オーガニックが全く新しい時代に入った

2013/05/25 16:15 に 松本リサ が投稿
米国で、オーガニックの認定は、連邦政府が行うようになる。これはとても大きなステップで、最終の認定基準である。大変な、新しい、究極の進展である。

オーガニックというのは、化学薬品などを一切使わないで農畜産物を作ることだが、「有機」と「オーガニック」の違いというのは大きい。米国においては、有機農畜産物を作っただけではオーガニックとは呼べない。それを、認定期間が認定、認証してから始めて「オーガニック」の表示が出来る。

認定していないものに「オーガニック」の表示を付けると、罰則があり、実際、故意に虚偽の表示をしたところが告訴をされている。ミネソタでは96年12月に、シリアルで、二人の経営者がそれぞれ、罰金12,000ドルと、36,000ドル、コミュニティ奉仕1,000時間と、6〜10カ月の服役が課せられた。また、カルフォルニア州だけで、いままで750回の抜き打ち検査が行われたという。


オーガニックの認定についてだが、今まで米国での認定は、各州の政府と、複数の認定団体が行っている。数字的には、11州が認定制度を行っていて、17州が規制などを行っている。例えば、コロラドで生産しているあるオーガニックビーフの認定では、牧場そのものはコロラド州政府、屠畜場はOCIAという認定団体、その牛肉をビーフジャーキーなどに加工している工場は、QAIという認定団体がそれぞれ認定をしている。

米国でのオーガニックの認定はすべてこのような状況なのだが、これに対して消費者から、あるいはスーパーマーケットやフードサービスなどからは、認定機関によって基準がそれぞれ違うことや、認識も違うということで、混乱をしており、何とかならないかという声が前々から出ていた。オーガニックの流れは一時的なブームではなく、人間が安全な食べ物を食べるための、根本的な要求なのだから、これをわかりやすくすべての人が認識できるようにするのは、国全体、世界全体で重要なことになるのである。

そこで、米国連邦政府は、この認定を州ではなく、国のトップレベル、連邦政府の認定に大きく格上げすることにしたのである。具体的には、この認定基準の文書は作成が完了をしており、これを10月1日に発表することになっている。この発表というのは、最終的に決まったのを発表するのではなく、広く世間の意見を聞くために発表する。そして、各界からコメントを受け付け、適切な修正して、最終的には98年の2〜3月に発効になる予定だという。10月1日の発表はインタネット上で行い、アドレスは、http://www.usda gov/ams.である。


こうなると、今まで認定機関ごとに決まっていた基準が、すべて連邦政府によって統一され、その基準に沿って、オーガニックの認定が連邦政府によって行われ、混乱が無くなることになる。では、今までの認定機関とどういう関係になるかだが、連邦政府は、今までの州レベル、あるいは民間の認定機関を認定するようになる。つまり、連邦政府が、認定を実行する、州なり民間の認定機関を認定し、その認定機関が、農場、工場、その他を認定するようになる。認定機関が認定の調査に行くときには、連邦政府の担当者が一緒についていき、その認定担当者が認定をするのが、連邦政府の基準に合っているかを検証することも行われるようだ。


オーガニックの認定対象は、農畜産物で、野菜、穀物、家畜生産品になり、家畜生産品では、乳製品、卵、牛肉、仔牛肉、豚肉、家禽肉、羊肉、洋毛、魚、やぎ肉、はちみつ、その他になっている。魚は、養殖あるいはそれに近いものになるようだ、その他は、カエルのような特殊なもので、これも人間が人工的に生産をするものに限られるようだ。森の中で猟師がとってきた、鹿だとかキジだのという、いわゆるゲームミートは、もともとオーガニックの認定の対象外になっている。あくまでも人間が生産したものに限ることになる。


オーガニックの認定には、4つの原則がある、

1.原料、副材料などはすべて認定されたもの。

例えば、オーガニックビーフならば、牧草そのものがオーガニックでなければならない。ということは土地そのものがオーガニックの認定を受けていなければならない。実際、オーガニックの最も根本的な認定は牧場の土から始まる。そして、その牛が穀物を食べさせるグレンフェッドビーフならば、その穀物、麦、コーンなど、全てがオーガニックでなければならない。

2.工場については、従来の製品と工場内でオーガニック製品だけを分離できるようにする。

工場でオーガニック製品を作る際、オーガニックだけの工場にする必要はない、ということである。例えば工場に3つの生産ラインがあって、その一つでオーガニック製品を作り、他の2ラインでは一般の製品を作ってもいい、ということである。このような場合、オーガニックの生産ラインには「ただいまオーガニック製品製造中」といった表示を行う。区切りも明確に行う。

3.薬剤からも工場は守らなければならない。

例えば、機械の洗浄する場合にも、洗剤を天然のものを使うとか、残留が全く無いようにし、それを証明することが必要になる。あるオーガニック野菜工場では、工場のラインの一つをオーガニックにしているが、そのラインだけは機械で洗浄するのではなく、人間が手で時間をかけて洗浄をしている。「オーガニックラインの清浄は大変だ」ということである。

4.製品の生産がどのようにされていたのか、はっきりとルーツをたどれなければならない、監査できなければならない。

HACCPと同じように、履歴、記録をたどれるようにしておかなければならない。

このような原則をもとに、オーガニックの認定を受けたいものは、書類を作成し、それをオーガニックの検査官に出す。その後、検査官が実証と検査に立ち入り、それを書面レポートで委員会に提出する。委員会は、最初に出された書類どおりになっているか、検査官のレポートと共に検討をし、OKであれば認定をする。この認定の際には「更に良くするためにはどうしたらいいか」の意見も一緒に出すようになっている。

複数の認定機関の関与による混乱は、これからは無くなっていく。前述したオーガニックビーフの例では、牧場と、屠畜場と、加工工場、それぞれ認定機関が違っているが、今後もこういったことはいくらでも出て来る。しかし、連邦政府が認定をするようになると、いままでは牧場から屠畜場に認定を受け渡す時、屠畜場から加工工場に受け渡すとき、それぞれ基準がバラバラで上手く行かなかったのだが、連邦政府が入ると、この受け渡しを連邦政府が管理するようになるので、混乱もなくなるということである。


さて、日本の状況はどうかというと、オーガニックの認定はほんのわずかずつ行なわれ始めているところである。認定機関も、昨年あたり発足した機関に加えて、外食企業が共同して独自の認定機関を作ろうという動きが出て来ていたり、勉強を始めだしている最中である。オーガニックに関するセミナーも盛んに行なわれ始めていて、盛況のところが多い。オーガニックの認識が、これから次第に伝わっていくのではないか、というところだろう。

まだまだこれからで、「有機農産物」は、ブームだから、トレンドだから、売れているから、乗り遅れないように、といったところで、製品の普及は急速になってきているが、根本的なオーガニックのシステムが一緒に出来ていないと、ティラミス、ナタデココ、モツ鍋などと同じことになってしまう。

このような中で、米国連邦政府がオーガニックの認定を行いだすということは、この流れが、カナダ、メキシコなど、米国の隣国や、他の国に急速に影響をし始めるということになる。国レベルでの認定になれば、それだけ安心感が強まり、日本のマーケットが米国産オーガニック製品の輸入が安心して出来るようになることにもなる。


食品の安全性、品質については、HACCPが米国とカナダで大きな進歩をしており、HACCPが食品製造の基本になっているが、日本ではまだまだこれからである。これに加えて今度はオーガニック認定で米国が大きなステップアップを来年することになる。日本はいま有機食品ブームで、次から次へと新製品が出ているが、根本となるオーガニックの信頼性はまだまだこれからである。「有機」「オーガニック」とネーミングをした製品を出せば売れる状況だが、製品にばかり走っていていいのだろうか?健全なオーガニックの普及の第一歩は、まず「オーガニック」とは何か、これからの時代におけるオーガニックを、出来るだけ多くの人が理解をし、議論をすることだろう。そこからオーガニックの健全な第一歩が始まる。


牛肉でオーガニックの認定を受けていて日本に入っているのは、コロラドのコールマンナチュラルビーフだ。コールマンビーフは米国内でも最も老舗のオーガニックビーフで、連邦政府の認定第一号を取れるだろうといわれている。米国内のフードサービスやナチュラル食品の流通業で販売されている。日本には牛肉が自由化になった直後ぐらいから入り始めていて、オーナーレストランなどで使われている。オーガニックのものと、ナチュラルな物の2種類あり、もちろん認定されているオーガニックの人気があるが、価格的にその下のランクであるナチュラルを使っているところもある。レストラン以外では、夕食宅配のヨシケイにも流れており、切り落としで使われている。

ニュージーランドでは、バイオダイナミックスという組織がオーガニック製品の普及、認定をしている。牛肉では、牧草だけを食べさせた牛が一般的である、オーガニックグラスフェッドビーフということになる。穀物を使っていないので、価格も安い。この土地には、魚カス、ハーブカス、海草カス、雌牛の角と糞を半年間発酵させた「プロダクト500」と呼ばれる有機肥料などを、広大な牧場にまいて土地を肥沃にしてよい牧草を作っている。日本にはこの牛肉を使って現地工場でハンバーグを作り、輸入されている。このオーガニックビーフのストリップロインなど、ロイン系の部位はニュージーランド国内で消費される。以前日本にも入れようという動きがあったのだが、大きさなどの規格が不揃いだということで、うまく行かなかった。味はとてもいいのだが、残念なことである。

豚肉では、いまのところオーガニックの認定を受けたのが日本に入ってきたという話は聞いていない。鶏肉では、一部が日本の新しい機関によって認定されているが、まだ本格的ではない。鶏肉では鶏舎で育てるのではなく、地飼いが盛んになってきており、有機飼育の鶏肉ということになる。赤鶏系が人気である。オーナーレストランではこだわりのある地鶏を扱うのは自然な流れである。

モスフードサービスは「ミネラル野菜」と呼ぶトマト、レタス、オニオン、ピーマン、キャベツ、サニーレタス、レモンなどの有機野菜を全面導入したが、同時にパティについてもナチュラルビーフにする。これは、タスマニアの自然牧草だけで育った牛を使ったパティである。

オーストラリア、ニュージーランドでは、ナチュラルな農畜産が普通のことで、化学薬品や除草剤を使うのは嫌う。一般に生産されているのはナチュラルなもので、そのうえ更に有機肥料を使った農畜産物があり、更にそのうえに、認定されたオーガニックがある。次第に価格は高くなり、購入量などの契約も厳しくなるから、ある程度低価格で日本依導入するなら、一般的なナチュラルのものを使えばいい。


今回の内容は、97.7.16日に、アメリカ農産物貿易事務所(ATO)と、ジェトロが開催した「アメリカ有機農産物セミナー」で、連邦政府のオーガニック認定についての重大な発表があったのを機会に、同セミナーの新情報も取り入れて構成した。今後オーガニックの新しい流れは、著者のインターネットホームページでも追いかけていく。

柴田書店「月刊食堂」97/9月号より
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