美味しさ食わば皮までも

2013/05/23 23:12 に 松本リサ が投稿

ポテトの皮

アンカレッジの繁盛レストラン「サイモン&シーフォーツ」の自慢メニュー「プライムリブロースト・岩塩焼き」を頼んだら、高品質のリブを熟成させ、レアにローストされたピンク入りの超厚切りが出て来た。岩塩で焼くとこうもおいしくなるのかと感心し、肉のジューシーさも相まって、最高だ。このレストランは素材の味をたっぷりと出している。

ローストビーフのサイドにあったマッシュポテトにフォークを入れたら、粗びきで、ポテトの食感が十分に残っている、アラスカらしい荒々しさなのだが、その中にポテトの皮がわざわざ入れてある。さすがアンカレッジナンバーワン、美味しいものがわかっている。

米国でステーキの付け合わせに私がいつも頼むのはベイクドポテトで、大きなポテトを丸ごと焼いたものだが、このポテトの一番美味しいところは皮だ。でかいステーキなので肉を全て食べることが出来ないことも多いが、それでもポテトの皮は食べる。ポテトの中身を残しても。

柚子の皮

飛行場のレストランといったらろくなものが無いのが当たり前なのだが、大分空港の三階に入っている寿司「海甲」は実に特殊なことに美味しい。

このすし屋は大分市内に本店があるのだが、空港にも以前の古いときからあり、新しく建て直してから3階に移動して、店も広くなった。美味しいものが良くわかっているツアープランナーは、帰りの飛行機に乗る時間よりも少し早めにいって「海甲」でおいしい寿司を食べるのをルートにいれるという。夏などは名物城下鰈やサバ寿司の最高のがそろっている。

出張で大分によく来るグルメなビジネスマンは、空港に着いたとき「海甲」に、帰りの便の時間に合わせて「サバ寿司」を予約し、帰りにピックアップして飛行機に乗る。飛行機の中でおもむろにサバ寿司の包みを開けると魅力的なサバ寿司の香りが漂う。その香りに回りの乗客が気が付き、くんくんと臭いを嗅ぎ、目玉だけをきょろきょろさせてだれが食うんだと探している状況の中で、優雅にサバ寿司を一人でポクポクと優越感に浸りながら食べるのが最高の楽しみ、だという人もいるという。

この店では九州人がやるように寿司や刺し身に柚子(ゆず)をかけるのだが、そのかけ方が美味しいところをわずかでも逃さない。四つ切りか八つ切りにカットした柚子を、普通ならレモンを絞るように、皮を上、実を下にして、汁を搾り落とすが、ここのやり方は違う。反対にするのだ。皮を下、実を上にして、ゆっくりと汁を飛ばさないようにして絞る。そうすると汁は下の皮を通って、つまり皮の風味まで溶け入れてから絞り落とすことになる。実に皮の風味を加え、美味しさを最大限絞り取ってかけるわけだ。

小豆の皮

あんこを作るには、製造の最初の方の工程で、小豆の皮を取り除かなければならない。この過程が結構大変で、釜での蒸煮や濾過システムに工夫がされている。この皮はどうするかというと捨てるのだが、あんこ製造業者に聞くと実はこの皮に一番栄養分があるのだそうだ。

それなら皮も全てあんこに入れてしまう製造方法を開発すれば、歩留まりもよくなるし、製造方法も簡単になるのではないかと聞くと、そうはいかないという。

私はこれが昔からの製造方法をしっかりと守るためなのか、あるいは発想を変えれば出来るものなのかは知らないが、もったいない。どなたか小豆の皮まで全て使ってしまうおいしいあんこの作り方を開発できませんか?

おからまで使った豆腐

豆腐の製造にはおからが付き物で、昔はおからを使った料理がいろいろあって、処分に困らなかったが、最近はおからの処理に困っている。おからは栄養分たっぷりでなおかつヘルシーなのだから、何とかすればよいのに、世の中逆行して来ている。現在では産業廃棄物の部類に入ってしまって、これを使って建材を作るなど、実に嘆かわしい。

しかし最近ここに救世主が現れた。おからが出ない豆腐製造技術が出来てきて、この豆腐が販売されてきているのである。おからまで全て豆腐にしてしまうのだ。

この豆腐の味はどうかというと、ねっとりとしていて、豆腐の密度を高めたような味だ。まあ、おからまで全部入っているので濃くなるのは当然かもしれない。

さて、食生活の中にこの丸ごとおから入り豆腐が入ってくるとどうなるか。

著者は最初の頃この濃厚豆腐が気に入ってしょっちゅう食べて満足していたのだが、しばらく続けていったら、普通の豆腐のさっぱりさが恋しくなって来て、また普通の戻してしまった。但し時々この豆腐がある行きつけの和食店に行くと、積極的にオーダーする。

ということは、著者にとっては、普通に食べるのは一般の豆腐が良いのだが、じっくりと大豆の濃厚味を味わいながら日本酒でもちびちび、というときにはおから入り豆腐のがよいことになる。

豆腐には二つあり、一つはいつもの豆腐、もう一つは酒の肴豆腐、ということになるのだ。

豚の皮

米国やオーストラリア、ヨーロッパでも、豚の皮を湯剥ぎにするので、脂肪と表面の本当の毛がついた皮の間にある中間の皮が肉に付いてくる。このため、加工品にしても、豚肉そのものにしても、スープにしても、この豚の皮がついているので、独特の美味しさがある。欧米などでこの豚肉の味になれてしまうと、日本に帰ってきて豚肉の味が物足りないという人も多い。ああ、濃厚な豚皮のフレーバーが乗っかった分厚いポークチャップ〔骨付きロースの厚切りステーキ〕が食べたいなあ。

フグの皮は二枚目が美味しい

家庭的な広島料理を食べさせてくれるので時々行く広島県は福山の「八寸」で知ったのだが、フグの皮には二枚あり、一般的にあるのは一番表面の皮なのだが、ここでは実と表面の皮の間にある二枚目の皮を出してくれる。といっても、わずかにしかとれないので、私のだけこっそり出してくれることになるのだが、これが実に美味しいのだ。風味があって、適当に歯触りがあり、ポン酢で食べると最高だ。

マグロの皮のすき身

マグロの皮を外すと、わずかに身の表面部分が皮に当然付いてくる。これをスプーンでがりがりと削いだのをワサビ醤油で食べると、適当に脂が付いていて、さっぱりしたトロのようだ。マグロの美味しいところは中落ちもあり、これは皮とは違うが、貴重品だ。よくスーパーマーケットなどで売っている安い中落ちというのは、中落ちとはネーミングしていても、実際には赤身に脂肪を混ぜて擦ったもので、本物とは違うのが売られている。

ホームパーティーで安くてびっくりさせるものはないかと魚屋に相談したら「まかしとけ」といって、肉を取って頭だけ外したまだ形がそのままの骨を、でかい細長い発泡スチロールに詰めて持って来てくれた。パーティーのスタートにいきなり丸ごとテーブルの上に置いたら大騒ぎ、人数分のスプーンを放り投げたらワッとばかりに全員飛びついた。骨と骨の間にある身をスプーンで削り取って食べるのだ。これが本当の中落ち。牛ならショートリブ、豚ならスペアリブだ。しばらくはすき身を削る音だけの妖しい音だけが響いた。

 

「最後の晩餐」という話があり、明日死ぬんだったら何を食べる? と聞く。ある漫画家が「シャケの皮とご飯」と言った。鮭の皮の内側のヌルヌルが美味しく、これでご飯をまいて、醤油をちょっとつけると最高。

皮の美味しさを見直すと、商品開発につながりませんか?
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