銘柄鳥

2013/05/24 1:41 に 松本リサ が投稿

3つのカテゴリーの鶏肉

一般に出回っている鶏肉は、3つの種類がある。まずブロイラー、いわゆる若鳥で、食用に早く成長するように改良されたもの。生後五十数日で食肉用にと鳥され、味は淡泊で肉質は柔らかい、低価格だ。次に、ブロイラーを元としているが、飼育期間を長くしたり、飼料を工夫したりして、肉質を改良改善し、高品質にしたもので、一般的にこれを銘柄鳥という。そして地鶏で、古くからの在来種や、これを改良した鶏。産業用に改良していないので飼育期間が長く、飼料効率や生産効率が悪いので価格は高いが、味は良く、歯ごたえもある。単純な柔らかさはないので、ブロイラーしか知らない人は肉が硬いという人もいる。鶏肉のおいしさを知っている人にはこたえられない美味しさになる。

ブロイラーは低価格の店向き。地鶏はこだわりを持った高級店や専門店。そしてフードサービスチェーンや普通のブロイラーでは無くちょっと高品質にして特長のある店にしたいというところには銘柄鳥、といった用途になる。食堂チェーンにおいては以前はブロイラーを使うのが普通の方式だったが、次第にただのブロイラーでは顧客を納得させることが出来なくなり、他店との差別化や特長を打ち出す必要があるところから、このところは銘柄鳥の採用を行なうところが非常に多くなってきている。そこで、食堂チェーンが検討する場合の銘柄鳥について述べてみる。

銘柄鳥の特長

飼育期間と、飼料の2つのものが品質や特長になる。まず飼育期間だが、一般のブロイラーよりも長く飼育して、味、品質を良くすることが行われている。75日飼育、さらに百日飼育、といったものになる。飼育期間が長くなるとどういうことになるかというと、水分が少なくなり、イノシン酸が多くなる。ということは、水っぽくなくなり、イノシン酸(美味しさ)が増えるということである。また、脂肪は多くなる。高品質の鶏肉、地鶏などで水炊きをやると、鍋のスープの上に黄色い脂肪が浮いてきて実に美味しいものなのだが、これである。コストは当然高くなる。柔らかさについては単純物理的には次第に硬くなるのだが、食べた感じではそれは硬さというのではなく良い食感という具合になっていく。ブロイラーのふにゃふにゃの柔らかさではなく、美味しいさと適度な食感、という表現が良いのだろうか。

飼料だが、例えばいくつものメーカーで生産しており、共同のブランドになっている「地養鳥」というブランドの銘柄鳥があるが、この飼料は「地養素」というものを飼料に添加しているのを特長としている。地養素の中には、木酢液が入っている。木酢液というのは、墨を作るときに黒いタール状の液が副産物として出来てくるのだが、これである。木酢液を飼料に入れると、それを食べた鶏肉や豚肉がおいしくなったり、色が良くなったり、ヘルシーになったりする。木酢液は飼料にだけではなく、消臭材料にも使われており、これを例えば臭いのあるごみ箱にちょっと入れると臭わなくなったりする、最も臭くなる前にゴミを捨てればいいのだが。風呂に入れたりなどの用途で知っている人も多い。この地養素には他に、ハーブカスや海草なども入っている。これは1つの例だが、多くの工夫をした飼料がある。

銘柄鳥はこのように飼育期間と飼料の2つの特長を組みあわせて高品質にしている。もちろん親鳥からスタートをして長い期間をかけて改良を各銘柄鳥もしてきており、改良、飼育期間、飼料の組みあわせということが出来る。

美味しく提供するため3Tをどう管理するか

3Tとは
  • temperature(温度)
  • term(期間)
  • timing(タイミング)
である。生産農場で生産された鶏がと畜処理工場に行ってから、温度管理が悪ければ鮮度が落ちてしまい、バクテリアが繁殖して、美味しさを維持できる期間が短くなってしまう。と畜処理工場で理想的に処理して肉になったとしても、物流が悪かったり、センターや倉庫、あるいは店舗での温度管理や先入れ先出しなどの管理が悪かったら、やはり鮮度が落ち、肉が悪くなり、顧客に美味しく提供できるタイミングを逃してしまう。と畜処理工場で美味く処理できた鶏肉を、加工工場に持って行って串刺しやポーションカット処理をするとき、管理が悪ければ美味しくなくなり、美味しく食べられるタイミングを逃す前に不味くしてしまうことになる。温度、期間、タイミングをどう理想的に管理するかで、最終的に店舗が流行るかどうかが決まってくることになる。このためには、と畜加工、その後のポーションカットや調理加工する工場、店舗に運ぶための物流センターなどのロジスティクス、この3者の管理が全てうまくいっていなければならない。店でいくら良い調理をしようとしても原材料がダメならば意味がないのである。そしてこういった管理には知識、技術、設備、機器、といった、いわゆるシステムが出来ていないとならないのである。

おいしいタイミングとは

朝、と鳥して夕方に食べることが出来るた鶏肉のことを「あさびき鳥」と呼ぶが、これは、鮮度が良くて美味しい。では、早ければ早いほど良いかというとそうではなくて、と鳥した直後は硬くて旨味が出ていなくて美味しくない。と鳥して12時間から美味しくなり、24時間までが最高だと言われている。内臓については新しいほど美味しい。と鳥直後は「死後硬直」で美味しくないが、その後熟成をし、12時間ごろに熟成がある程度完成するので、美味しくなってくる。この熟成期間というのは肉によって違い、牛肉だと2〜3週間、豚肉なら4日間、魚だと魚種によって違い、マグロだと1週間、ヒラメだと4時間、という目安である。この期間というのは科学的に実験で分かっているのもあるが、歴史的な経験、昔からの職人のやり方(経験からの技術と方法)から出て来ているものである。

話を鶏肉に戻すが、という状況だと、生産地から食堂で調理して顧客が食べるまでの期間を考えると、12時間以内で早すぎてしまうということはまず考えられないから、どうやってと鳥から店舗での料理の期間を短くするかということになる。しかし、24時間といっても、これ以降はどうなるかが大事なことになる。もしと鳥処理やその後の温度管理、ロジスティクス等が悪いと、24時間以降は美味しさが急速に落ちていき、最終的に調理できる状態でなくなるまでの時間が早くなる、ということは最も美味しい12〜24時間以降、不味くなって行くスピードが速くなることになる。そして管理がよければ、24時間以降も美味しさを十分に保つことが出来、おいしい鶏肉料理をいつでも提供できることになる。

何度で管理したら良いのか

食肉の凍りはじめる温度は、マイナス1.7℃程度で、鮮度を保たせるためにはこれより0℃程度の温度で保管するのが良い。鶏肉をと畜処理するある工場ではと畜直後の正肉になったものはマイナス2℃で保管している。ここ数年の間に出て来ている技術だが、胸肉を柔らかくぱさつきの無いようにするために、0℃程度で1日寝かす手法がある。これだと12〜24時間というものと違ってきていしまうのだが、短時間の熟成をすることで胸肉に付加価値を付けるための方法である。この手法を行なうためには、バクテリアコントロールが理想的な状態でないとうまくいかない、バクテリアが多い状態だと熟成ではなく鮮度劣化になってしまうからである。初期状態にバクテリアが多いと、保管中に増殖してしまう、初期に非常に少なければよい熟成になり、鮮度を保ったまま美味しく柔らかくすることが出来るのである。そこで重要なのは衛生管理である。

衛生管理、一般的衛生管理とHACCP

と鳥処理工場やポーションカット工場が衛生的な管理をしているかどうかの判断基準は「HACCP」というキーワードになる。日本では1996年に関西であったO-157による大規模食中毒事故以来知られるようになってきたものだが、簡単に言えば、きれいで衛生的な工場にして、その上で製造の各工程の中で予測される危害を分析してそれを予防するシステムである。その工場がHACCPを行なっているかどうか、あるいはHACCP的な管理をし始めているかどうかを聞いてみれば、衛生管理に気をつけているかどうかが分かる。衛生管理をしっかりしようとしている工場でHACCPを知らないところはないからである。逆にHACCPを知らない工場がもしあったら最初から相手にしないほうが良い。

加工品があるか

銘柄鳥は正肉ばかりではなく、ガラ、内臓肉などの副産物が出るが、これらを加工することによって、メーカー側は付加価値をつけることが出来るし、フードサービスのユーザー側は、良い加工品があればそれを利用して売れるメニューを作ることが出来るし、加工品によっては店舗の手間を少なくしてなおかつ美味しいメニューを提供することも出来るようになる。例えばその銘柄鳥のガラを使ってスープを作っているメーカーがある。スープはストレートであったり、濃縮であったりするが、このスープを使うことで、例えば水炊きを簡単にメニューに入れることが出来る。水炊きメニューは鶏肉をいきなり水から煮たら、鶏肉のスープは出るがそうすると肉そのものの美味しさがスープになって出てしまうわけだから、肉はおいしくなくなってしまう。老舗の水炊き店の調理ではその鶏肉のガラを使って出したスープを最初から使って水炊きにする。こうすると最初からスープはもう出ているので、鶏肉の旨味は外に出ることはなく、おいしいスープと旨味を保持したジューシーな鶏肉を楽しむことが出来るのである。これを食堂業、フードビジネスで行なうためには、肉とスープを一緒に仕入れられるとうまくいく。その銘柄鳥のガラで作ったストレートスープを鍋に入れ、それに銘柄鳥を一口大にカットした肉を使えばよい。本格的な水炊きにするには骨付きのままの鶏肉を使えばよいのだが、最近は骨付きの肉は顧客が食べにくいと嫌う傾向があるので、スープと正肉の組み合わせにしたほうが若い顧客を取り込むことが出来るようだ。

スープをデリカテッセン、総菜ショップで活用することも出来る。ストレートでも濃縮でもあるいは顆粒状に加工したものをショップで販売するなり、店内調理のアイテムのそのスープを使えばハイグレードなメニューを簡単に提供できる。

胸肉をローストしたりスチームしたサラダ用の半加工素材を作っているメーカもある。一般のブロイラーを使ったらただのチキンサラダだが、銘柄鳥を使えばそのブランド名のチキンサラダになる。焼鳥だが、キッチンでの手間を省いたうえにハイグレードにして提供する方法として、鶏肉を串刺しにしてから真空パックにしてスチームなり湯調した後急速冷却する真空調理又はクックチル方式にすると、そのパッケージを店側で短時間に調理提供できる。店舗では真空パックを破いてから例えば炭火で表面を焦がすことで、短時間に温めることが出来るし、炭火のフレーバーを付けることが出来る。

この串に刺すという方法も、正肉にしたものを別の工場に入れ、そのパッケージを壊してから串刺し加工をし、それをまたパッケージして店舗に運ぶ、といったことをやっていると、鮮度は落ちるし、コストはかかってロクなことはない。理想的なのはと鳥処理工場で素早く加工することが出来ればいい。特に銘柄鳥ならばその味をそのまま串刺しメニューに活かすことが出来る。

仕上げは店舗での管理

さて、こだわりのある銘柄鳥が良い状態で店に無事入った後、調理するまでの間の管理をどうするかが仕上げになる。これは別に銘柄鳥だからこうするというのではなく、あらゆる食材に共通のことだが、ポイントは、
  1. 食材が入ったら、直ぐに冷蔵庫に入れる。
  2. 冷蔵庫の温度管理。
  3. 先入れ先出し。
  4. 肉類と青果類を分けて保管する。
この中で特に肉類と青果類を分けて保管することなのだが、青果類は生食する食材が多いので、それを鶏肉で汚染しないように、別々に分けて保管することが重要になる。フードサービスの店舗は狭いところが多いので冷蔵庫を別にすることはなかなか難しいが、冷蔵庫の中で、保管する棚を別にしたり、もし棚が一つしか無かったら、上に青果、肉を下にすると良い。肉を上にすると肉のドリップが落ちたりして下のものを汚染することがあるためにこうする。

確認調査のステップと内容(簡単な表にする)

農場
飼料、飼育期間、衛生管理、使用している薬剤の残留

と畜処理場
温度管理、衛生管理、HACCP方式を取り入れているか、加工品はあるか

ポーションカット、調理工場
温度管理、衛生管理、HACCP方式を取り入れているか、加工品はあるか

ロジスティクス
工場から店までの温度管理、倉庫での管理、スピード

店舗
温度管理、先入れ先出し、調理の安全管理

調理技術
理想的な調理方法になっているか、安定した調理ができるか


北海道
中札内田舎どり

青森
味鶏肉
津軽どり
まごころ
めぐみどり

岩手
いわい赤どり
味わいどり
清流赤どり
奥州いわいどり
奥の都どり
菜彩鶏
サダダチキン
さんさどり
吟鮮鶏
地養鳥
南部どり
南部どり赤かしわ
南部どり純鶏
みちのく赤鶏

宮城
みちのく鶏

秋田
比内地鶏

福島
川俣シャモ
伊達鶏

茨城
つくば茜鶏
つくば地鶏
やさとしゃも
さやと本味どり
奥久慈しゃも
栃木
栃木しゃも
那須の神那どり
錦どり
群馬
上州シャモ
名古屋コーチン
榛名赤どり
榛名百日鶏
榛名若どり
プレノアール
千葉
愛彩ハーブチキン
上総赤どり
地養鳥
華味鳥
房総地どり
水郷赤どり
水郷あやめ鶏
水郷若どり
東京
蔵王土鶏
東京しゃも
ネッカチキン
山梨
安曇野赤どり
甲州健味どり
甲州赤どり
甲州地どり
無添加信玄どり
石川
能登どり
岐阜
奥美濃古地鶏
美濃地鶏
美濃庭鶏
静岡
ぐるめきどり
御殿どり
地養赤鳥
地養鳥
太陽チキン
愛知
純系名古屋コーチン
三河赤鶏
三河どり
渥美赤どり
三重
赤鶏
伊勢赤どり
伊勢どり
奥伊勢七保どり
滋賀
近江鶏
近江黒鶏
近江しゃも
京都
あじわい丹波鶏
京赤地どり
京地どり
丹波あじわいどり
兵庫
但馬どり
但馬の味どり
但馬のすこやかどり
丹波地どり
播州100日どり
ひょうご味どり
松風地どり
奈良
大和肉鶏
和歌山
葵之地鶏
紀州鶏
紀の国地どり
鳥取
大山赤黒鶏
大山どり
鳥取地どりピヨ(大山シャモ)
岡山
おかやま地どり
岡山桃太郎地どり
吉備高原どり
帝釈峡しゃも地鶏
山口
長門地どり
徳島
あづま鶏
阿波尾鶏
阿波尾鶏(阿波地鶏)
阿波すだち鳥
神山鶏
コクノアール
地養赤鳥
地養鳥
阿波吉野75日どり
PHFチキン

香川
愛彩鶏
阿波の地どり
こだわりチキン
讃岐コーチン
瀬戸あじわいどり
愛媛
伊予赤どり
伊予路しゃも
浜地鶏
高知
四万十鶏
土佐ジロー
福岡
筑前秋月どり古処鶏
はかた地どり
博多華味鳥レッド90

佐賀
有田赤絵鶏
ありたどり
みつせ鶏

長崎
つしま地どり
長崎香味鶏
ながさき自然鶏
熊本
大阿蘇どり
熊本コーチン
肥後の赤どり
大分
九重の赤どり
豊のしゃも
豊後赤どり
無薬鶏
宮崎
サラダチキン
霧島どり
高原ハーブどり
高千穂どり
日南どり
ひまわりどり
日向赤鶏
日向鶏
都味どり
宮崎赤鶏ねおれっど
宮崎の赤どり
鹿児島
赤鶏クックロゼ
桜島どりゴールド
さつま若しゃも
桜島どり
南国元気赤鶏
南国元気鶏
南国元気鶏U
ぴゅあ安心咲鶏
ぴゅあ旨味鶏
「月刊食堂」2001年12月号より
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