オーガニックビーフの不思議な生産

2013/05/25 7:19 に 松本リサ が投稿
オーガニックブームだが、フードサービスや、小売店側で、有機農産物の生産者と直接会い、商談、物流の話をすることが多くなってきた。これは直接取引になり、流通の簡素化と、価格を低く出来ることから、とてもいいことである。オーガニック、有機の場合は、自分の考え方と技術をしっかりともってやっている生産者がほとんどなので、商談も面白いものだろうと思う。そのようなやり取りの中で、著者は5年ほど前に通っていたニュージーランドのオーガニックビーフ生産者の話をすると、日本では全く行なわれていない方法があるので、とても興味をもって聞いてもらえる。どのようにニュージーランドのオーガニックビーフは生産しているのかを紹介する。


オーガニックとは「有機」で,牛肉や羊を自然の状態で飼育する「有機飼育」のことである。自然に育てるということは,飼料も自然のものでなければならないのだが,その中でも「発酵」と「虫」をニュージーランドのオーガニックファームは,うまく便っている。


牛の角(ツノ)と糞(フン)


牛のフンは,有機農法にいいことは,だれでも知っている。生フンを売って得る利益は,米国のフィードロットでも重要である。ニュージーランドのオーガニックファームは,牛のツノと牛のフンを発酵させて便っている。牛のツノは「宇宙や月からのパワーが集まって蓄積したものなので,これを利用するとオーガニックのパワーになる」というのである。そして,このツノは「メスのものでなければならない」のである。このツノと牛フンを土の中に埋め込んだタンク(穴)の中で発酵させたものを牧場に散布すると「牧草の害虫に効くし,雑草の除草にもなる」という。つまり,「メス牛のツノとメス牛のフンを土の中で発酵させたものを牧場に散布する」のである。

ニュージーランドのオーガニックファームでは,魚のカスを発酵させたもの,海草を発酵させたもの,それに,ハーブ(香草や葉)を発酵させたものを液状にし,ミックスさせて散布するが,これ以外にこの「ツノとフン」も便うのである。

さらに不思議なことは、この、ツノとフンの液は、春と秋の2回、ヘリコプターで散布するのだが,散布する時は「満月が遇ぎてから」がいいのだそうである。

雄のものは、効かないそうである。実際に試したそうだ。なぜ雌のものだけを集めることが出来るかは、種付けのために、数十頭の雌と、一頭の雄を、一つの柵の中に入れているので、ここで取れる糞は、大部分が雌のものになるのである。

「ツノとフン」のリキッドは、自分の牧場内で作る場合もあるし、メーカーがあって「プロダクト500」という製品名で販売もしている。「プロダクト500」はドラム缶入りで、牧場の隅にからのドラム缶が置いてあった。

この技術は、1920年ごろに、あるドイツ人がやって来て教えてくれたという。そして、ニュージーランドのオーガニックファームでは、皆この方法でやっているのである。


除草のための虫


雑草を除くために,化学農法では,除草剤を便う。しかし,ケミカルの除草剤をl度使うと次の年にはさらに多くの除草剤を使うことになる,と聞いている。ニューシーランドのオーガニックファームでは,このことがいやだし,土地や川,そして海までも汚すことがいやなので,オーガニックを始めた人がほとんどである。

ニュージーランドの雑草は,トゲがあり,サボテンみたいにさわると痛い。強い雑草である。これを除草するために「虫が居る」。虫が居て,この虫が雑草の種を食べて,雑草の繁殖を止めるのである。

この虫について、著者とファーマーとの会話は以下のとおりである。

「その虫はどんな虫ですか?」→答「白くて,長さ2mmくらいの小さいカブト虫みたいなもの]「この虫は,飛ぶんですか?」→答[飛ぶのかもしれないが,よくわからない」「この虫は,昔から居たんですか?それとも新しいものですが?」→答「昔は居なかった。ニュージーランド産ではない。しかし、いつ頃からか居着いて,オーガニックに役立っている」「ニュージーランドじゅうに居るのですか?」→答「ニュージーランドじゅうに居る」「一年中いるのですか?」→答「1〜2月の間だけ出てくる」「その虫は誰かがニュージーランドに持ち込んだのですが?それとも自然に出て来たのですか?」→答「どこから来たのかわからない。持ち込んだ人がいるかどうかもわからない」「その虫は,ケミカル農法をやっている牧場にもいるのですか?」→答「わからない。しかし,虫は薬が嫌いだから,多分,除草剤を使っている牧場にはいないと思う。でも,わからない」「その虫は,増えてきているのですか?」→答「最近増えてきている,オーガニック農法を進めれば進めるほど増えてくるみたいだ]「その虫は,他に悪い影響を与えていないのですか?」→答「悪くない。いい事ばかりだ。この虫が増えると私はいつも休みでいい」(これはジョーク)「この虫のことはいつからわかったのですか?」→答「数年前から効果がわかって、効果が出てきた。


雑草は、雑草を制す


ニュージーランドにあるサボテンのような雑草は、如何にこれを効率的,効果的に除去するかでいろいろなことが行われているようだ。一番早い方法は手でむしることである。これが一番自然で化学的ではない。しかし,500万坪もある牧場を2〜3人くらいで管理しているのだからとてもできるものではない。

ここで,また,不思議な除草方法がある。それは、この雑草を燃やして,この灰を蒔くと除草効果があるというのである。「悪が悪を制す」で「雑草の灰は雑草を制す」となる。このようなことは,日本で行われているのだろうか?


フンの拡散と土中への注入


牧場内は,牛のフンがそのままであるが,時間が経つとそのフンが栄養となり,牧草が生える。よく見ると牧草は良く生えているところと、そうでないところがあり、ムラがある。これは、牛のフンが落ちたところの牧草は、早く豊かに成長するが、そうでないところは成長が遅い。それだけフンの効果があるわけである。このフンを牧場内に平均に拡散させればいいのだが、これために素朴な方法が取られている。

それは、大きな網のようにっくった鎖、ちょうど魚をとる網を粗く、大きく鎖で作ったようなものだが、これをトレーラーで引っ張るのである。重い鎖の網をズルズルと引っ張り回すことで、牛フンを拡散するという原始的な方法である。雨の日に牛フンが湿っている時にこれをやる。

さて、ここでまた虫が出てくるのだが、生フンの中には、虫がいて、この虫が土中に牛フンの栄養を深く入れているそうだ。この虫は、フンの中から、土中に穴を開けてモグラのように土中に垂直にもぐる。このことによって、フンの栄養を土中深く注入することになるのだそうだ。


このころ、ニュージーランドで考えたことは、化学の力で自然を押し付けると健康や環境に悪いものがどんどん出てくる。これをさらに化学的に押さえ込もうとすると、さらに悪の力がパワーアップする。しかし、自然のままの方法を続けていくと、自然そのものが問題を解決し始めてくれる、というものだった。

総合食品「フードライフ」97/12月号より
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