ミンチが売れれば、全ての肉が売れる。売れるミンチの勧め。

2013/05/25 7:10 に 松本リサ が投稿
1.ミンチの重要性

家庭の冷蔵庫の中に必ず入っているものの一つに、ミンチがある。イタメ物にも、煮物にも、いろいろな料理に利用範囲が広い、このようなミンチの品質は、店の信用を左右する。

スーパーマーケットの食肉売り場に行ったお客様は、まずミンチの色を見る、そして合格であれば当然のごとくそれをカゴの中に入れる。ところが、気に入った品質のものが無かったならば、ミンチだけではなく、そのほかの肉も買わない。

ミンチが合格の店では、次はコマ切れとなる。なぜならば、ミンチの鮮度がよいということは、端材の鮮度がよいということで、端材が良いということは、安くて用途が広い細切れ(切り落とし)の鮮度もよいということになる。

この反対に、ミンチが悪い場合には、他の肉も悪く、食肉売り場全体の回転が悪い。このような売り場の場合には、全体が暗くなっているものである。こうなってしまうと、ミンチ材料としての端材は、ますます悪くなってしまい、食肉売場だけではなく、店全体にまで影響してしまう。

ミンチが良ければ、豚肉も売れる。生産者としては小売りでのミンチの管理、商品作りは手の届くところではないが、ミンチによって売れるメカニズムは知っておいて損はない。小売店などの人と話をするときのいい話の種にもなる。なんらかの形で生産者側にもメリットがあると思う。


2.良いミンチを作るための技術 


1)原料


ミンチの命は鮮度である、そのためには原料の管理が第一になる。鮮度管理というのは、温度管理とバクテリアコントロールの二つである。食肉の凍る温度は、マイナスの1.7〜1.8℃である。この温度よりも低いともちろん凍ってしまうが、これよりも高けれが高いほど肉の痛む率は高くなっていく。

 カッテイングから出てくる端材は、小さな肉の破片になっているために、温度の影響を激しく受けやすい、ちょっとまな板の上に置いておくだけで温度が上がってしまい、その肉でミンチを作ると、すぐに変色してしまう。たとえひいたときにはきれいな色が出ていたとしても、少し陳列しただけで、すぐに黒くなってしまう。

バクテリアというのは、作業場の空気中にいくらでもいるもので、これを完全に防ぐことはできないが、作業の方法によってある程度コントロールすることはできる。このことをバクテリアコントロールと言っている。

バクテリアコントロールのためには、作業上を常に消毒することである。まな板、ナイフ、タオル、そして一番汚いのは人間である。作業上に入る者は、必ず手を洗うようにするだけで食肉への汚染をかなり防ぐことができる。


2)ミンチをひく温度


フレッシュ原料をひく場合には、できるだけ0度に近い温度、できれば−1から0度の間がよい。

冷凍原料の場合には、マイナス18度以下に管理しておき、牛肉原料は−3から−2度あたりでひくのが一番色が出、鮮度管理上もよい。豚肉の場合には牛と違い、ここまで低いと色が出ない。−1から0度の、フレッシュと同じ温度でなければならない。

これ以上温度が低いと、硬く凍った肉の細胞を無理に破壊するため、細胞が壊れて色が出なかったり、ひいてすぐに黒くなったり、ドリップの原因になったりする。また、これ以上高ければ鮮度に影響する。


3)チョッパー


ミンチというのは肉をブツ切りすることで、昔はナイフでたたいてきっていた。

肉をパワーのないチョッパーでひくと、肉が練られてしまい、その時の摩擦熱で温度が上がる。これで早く変色してしまう。

従って、良いミンチを売るためには良いチョッパーが不可欠である。機械のコストを節約するあまり、どんなに注意してもよいミンチができない状況はよくあることである。

チョッパーが古くなり、切り替えの時期に来ている場合には、多少無理をしても最高級なチョッパーをそろえるようにしたほうが良い。日本国内で買える推薦できるチョッパーの代表はブッチャーボーイで、相当大量に販売する店でなければ22番で大丈夫である。


4)作業


原料肉をチョッパーの投入口に入る大きさに切ったら、まず荒びきにする。

荒びきにするのは、赤身率90%の赤身ひき材と、赤身率0%の脂肪、それにカッテイング作業から出たトリミングである。この3つのものを、赤身ひき材と、脂肪とトリミングをいっしょにひいたものの2つのものに分けておけば、90%、80%、70%の3つの赤身率がすぐにミックスによって作れる。

この荒びき作業をおこなったあと、一度冷蔵庫にいれてチョッパー作業によって上昇した肉の温度を下げたほうがよい。

夕方荒びき作業をした後冷蔵庫にいれ、翌日、本びき作業をすると、肉はよく冷えるし、仕越し作業を行なえるので作業効率がよくなる。


5)アイテム


レギュラーとして70%、80%赤身、特に赤身を多くしたものとして90%赤身、それに荒びき。この4アイテムは基本的に必要になる。これに加えてモモ挽肉、細びき、といったものが加わる。

合いびきについては、牛40豚60という形に、牛と豚の比率をはっきり表示することが必要。


3、ハーフメイド


ミンチとミンチをつかったハーフメイドは競合店対策のもっともパワーのあるもので、これで大切なことは、鮮度と味付けである。

鮮度については述べたが、味付けでは、味の良い[ミンチベース]を各企業で開発すべきである。

[ミンチベース]とは、塩、調味料、スパイスを一緒にした物で、決められた量、例えば1キロのミンチに20グラムを入れるようにしておけば、誰がハンバーグを作っても同じようにできる。

このような形にしておけば、バックルームでの作業が単純化されるし、味の不安定さはない。

目安としては、塩はミンチの重量の0.5〜0.6%、ペパー類は0.06〜0.12%、ガーリック、ジンジャーは0.02〜0.15、ハーブ類は0.02〜0.03、また、グルタミン酸ソーダを入れるならば0.3〜0.5%、といった目安である。パン粉、ドライオニオン、粉末醤油、その他粉になっていてハンバーグに入れるものは全てミックスしたらいい。

実際には、シーズニングを設計することはかなりの経験と時間を要するので、ミンチベースの開発は専門の業者に依頼し、塩も全てミックスしてもらってから納品するようにすればよい。開発段階でどのような方向に自社の味を持っていきたいのかを明確にし、独創性のあるベースにする。

方向性というのは、味の特徴だけではなく、どのような使い方をするのか、例えば牛肉と豚肉を一緒にするのか、別々にするのか、チキンはどうするのか。計量は量りで計るのか、専用のカップにするのか。専用のカップにすれば作業性も上がる。また、1ケースあたりの重量は何キロが適当なのか。といった効率的な作業を行なうことに十分注意して開発しなければならない。


1)ハンバーグ


代表的なアイテムだが、今まで鮮度の落ちた原料を使って作っていた場合には、売上はそれほど良くなかったはずである。こういったベーシックなアイテムはお客様はじつに良くわかっており、1度でも鮮度が悪かったり、味がおかしかったりすると当分の間買わない。

ハンバーグには、何も入れないのと、野菜やきのこ、コーンなどをトッピングしたのと、大きく分けて2種類ある。何も入れない方はレギュラーアイテムとして扱うが、トッピングした方は季節のアイテムや日変わり、週変りアイテムとして売り場に変化と面白さをつけるために多用したらよい。

トッピング用のものとしては、コーン、ミックスベジタブル、ニラ、キノコ類、チーズ、カニ、エビ、カマボコ、ひじき、パイナップル、人参、あらびきのブラックペパーなど多くのものがある。


2)ジャーマンステーキ


ジャーマンステーキもミンチベースを使ったもので作ればよい。中にいれるものによって季節性を出すことができる。

春はアスパラ、うど、ふき、各地方の山菜。

夏ならコーン、ピーマン、サヤエンドウ、カボチャ、インゲン、。秋はえのき、しいたけ、ナス、ゴボウ。冬はニンジン、ホウレンソウ。といった具合である。

子供用にはウインナーやチーズが喜ぶ。

ミンチに混ぜるものはミックスベジタブル、グリーンピースなどハンバーグと同じ扱いでよい。


3)ミートローフ


これから売れる付加価値の高い商品である。ハンバーグよりも高級だし、ビーフだけを使えばローストビーフと同じである。

ミンチベースで味付けをした後、アルミトレーなどの型にいれ、そのまま販売するアイテムと、オーブンで焼いた調理済みとの2アイテム出せる。

価格の方は、1個200円程度で売れるような大きさにするか、大きなものを作り、調理した後手頃な厚さの切り身にする手もある。

中に、ジャーマンステーキに入れるような季節の野菜を入れれば季節感が出る。


挽き材


豚肉のパッカーとしては、このように重要で、なおかつ広い用途に出来るミンチに対してどう対応したらいいかになるが、使いやすい挽き材を作る、という方法がある。チョッパーに入る程度の大きさにしたり、チューブ状にしたり、スティック状にしたりして、解凍をした後すぐにチョッパーに入れれば、鮮度にいいミンチが出来るように設計をするのである。米国ではチルドで大型のチューブに入れたものがスーパーに配送され、そのままグラインダー(チョッパー)に、店のバックルームで出た端材と一緒にして挽かれる。

ハイグレードのポークが良く売れているが、そのひき肉用原料などどうであろうか。ひき肉は豚肉が中心になる。その豚のひき肉に、ただ単に「豚ミンチ」にするのではなく、「黒豚ミンチ」「SPFポークのひき肉」とすることによって、単価の高いミンチが売れるようになる。このようなブランド、グレード明示したミンチは以前は考えられなかったが、最近やっと売りだされるようになってきており、良く売れている。

鶏卵肉情報センター「養豚情報」98/3月号より
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