ミンチについて

2013/05/23 23:08 に 松本リサ が投稿
ミンチは、ひき肉、グラインドミートなどと呼ばれるが、肉をグラインダー、ひき肉機、チョッパーで挽いたもの。食肉の処理の段階や、使いにくい部位、脂肪の多いトリミング、脂肪そのものなど、端材から出て来る製品や原材料である。このミンチをうまく利益に結びつけることが出来るかどうかは、そのメーカーの利益を大きく左右する。良いソーセージやミートボール、あるいはパティ、ハンバーグなどの良い製品が出来て売れれば、端材を利益にすることが出来るので儲かる。そうでない場合、いくら良いハムを作っても、端材が利益を引き下げてしまうので、儲からない。端材を利益に出来れば、正肉で作った例えばハムの価格も値ごろに出来るから、売り上げ全体を上げることが出来る。端材をどう出来るかは、食肉メーカーの経営を大きく左右する。

脂肪率

あるときいたずら半分のテストをしてみた、高品質の牛肉テンダーロイン〔ヒレ、ヘレ〕を挽いて、そのままハンバーグ状に加工して焼いて食べてみた。集まった皆さんはヒレをハンバーグにしたらどれだけおいしくなるのか、といった期待を持っていた人もいたのだが、結果は予想通りおいしくなかった。ふにゃふにゃで、ジューシーでなく、旨味も無いのだ。理由は、肉がやわらかすぎるのと、脂肪が少ないからである。

だいぶ以前、クジラが普通に食べられていたころ、クジラの赤身肉の切り身を、和牛の脂肪を使ってステーキにして、スーパーマーケットの食肉担当者の研修会で試食をしてみた。「肉は何か?」と言う質問付きで。出た答えはいろいろだったが、「もも肉」「肩肉」といった見方が多かった。クジラとは全く考えず、牛肉だと思い込んでしまったのだ。これは脂肪が牛肉のものだったので、赤身の肉が牛肉の味になってしまったのである。

脂肪が味を如何に左右するかの実験であった。

豚の腕を丸ごとミンチにして、脂肪分析機で調べてみると、35%前後の脂肪率になる。このままソーセージにするとちょうどよい脂肪率になるようだ。ソーセージメーカーでは脂肪のトリミングを入れたり、大貫豚を使ったり、端材を入れたりしているので、最終の脂肪率を理想通りにするのには、原材料の傾向による配合、ノウハウ、経験が必要になる。

ハンバーグの脂肪はどの程度が一番おいしく感じるかの試食アンケート、データをいろいろ見ると、19〜22%程度のものが多い。20%前後の脂肪率が良いわけだ。あるメーカーが脂肪が少ないほうが体に良いからと、脂肪率の少ないハンバーグを作ったことがあるが、売れなかった。有名な例では、マグドナルドが米国で赤身の多いハンバーガー〔ハイリーンという〕を発売したことがあるが、しばらくしたら消えてしまった。

最適の脂肪率にすることは、味と同時に、利益にも貢献するのである。

温度と食感

グラインダー〔挽き肉機、チョッパー〕に投入するときの温度が品質と食感を左右する。温度が高すぎると、ぐちゃっとしてしまって、食感がなくなるし、肉温がグラインダー内でさらに上がってしまうので、肉がカットされるのではなくて崩される状態になってしまうのだ。

そのため、こういったミンチをトレイに入れて小売店で売ると、早くドリップが出てしまい、その後色が黒くなってしまう。

冷凍の挽き材を半解凍にしてグラインダーに入れる場合、低すぎると今度は肉の組織が崩れ割れてしまって、これもドリップと変色の原因になってしまう。いずれも味は悪くなってしまう。

食感を良くするために、冷凍の原料と、チルドの原料をミックスする方法がある。これだと最も良い食感にすることが出来る場合もある。

ところでハンバーグの食感はどういったのが一番良いかであるが、やわらかすぎては駄目だし、硬くても駄目で、なかなか難しい。

一つの表現だが、おにぎりの食感に似ている面がある。おいしいおにぎりは、おにぎりを齧ったときには、ほろりと崩れるのだが、噛み始めると、ご飯の一粒一粒の食感がしっかりある。握り寿司も同じだ。

冷凍原材料を挽く場合、チルドを挽く場合、ミックスする場合、また、牛肉と豚肉と鶏肉のそれぞれの最適の温度、グラインダー内での温度上昇を最小にする方法、最終の出て来たミンチの温度と状態を突き止めるのは、それぞれのメーカー、製品の目的などによって大変な組み合わせになる。これを見つけたところがおいしいミンチ製品を作ることが出来る一歩になる。

グラインディングのステップ

ハンバーガーパティを作る一般的なステップは、粗びきにして、本挽きにする。粗挽きの目は、5ミリから上ぐらいの小さいプレートから、最大のはキドニーと呼んでいるのまである。原材料の状態、部位、脂肪率、初期温度などによって使い分けるが、これもノウハウである。

仕上げ挽きの一般的なプレートは3ミリだ。この大きさは筋や軟骨をこのプレートに通せば食べたときにクレームが来る確立が低く、なおかつ食感がある、という最適の大きさなのだ。しかし、食感をより良く、つまりおにぎり食感に近くしたいために、もう少し大きいプレートを使う方法もある。この場合は原材料を慎重にトリミングしたり、筋や軟骨のクレームが出ない高級部位を使ったりすることが必要になる。

本挽きのプレートの裏に斜めの筋軟骨集め溝を入れて滑り出させるボーントリマーもある。これはある程度大型のグラインダーにつけることが出来る。このシステムもグラインダーのメーカーによっていろいろあり、除去率も違う。

グラインダーのメンテナンス

特に刃が切れなくなってくると、ナイフでカットするのではなく、のこぎりで崩すような状態になってしまうので、ミンチの品質が低下してしまう。ミンチというのはチョッパーというように、肉をぶつ切りするというところから来ている。今でも老舗の鴨料理屋さんのタタキは、肉を外した鴨の骨も含めた肉を包丁で3時間ほどもタタキカットしていて、これを鍋に入れると実においしいものなのである。この昔の肉屋さんが肉の端材を包丁でパタパタ細かく切っていたものを機械化したのがミンチなので、カッターが切れなくなってしまっては駄目だ。

ナイフは次第に切れなくなっていくので、定期的に研ぐ必要がある。あるメーカーでは、切れなくなってきたら研ぎに出していたのだが、HACCPを構築し始めてから、切れなくなってきて駄目に近くなったナイフで作った製品の品質は落ちるのが決まっているので、早めに研ぐことにした。以前は一ヶ月程度使っていたのを、その半分の二週間で定期的に研いだ刃と交換するようにしたら品質が常に安定した。

ナイフとプレートの組み合わせを代えてはならないのも原則である。


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