

オーガニックビーフというのは二種類あり、農薬などの汚染の無い土地を使って、それに自然の養分、例えば牛糞を発酵させたものとか、海藻のカスなど、自然からの有機エキスや飼料肥料を加えて生産したものが一つで、これが欧州とオセアニアにある。この場合、殺虫剤などの薬品も使わずに、天然昆虫や、人手で取り除いた雑草を焼いた灰などで除虫をする。

もう一つのオーガニックビーフは、グレンフェッドである。米国の牛はコーンや麦などの穀物を肥料として与えて肥育し、マーボリング、いわゆる「サシ」を入れて、肉を軟らかくするが、この穀物そのものがオーガニックを使うのである。そのためにかなりのコストになる。

鶏肉で言えば、放し飼いにしたのが自然タイプだが、生産している農場とその回りで農薬などの汚染が無いようにしなければならない。更にオーガニックの餌を使うとオーガニックチキンになるわけである。

穀物、野菜、果物、牛乳、これらを使った加工食品はかなりの物になり、オーガニックだということを認証するシステムも重要なものになりつつある。生産地での審査、検証、監査ということになるし、それらを使った加工食品も対象になる。例えばオーガニックの大豆を使った豆腐ならば、原材料はもちろんだが、加工するための食品機械も、対応している洗剤で洗浄しなければならない。

米国ではオーガニックの認証をえた食品には大文字で「ORGANIC」と表示する。

 

タイムワーナーの正面入口を入るとすぐに下に降りるエスカレーターがあり、これに下り始めた途端、この大型オーガニックスーパーの全貌が視野に広がってくる。エスカレーターの左側に生鮮と加工食品の売り場が広がる。正面には大きくデリカテッセンの十ヶ所以上に分かれたアイランド(島)状のメインフロアがあり、それがそのまま右奥に延びている。右の方には、コーヒー、ティー、チーズ、ジュースがあるのだが、これがただの売り場ではなく、そのままテイクアウトできるのである。例えばコーヒーの売り場に行くとオーガニックコーヒーを、購入したデリカテッセンに加えて買うことが出来る。

そのまま回り込んでいくと、30台近くのレジブロックに流れていく。レジは大きく2つの列に分かれる。一つは十アイテム以下のエクスプレスレーン、もう一つはそれ以上の購入者用のレーンである。イタリアンサラダとパンにオーガニックジュースだけといった客はエクスプレスレーンで早く買うことが出来る。

著者が行ったのは日曜日の昼で、ここで店舗見学をしながら、デリでも買って、昼食も一緒にしてしまおうという時間だったため、大変な混雑だった。両レーンとも五十人以上は並んでいただろう。

レジを出たところ、ちょうどエスカレーターの下の回り一帯の広いエリアに座って食事が出来るコーナーがある。簡単な椅子とテーブルだけでなく、ファミリーレストランレベルの落ち着けるコーナーもあり、家族でランチに来ている人たちでかなりの混雑だ。

ニューヨークはあらゆる人種が住む町なので、食べているデリも実にさまざまで面白い。パスタにサラダのイタリアン、チャーシューに焼きそばのチャイニーズ、ハンバーガーにポテトのアメリカン、そんな中で我々は寿司にクラムチャウダーに、トマトスープに、紅茶などという実に不思議な組み合わせを箸で食べていた。

そして、これらのデリ(総菜弁当)のほとんどがオーガニックか自然食品なのである。

寿司なのだが、ニューヨークに限らず、全世界で寿司が急成長している。特に米国とヨーロッパの大都市が顕著だ。この「ホールフード」ではエスカレーターを降りた所に寿司コーナーがあり、見たかぎりでは十名ほどの日本人スタッフが忙しそうに握りやのり巻きを作っている。

半分はパッケージした一人用セットの売り場で、握りのセット、のり巻きのセット、バラエティーセットなどが陳列され、次々と売れ、忙しく補充されている。半分は小さいながら5人ほどが座れるカウンターになっていて、お好みで握ってくれるのである。後でわかったのだが、この寿司コーナーは、ニューヨークで一番ハイグレードな寿司店がテナントとして入っているのだ。

昼食を食べて落ち着いたので、今度は生鮮と加工食品のエリアに行ってみた。食肉のコーナーは広く長大な対面ケースになっており、ハイグレードな食肉と、味付けやロースト用の紐かけまでした半加工品も充実している。更に牛肉では骨付きのままドライエージングしたロインのブロックもガラス張りの陳列ケースにあった。

ドライエージングというのは、真空パックせず、裸の状態で3週間ほど熟成させたもので、乾燥して歩留まりが悪いためのコストが高くなるのだが、実に美味しくなる。鶏肉だが、鶏肉だけでなく、ターキー、ウズラ、鴨なども充実している。これら鳥肉類は「ポートリー」と総称していて、もちろんオーガニック、あるいは自然飼育のものである。

反対側には魚売り場がある。この二十年ほどの間に、米国では魚が大きく成長してきている。昔は食肉の売り場の片隅にわずかに魚が置かれ、食肉の担当者がついでに魚を扱っていたのだが、今では肉売り場に匹敵する売り場がどこのスーパーにも見られる。それに最近の寿司ブームが加わって拍車がかかっているわけだ。

加工食品もすごい、冷凍食品、ピザ類、パスタ類、シリアル、米、麺、調味料、とにかくありとあらゆるアイテムがオーガニックあるいは自然食品なのである。

こんなマーケットが出現してきている。オーガニックも大型店の時代に入ってきたのである。


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