N=ネーミング

2013/05/24 1:56 に 松本リサ が投稿
商品名の付け方で、売れたり売れなかったりする。大分以前のことだが、手羽先を使った製品を開発するとき、もっと売るための問題点を探っていったら、あの先の部分を消費者は邪魔にしている、ということがわかってきた。要するに、食べるところなどほとんど無いので、結局邪魔になる、何であんなものまで重さに入れられて買わなければならないんだ、ということなのである。そこで、それならば先の部分をカットをして、残った部分だけを売ればいい、単価はその分上げても何とかなるのではないか?というところから商品開発が始まった。要するに「手羽先チップ」で、今ではヒット商品で売れているのだが、昔はそうではなかった。

さて、残った部分をそのまま販売してもいいのだが、この部分は縦に2つに分割することが出来、そうすると手でつまんで食べることが出来る、ちょうどスナック感覚の食べ物になるそうだということになった。分割したものにシーズニングを適当にかけて焼くと実に美味い、特に小さい部分の方に味がある。

そこで今度は、この小さくなった手羽先を何と呼ぼうか、ということになった。この頃、豚のスペアリブが流行ってきていたので、チキンの似たようなものだから「チキンスペアリブ」という案が出た。ところが、この製品を開発しているところに出入りしていたある食品関係の大学教授が「鶏肉にスペアリブという部位など無い」などと動脈硬化した頭で反対したので、著者は「うるさい、売れればいいんだ、黙らせておけ」と言い捨てて強行した。反対されるとひねくれ者は意地になる。結果、大ヒット商品となったわけである。

この雑誌に以前書いたことがあるが、大分前のことなので、もう一度、焼鳥のネーミングについて書く。関西のあるスーパーマーケットで、鶏肉を串に刺して「焼鳥用」として販売をしていた商品がある、どこにでもある商品だ。ここであるとき商品開発の企画をいろいろと検討していた。その時のコンセプトは、売れて儲かる新製品、ということだった。これは当たり前のコンセプトというかもしれないが、新製品というのは、もしかすると売れるかもしれないが、最初から突然売れるものはごくわずか、ということもあるので、最初から「売れて儲かる」などというのはずいぶんと欲張った考え方なのである。

そこで、イージーな考え方をして、今、売れて儲かっている商品をリストアップして、それらを更に売る方法はないか、を考えたらどうか?ということになった。そして、売れているものをリストアップした中に、焼鳥用の串刺しがあったわけである。鶏肉をトレイパックをして販売すると、百グラムいくらの価格になるが、串に刺した商品にすると、一本いくら、ということになって、価格の付け方が全然違い、利益が取れるのである。そこで、これをもっともっと売ることが出来れば、売り上げと利益が簡単に高くなる、というイージーでずるい考え方である。しかし、要するに売れて儲かる商品を作れればそれがいちばんいいのだ。物をたくさん売るための基本のひとつは「今、売れているものを、もっと売る」事である。

焼鳥用の串刺しをもっと売るためのアイデアはいろいろと出て来た。刺す部位を増やそう、内蔵のアイテムを追加しよう、パッケージの本数を増やしてみたら、タレやシーズニングを付けたらどうか、ラベルを豪華にしたらどうか、鉄砲串を追加したり、トレイを換えてみたらどうか、大きな串、小さな串を作ったらどうか、といった多くの意見が出された。そんな中で、「今販売している商品は、顧客は一体どうやって食べているのだろうか?」という素朴な疑問があった。この意見にはびっくりするというよりも、そんなの当たり前ダロー、焼鳥に決まっているダロー、という反応が出たのだが、しかし、本当にそうなのダローか?ということで、とにかく調べてみることになった。

店のパート、アルバイト、その友人、事務系の社員、その他、聞ける人を見つけて、タダの調査費の範囲で調べてみたところ、とんでもないことがわかったのである。焼鳥ではなく、串揚げ(串カツ)で食べている人が続々と出て来たのである。関西では串カツが居酒屋の売れ筋目ニューで、これをおかずにするところも多いのだ。焼鳥串刺しを買って、衣を付けて、それを上げて串カツにしていたのである。意外な事実にびっくりして、これを商品開発のコンセプトにしようということになった。

串カツならば、衣も一緒にするなり、いっそのこと衣を付けた商品にしたらどうか?でも、それだと衣がドリップで湿ってしまって、見た目が悪くなるし、第一そうなっては美味しくない、では、パン粉の小袋を入れたらどうかとなっても、小袋に入れたパン粉の適当なものが無い、特注するほどの量でもない、等といろいろやっていたので、「とりあえず、名前だけを変えてみたらどうか?」というアイデアを出した。現在販売している商品はそのままで、商品名だけを変えてみようということである。そこで「焼鳥・串カツ用」とラベルに入れるネーミングだけを変えて、恐る恐る売ってきたところ、直ぐに反応が出た、何と、それまでの売り上げの3倍にもなってしまったのである。

なぜそうなったのか?これは、それまで焼鳥とばかり考えていた顧客が、串カツにも出来るんだ、ということに気が付いた、ネーミングによってその潜在ニーズを発掘した、ということになる。串に刺した鶏肉を見て、串カツにも出来るんだ、ということに気がつかせたところ、購入する顧客が自然に増えた、ということになるのである。

このような例はたくさんある、「豚肉肩肉角切り」を「豚赤身角切り(肩肉)」にしただけで、販売量が2割増えたこともある。この場合は「赤身」という名前がヘルシーニーズに効いた、ということになるだろう。

失敗例だが、粗びきにしたミンチを親指大の形に整形した製品、まあ、親指型の弁当用ミニハンバーグ、といったところで、食べれば美味しく、調理も簡単で、弁当用にちょうどよいのだが、このネーミングに、誰が何をどう考えたのか、どうして誰もチェックした無かったのか不明だが、何と「肉棒」というネーミングにして販売してしまったのである。あまりにもびっくりして、誰もそのことを恥ずかしくてみっともなくて言わないまま(多分そうダロー)、ラベルまで付けて、販売をしているところに、著者が行ったわけである。こんなネーミングで売れるか?と聞いたところ、そういえば変な顔をしているお客様がいる、そして売れない、と言っていた。当たり前ダロー、店の品位まで疑われる!これが何と、店舗での商品ではなく、食肉加工メーカーの製品だったのである。指摘して帰ったのだが、その後どうなったのだろうか?

ネーミングは、コストに関係なく、売れる売れないを左右するのである。
Comments