売れてるカレー

2013/05/25 16:35 に 松本リサ が投稿
カレーはインドからだが、日本のカレーが世界一だとよくいわれる。料理のこと、外食のことをよく知っている米国人にも、オーストラリア人にも、ニュージーランド人にも聞いてみたが、どの国の人も日本のカレーが一番うまいといっている。日本のカレーはインドから来たカレーではなくもう完全に日本の料理になっている。
そのカレーが、今年はまた一つの転機を迎えたようだ。その一つは小売り用のカレーで、グリコが新しい発想のもとに作った「熱カレー」である。カレールー市場はハウス食品の「バーモントカレー」がシェア40%以上、エスビー食品の「ゴールデンカレー」が約20%で、グリコのシェアは3%しかなかった。そこでグリコでは、熟成したうまさと、まろやかさを出すというコンセプトで開発を進めたという。熟成感については、菓子の技術であるキャラメル製造に使う釜で煮込み、まろやかさについては、チョコレート製造技術を応用して、スパイスの粒子を従来の約7分の1の30ミクロンの微粒子にすりつぶす事で対応したという。この「熱カレー」がヒットし、10%近いシェアを獲得した。そして、これに負けじと、ハウスは「こくまろカレー」、エスビーも「3日仕込みのカレー」を売りだし、シェア奪還に走っている。小売業界では一つの変革である。

外食業界では、今年は特にカレーメニューが充実していて、よく売れたという。デニーズジャパンは、「知床鶏のカレーサマースペシャルセット」を発売した。同社の「知床鶏」は、全注文数の2割を占めるほどの人気食材で、これをカレーの具に採用しかわけだ。ナンとサラダ、ヨーグルトをセットにした。ココスでは「エビとホタテの野菜入りタイ風カレー」など三種類を投入。西洋フードシステムズはレストラン「CASA」で、ひき肉を使った辛口「キーマカレー」など三種類を販売した。ロイヤルホストでは毎年夏にカレーフェアを開いているが、今年は定番で30種類の香辛料を使った激辛の「カシミールビーフカレー」、「マレーシアンチキンカレー」などを現地の調理法を取り入れた形で投入した。エスビー食品はカレーを中心とするスパイス料理店「ラ・ブラッセリー・デュ・カリ」を東京・銀座に出店した。店名は、カレーの居酒屋という意味。インド、バングラデシュ、シンガポール、マレーシア、フランスなど世界のカレーのほか、タイの「ゴイクン」、インドの「サモサ」などのスパイス料理をだす。スパイス料理の普及をはかるという。

スパイス料理が流行るというのは、辛いもののブームや、エスニックブームもそうだが、スパイスが健康と結びつく点もある。例えば、ウコン(ターメリック)はカレーの原料で、黄色のカレー色はターメリックである。これは、ショウガ科の多年草だが、肝臓、高血圧などの成人病に効果があるといわれている。三井造船系のエム・イー・エス特機では発酵ウコン茶を発売した。日本ウコン産業では春ウコンを粉末にした「春ウコン茶」を出している。タイム、セージ、ローレル、ディルといったハーブ類もブームになっているが、これも健康から来ている。スパイス、ハーブ、それに各種の自然調味料をミックスした日本独自のカレーが、ここに来て新しい展開を始めているのは、単なるブームではなく、健康志向の一つの表れでもあるのではないだろうか。

カレーの味が売り上げを大きく左右するのは、どこでも食べられるだけに、味が重要になってくるからである。カレーが美味しくなければ、レストランは流行らない。惣菜、デリも流行らない。逆に、美味しいカレーで評判になれば、そのカレーが顧客を呼び、全体の売り上げを押し上げてくれる。それほど重要なのがカレーの味である。
グリコの「熱カレー」が出てきたように、業務用では、ある業務用スパイス・シーズニングメーカーのカレーシーズニングがひそかに話題になっている。このカレーシーズニング(仮に「GSカレー」と呼んでおく)に切り換えたところ、カレーの売り上げが飛躍的アップしたというものである。2桁アップは普通で、2倍以上にもなったある地方チェーンも出て来ている。

「GSカレー」は、3種類のシーズニングを組み合わせて使い、辛さも店やセンターで独自にコントロールできる構造になっているので、自社の個性の辛さを簡単に出すことが出来る。スパイス、シーズニングは、ミックスのバランスが非常に重要で、少しバランスが崩れてもおかしな味になってしまう。ハンバーグのレシピを考えてみたらわかるが、ハンバーグに入れる調味料、スパイス、野菜などの量を決めるのは、企業の極秘事項である。一つのハンバーグを開発するためには、大変な試行錯誤を行う。塩の量を0.1%変えるだけで、味は大きく変わってしまう。ナツメッグを入れるかどうかで大きくもめたり、それとペパーをどうバランスを取るかとか、大きな問題になる。一部の成分を少し変えただけで、全体のバランスが崩れて、それを調製しようと焦れば焦るほど泥沼に入ってしまい、とうとう最初からまたやり直し、といった経験を持つ開発担当者はたくさんいるだろう。

カレーシーズニングはそういった意味でバランスが難しい。「GSカレー」の3シーズニングセットは、一つは大手カレーメーカーの純正カレーだが、それに2つのミックスを組み合わせる。一つは、25種類のスパイスとブイヨン、調味料が入ったシーズニングで、これでカレーの風味と旨味を拡大する。もう一つは、6種類のスパイスが入ったガラムマサラで、これでカレーの辛さを調製する。使用量は、全体の仕上がり量の0.5〜1%である。ガラムマサラとは、インド料理に使うミックススパイスで、ガラムマサラを多く使えばそれだけ辛さが増すようになっている。この量で自社の味を作ることが出来るのである。

普通カレールーというのは、スパイスが10%程度で、あとは、小麦粉、野菜エキス、ラード、ヘッド、調味料である。ところがこの「GSカレー」は、スパイスの量が15%以上になり、スパイスの率が非常に高い、その分香りが強いことになる。
もう一つ、スーパーで販売しているカレーだが、「じゃがいもを使わないでください」というレシピがついているもので、これは横浜にあるメーカーから出ている。業務用ではないので、フードサービスでは使えないかもしれないが、釜で手作り的に製造したものである。この人気が高品質な食材を売っているスーパーに広がり、メーカーでは全国に宅配便で配送しているのである。
このようなカレーが出て来て、今後カレーのマーケットはますます面白くなっていくだろう。

総合食品「フードライフ」96/10月号より
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