銘柄豚

2013/05/24 18:30 に 松本リサ が投稿   [ 2013/05/24 18:31 に更新しました ]
著者は、食肉を中心とした食品のコンサルタントをしている。クライアントには、スーパーマーケット、食品メーカーなどがあり、どのような商品が売れるか、売れるようにするにはどうしたらいいか、どのようなものを仕入れて、どうかこうしたらいいのか。といったことをいつも行っている。最終的には、黙っておけば売れる商品を、開発、発見、製造するのがもっとも手っ取り早い方向なのだが、これを行うのが、マーケティングである。
商品が売れるということは、消費者のニーズにあっていることになる。この「ニーズ」ということばが問題で、一般的に歯「消費者が求めていること」となるのだが、それだけではない。この裏に隠れているのは「潜在的に求めていること」がある。潜在的、というのは、ほしいと感じているが、自分ではことばに出して表現できないこと、ということである。

ニーズというのは、たとえば、メーカーがある商品を作ったとする。メーカーとしては「売れるはず」と思って作っているのだが、実際には売り出すまでわからない。売り場に並べて、顧客が「こういった商品がほしかったのよ、もっと早く作ってくれればよかったのに」となれば、その商品は、ニーズにあっていたことになる。しかし、このようになることは実際にはあまり多くなく、売る側の「勝手な」努力が実らないことが多い。

このような背景から、マーケティングというのは、顧客の動向、傾向から売れるものを探っていく、という地味なものになる。このようなことを踏まえながら、銘柄豚について、これからの豚肉の動向、なぜ銘柄豚になってきているのか、実際に、スーパーマーケットの側では、どのように考え、行動しているのか、銘柄豚を作る、販売するにあたっての問題点や方法、などについて述べてみる。


1 これからの豚肉の方向
特別なこだわりをもって生産していない、いわゆる「レギュラーポーク」は、次第に売れなくなってきている。理由はいくつかあるが、まず、牛肉の自由化以降、牛肉の価格が下がり、海外からも品質のいいものが増えてきており、東日本では特に高級な肉とされていた牛肉が、手軽に食べられるようになってきたからである。94、95年あたりは、「牛肉に押される豚肉」という傾向が全国的になっていた。

輸入牛肉に押されて出してからしばらくして、スーパーマーケットでは新しい問題が出てきた。それは、ディスカウントのミートストアと、低価格競争である。低価格で売る店が増え、大手スーパーも、牛肉の安売りで顧客を集める作戦を皆がやり始めたところ、中小スーパーもこの影響をもろに受けた。そこで中小スーパーがまずやり始めたのは、国産牛肉の強化と、豚肉の最構築であった。

国産牛肉は、価格はある程度高くても、「国産」という「安心感」で、根強い人気はあった。そこで、輸入牛肉での「集客」と、「国産牛肉」での「信用」「安心感」「利益」「売り上げ額」という戦略が出てきたのである。そして、豚肉は、国産牛肉と同じ考え方で「品質」「こだわり」「安心感」「売り上げ」「利益」となったのである。

豚肉の仕入れについては、レギュラーポークが相場と、精肉にしたときの歩留まりの組み合わせで決めていたのだが、銘柄ポークになると、相場連動プラスいくら、という価格も残ってはいたが、生産費を積み上げ計算をして、年間の価格を決め、市場価格には左右されない形も多くなってきた。

相場に左右されないということは、商品相場にメリット、デメリットがなくなり、まじめに豚肉の生産に取り組んでいる生産者にとっては、落ち着いて仕事ができることになる。一方、小売り側としては、年間同価格で販売でき、面倒な価格操作もしなくていいし、利益も安定して取れることになる。

スーパー側にとっては、牛肉、豚肉、鶏肉の3つの畜種について、高品質でこだわりをもったものと、輸入も含めた低価格商品の2つを併売することで、売り上げと利益を安定してとれるようにしてきたのである。

当初この戦略は中小スーパー、食品スーパーが行ってきたのであるが、すぐに大手スーパーも追従し、すべてのスーパー、小売店のマーチャンダイジングになってきたのである。


このようになってくると、今度は「自分の店だけ」の、特徴のある銘柄肉を探し出すことが重要になってきた。日本の食肉の業界だと、小売り業界、卸売り業界、メーカー業界、そして生産者業界と、各業界には、それぞれのグループ、まとまり、集いの場所はあるのだが、それらを横につなぐ場所はない。小売店側が、多くの生産者たちの情報を得、その中から自社にあった生産者を捜す、という場所はないのである。このような状況で、食肉の卸売り会社が仲立ちになって、次第にスーパー側に銘柄豚がそろい出してきている、というのが今の現状である。


2 銘柄と、安全性に取り組んでいる、あるスーパーの歴史事例
「こだわり」の豚肉と同時に、「安全の豚肉」ニーズがあり、これがSPFポークである。銘柄豚に代表されるのが黒豚であるが、安全ニーズ対応がSPFポークになるわけだ。[銘柄」と「安全性」はまったく別のものなのだが、消費者としては一緒に考えたいという欲望がある。高品質と安全を一緒にほしいわけだ。そこで出てきている新しいものが、銘柄豚とSPFポークとを一緒にしたものである。

これを説明するのに、いい事例があるので、紹介する。東京にある、高品質のものを、少し高めのものもあるが、ある程度「値頃」で販売するスーパーである。「高品質食品スーパーマーケット」といったところである。

このスーパーでは、もともと黒豚を長く扱っていた。しかし、仕入れ会社の経営者の代が変わったり、社会の経済状況が変わってきたのと平行して、肉の品質がかわってきてしまった。具体的には、品質のばらつきが目立つようになったり、どう見ても黒豚でないのが混じってきたりすることが多くなり、注意してもなかなか直らなくなってきたので、思い切って大きな変革をすることを考えるようになってきた。そんなころ、顧客の安全指向が高まってきていたので、SPFポークを検討することになった


ここで出てきた最初の問題は、SPFポークは「安全性」ニーズだから、黒豚という高品質を求めてきている自店の顧客に対してはあわないのではないか?というものであった。この意見があることはあったのだが、改革を優先するために、SPFポークを全面的に導入することになった。SPFポークは国産のものである。

独自のパンフレットを作り、シールを作り、全社的に販売促進活動をしたせいどうかはわからないが、問題もなく、混乱せずに移行した。そして、その後はそれまで扱っていた黒豚に対する顧客の要望がどの程度出てくるか、という点に集中して店の現場での顧客の意見収集をやっていた。


黒豚に対する要望は、人気のある店長の店から出てきていた。人気のある店長には、顧客は話しやすいからである。こういった店長のいる店は、よく売れているのと同時に、顧客の意見、クレームもよく入る。調査をするには絶好の店だ。

顧客の要望は「どうして黒豚を止めてしまったの?おいしかったのに」である。この声が、いつまで立ってもぽつぽつと出てくるので、次のステップで鹿児島の黒豚を導入することにした。

黒豚の復活なのであるが、元の業者のものにするのではない。新しく話が出てきたのは、黒豚の生産者から直接仕入れる。流通は宅配便で直接店に運ぶ、仕入れるのは、ロースと肩ロース、ひれの3部位だけ、というものである。

豚でいつも問題になるのは、小売りをすると、どうしてもロース系ばかり売れて、部位のバランスがとれないことである。一般的なスーパーの販売方法は、セットプラスロース系をどれくらい、というものである。

ロースばかりの豚はできないから、供給者側としては、他の分を回すなどして何とかしなければならない。これを解決するには、ベーコンやソーセージなど、売れる加工品を作って対応するなどの手があるのだが、これができるところはあまりない。

ところが、この鹿児島の黒豚生産者は、高品質のベーコンを作るルートなどをもっているので、ロース系だけを出荷しても問題はない。それに、そんなに物量の必要なスーパーではないから、問題がない。

このようなことで、今度はSPFポークが8割、黒豚が2割、といった割合での豚肉売り場になった。黒豚のニーズに対応できたので、落ち着いたことは落ち着いたのだが、単なる一般的なSPFポークがメインということで、普通のスーパーよりもこだわりをもっている、というプライドがこの店にはあるので、釈然としないままではあった。

そんなところに、このSPFポークを納入しているところから、今のSPFポークを、銘柄豚にできる、という話が出てきた。実はこの納入側は住商飼料畜産で、銘柄肉としては、「地養鳥」と、この豚肉版ともいう「地養豚」を持っている。この地養豚を使ってSPFポークができるようになったというのだ。さっそく試食をしてみて味を確かめ、準備ができてからすぐに、ただのSPFポークを「SPFポーク地養豚版」に変えた。

ここに至って、初めて銘柄豚のSPFポーク、つまり、高品質と、安全性を一緒にした豚肉売り場を作ることができたのである。


さて、店を良くしていくには、さらなる開発、ステップに進むことである。次の命題も、前々からもやもやと考えていたことである。それは、黒豚の血統率、である。

96年ごろから、銘柄肉が目立ち始めたのと並行して、地鶏や黒豚といった「表示」の背景が出てきた。地鶏の定義であるとか、黒豚では血統率の問題である。生産者の肩はご存じの通り、黒豚というのは血統が高いほど安定性にかけ、もちろんコストもかかってくる。第一、黒豚100%のものが、そんなに出てくるわけはない。安定性とコストを考えて、混血にすれば、黒豚の普及に貢献する、という考え方もある。

正しいと思う。しかし、顧客といつも直接話をしているスーパーの販売担当者としては、お客様から黒豚の血統のことを「新聞で読んだけど、お宅のはどうなの?」と聞かれるスーパーの販売担当者としては、困ったものである。

そんなときに、黒豚100%の、SPFポークがある、というびっくりする話が飛び込んできた。といっても、週に6頭程度まで、という限定付きである。しかし、この量ならば、このスーパーにとってみればかえって助かる量で、適当な量である。売価もそんなに目玉が飛び出るようなものにはならない。もちろんセットすべてをとるのは当たり前だが、ひれ、ロースで、400から460円程度、バラならば200円台で売れる。

以上のような歴史で、このスーパーでは、銘柄豚のSPFポークを豚肉全体の60%程度、鹿児島から直送のロース系だけの黒豚と、セットでとる100%黒豚のSPFポークの2つの黒豚で20%、そして、ニーズによって少し残している一般の豚肉を20%程度、といった売り上げバランスをとって販売している。

この次はどうするか、であるが、銘柄豚を使った独自の加工品がテーマとして出ている。一般の加工品ではおもしろくないし、店独自のものにならない。必要なのは、いま販売している豚肉そのもので作った、おいしい、ハム、ソーセージ、ベーコンである。これができると、いい豚肉はロース系ばかり売れて困る、という問題も解決してしまう。

腕や腿など、常に余ってしまう部位を使って、売れる加工品ができたら、部位のバランス問題が解決するし、加工という付加価値によって利益にも反映してくる。生産者にとっても全体の量が増える、というメリットがある。


3 問題点、解決策、アイデア
以上の点から、銘柄豚には、いくつかのキーワードが出てくる。


セット対策
一頭の部位のバランスをうまくとるための工夫が必要になる。豚肉というのは、どうしてもロース系ばかり売れてしまうから、腕、腿部位を何とかしないと利益にまで影響をしてしまう。これを解決するには、店での商品作り、カッティングを工夫する方法がまず出てくるが、最近の小売店の技術は、ますますレベルが下がってきていて、中には枝肉を見たことのない担当者までいる状態である。

昔は枝肉を仕入れて、工夫をして、一頭の肉をすべてうまく売ることを工夫したのだが、今では期待できない。それが、「セットプラスロース系何部位」という発注、あるいは契約になって出てくるのである。

多くのスーパーではこの現場技術、人の不足の対策として、アウトパックという方法をとってきている。スライスしたり切り身にカッティングした後、指定のトレーに入れ、ラベルまで貼ったパックを、工場で一括して作り、店舗に配送する。これによって、カッティング技術を集中すると同時に、この部分をアウトソーシング(外部発注)して、コスト対応もしているのである。

今後銘柄豚を販促するにあたって、アウトパックにどう対応するかまで考えておくと、売り込みのパワーになることもある。売り込み先のスーパーがアウトパック業者をもっている場合には、そこへのの納入に応じればいい。これがない場合、アウトパックが出来るところと組みになってスーパーに売り込みができる体制があるといいかもしれない。

バランス崩れに対応するには、加工品も生産できるのがいい。加工肉メーカーの経営であるが、いいロースハムが出来るところがいいメーカーなのではない。いいソーセージが出来るところがいいのである。ソーセージは端材から作る、その端材を使って、いいソーセージを作れば、売れて利益になる。そうすると、残りのロース系などのいい部位だが、これは高くても売れるロースハムに作ればいい。ということになる。

銘柄豚を使って、おいしいソーセージが出来たら、そのソーセージの名前に、銘柄肉と同じ名前をつけたらいい。例えば「リンゴで育てた信州豚」なんてのがあったら「信州豚のソーセージ」としたらいい。銘柄のネーミングをそのまま利用すればいいのだ。ブランド力を使うのである。

こういったことを行うために、生産者自らが加工肉メーカーを持つ必要などはない。日本中、どんな地方にも手作りレベルで食肉の加工品を作るメーカーはある。そういったところと提携をすればいい。


加工肉からの売り込みも出来る
ある、秋田の銘柄豚を、東京のスーパーに売り込むのに、肉そのものではなく、ソーセージから売り込み初めて成功した例がある。元々銘柄豚を生産していて、首都圏に売り込もうと努力をしていたのだが、なかなかうまくいかなかった。しかし、生産地ではその肉の端材で作ったソーセージがあり、味がよかったところから、このソーセージをとりあえず店で販売してみないか?というスタートになった。

販売してみたところ、味の良さで評判になり、店の定着アイテムに成長してきたのをきっかけに、元の豚肉の販売も交渉したところ、今度はうまくいった。今ではこのスーパーの名物豚肉になっている。

スーパーでは、現場のカッティング技術がなくなってきたことと、最近の顧客は、あまり料理をしなくなってきて、惣菜志向になってきたことで、加工品を扱う比率が徐々に高くなってきている。顧客の簡便志向と、販売店での作業の簡素化に、加工品は対応できるのである。これを逆に銘柄豚の売り込みに使った例である。


骨付きの商品はこれからのもの
豚肉で代表的な骨付き商品はスペアリブである。銘柄豚は味のいい肉でなければならない。そして骨付きの豚肉メニューはおいしい、骨と筋から味が出るからである。ならば、銘柄豚肉をさらにおいしく食べてもらうには、骨付きメニューを提案したほうがいい。ということになる。

日本の消費者は骨付きの牛肉とか豚肉のメニューは今まであまりなじみがなかったが、スペアリブが売れてきているので、これからは売れていくのではないだろうか。と言っても、料理の簡便性が必要だから、加工、半加工がいい。スペアリブならば、調理して後は温めるだけのものとか、そのままでも食べられるスモーク製品。あるいは、シーズニング、漬け込みをして、後は焼くだけのバーベキュー用などである。

骨付きのすね肉を漬け込んでボイルするのがアイスバイン。かかと部分を漬け込んでスモークした「ホック」というスープ用もうまい。骨付きの腿肉を丸ごとハムにした骨付きハムはパーティー用に売り込める。

ある銘柄豚をカットして、販売と加工も一緒にしている東京のメーカーは、味で有名なラーメン店に骨だけを販売している。おいしいものをわかっている人は、何とか探して素材を探しているものである。銘柄豚を売っていくには、情報を収集して、販売ルートを探すと同時に、自分からも情報を発信することである。


惣菜との連動の提案
簡便ニーズには、売る側に手間をかけなければならないと同時に「付加価値」というメリットが出てくる。その究極が小売店では惣菜である。惣菜ブームはこれからも拡大していくが、その中で重要になっていくのは、扱う素材のこだわりである。豚肉を使った惣菜は、惣菜の売り上げのかなりの部分を占める。豚カツ、野菜炒め、カツ丼、ラーメンの具、チャーシュー、焼き豚、これらのメインの惣菜に銘柄豚を使ってもらうのである。

スーパーの惣菜部門は、生鮮3品部門とは別に原材料を仕入れいていることが多い。惣菜の厨房でも簡便化が進んでしまい、冷凍の半加工材料を、そのまま揚げるだけ、といった形が多くなってきてしまったのだが、HMR(ホームミールリプレースメント)の考え方で、惣菜部門を手作り、出来立てに再び再構築する動きが活発になってきている。

HMRというのは、レストランのシェフが作った料理を、そのままキッチンの前で小売りをする、というコンセプトで、米国で急速に伸びている業態である。日本ではこの考え方で、惣菜を強化しようとする動きが出ている。

そこで、惣菜に使う豚肉であるが、精肉売り場で販売している銘柄豚を、そのまま惣菜に使ってもらうよう、提案するのである。これを提案するには、部門間の区切りが問題になるので、スーパーのトップレベルとの交渉になる。

顧客は、精肉で販売している高品質の豚肉が、惣菜のほうに使われていて、多少高い惣菜メニューになっていても、それはこだわった素材を使った商品なのだから、気にしない。ところが惣菜部門は、自分の部署だけで商品化を考えているから、銘柄肉を使うという発送は出てこないようだ。そこで、銘柄豚を供給する側から提案するのである。


ミンチに使うと売れる
ミンチは、顧客にとってはとても重要な商品である、いろいろな料理に使える便利な存在である。しかし、「材料に何を使っているか?」という不安もある。そこで、低価格のミンチを販売すると同時に、高品質のミンチが欲しい潜在顧客に対して、銘柄豚肉をそのまま使ったミンチを販売してもらうのである。価格は高くても必ず売れるものである。


内蔵肉が重要
内蔵肉は、健康食ということで、特に女性の顧客にとっては重要である。女性客はスーパーの顧客の大部分を占める、そして、女性客の半分は、貧血や妊産婦ということで、内蔵肉、とくにレバーを食べなさいと、医者からいわれている人である。しかし、気持ち悪い、臭い、汚い、といった理由で、食べなけれないけない、とわかっていても、買いにくい、という気持ちがあるようだ。そこで、銘柄肉の内蔵肉である。

銘柄肉の人気が出てきて、店に定着してきたら、その肉の内蔵肉はどうなっているのか?といった「潜在的疑問」というのは必ず出てきている。

特定の豚だけを選んで、その内蔵肉だけを別に出荷してほしいというと、問題のある屠畜場があるかもしれないが、そんなことをいつまでもやっていたら、売れるものも売れなくなってしまう。交渉すべきだ。

実際、銘柄豚の内蔵肉を、表示をして販売すると、良く売れる。鮮度、温度管理に注意して、その日のしか売らないなど、品質管理をしっかりすれば、おいしい銘柄豚の内蔵肉が売れる。価格は一般の内蔵肉よりももちろん高くても売れるものである。

あるスーパーでは、銘柄豚の内蔵肉は、ビニールの小さい袋にいったん入れて、それをトレイに入れて販売をしている。こうすると、ドリップが出ないので、きれいに見え、良く売れるのである。


フードサービス業界も売り先
スーパーのことを中心に書いてきたのだが、フードサービスも銘柄豚の重要な顧客になっていく。フードサービス業界もスーパー業界と同様に、大きな競争に入っている。生き残る作戦の一つとしてあげられているのが、食材の高品質化、安全化である。オーガニックブームはそのあらわれである。

この数年の間の不況の中で、フードサービスは低価格化という路線を走ってきたのだが、それだけでは顧客はついてこなくて、健康のための食事、というニーズがあり、これに対応した食材が重要になっていることがわかってきたのである。

ファミリーレストランに行ってオーダーをするとき、単なる「豚カツ」か、それとも、その横にあるこだわり方を解説した「銘柄豚肉の豚カツ」を選ぶか、考えてほしい。価格にあまりにも格差があればしかたがないが、ある程度高いぐらいならば、銘柄豚のほうを選ぶのではないだろうか。

あるファミリーレストランチェーンで、「オーガニックの豚カツソース」を新しく使うことに表示があったのだが、肝心の肉はそのままだった。変に思って、後でそこの本部の人に聞いてみたら、やはりソースだけ変えても売れなかった、と言っていた。フードサービスで伸びているのは、惣菜業である。急成長で話題に良く出るようになったオリジン弁当は、店での作り立て惣菜を出来るだけ多くする、というコンセプトで、この3年の間で300店舗をあっという間に作り、店頭公開までしてしまった。目標は首都圏千店舗、という勢いである。このような業態で今問題になっているのも、やはり食材である。


HACCP対応
これからの食品業界にとって、HACCPに対応することは常識になる。生産現場においても同様で、農水省が厚生省と合わせて、生産のHACCPと、食品加工のHACCPをつなげ、HACCPチェーンを構築する方向である。これらの動きは、小売り業界でも、フードサービス業界でも、仕入れ食材の品質要請と言う形で、畜産生産の中にも次第に出てくる。
品質で勝負をする銘柄豚では、早くから準備をしておく必要がある。


日本食肉研究会「食肉の科学」98年夏ごろの号より
Comments