L=ロー

2013/05/24 1:54 に 松本リサ が投稿
「低」へのニーズだ。まず、ローファット。脂肪が嫌われている。低脂肪ミルク、低脂肪の肉、ステーキなどの切り身の背脂肪のカット、といったものである。脂肪というのは本来美味しさの元で、低価格の牛肉を美味しくするためには和牛の脂肪を持ってきて、それをフライパンにたっぷりと入れて溶かして、その脂肪で焼くと美味しくなる。かなり以前のこと、クジラの赤肉が普通にあった頃、その切り身を和牛の脂肪で焼いて、数十人の食肉技術セミナーの受講者に食べさせ、「この肉は何か当てろ」と命題を出したところ、肩肉だのもも肉だのと言っている、牛肉だと思い込んでいたわけである。豚の背脂肪を1センチ程度の太さのスティック上にカットをし、それにたっぷりと塩を振りかけて、何十本もまとめて瓶に入れておく、「豚背脂肪の塩漬け」である。これを魚をフライパンで焼くときにまずこの脂肪を入れ、熱して溶かしてから魚を焼くと、低価格、ジューシーな洋風の料理が出来上がる。ロシアなどの北の国で良く食べられる方法だという。
鶏肉の脂肪だが、長期間飼育した鶏肉を鍋にすると、黄色い脂肪が鍋の上に浮いてくる、これが本当に美味しい鶏鍋、水炊きだ。我が家で行なう鶏鍋は、まず高品質の地鶏の骨付きもも肉を丸ごと買い、それをナタで骨ごと大ぶりにカットをしてもらう。一緒にその鶏のガラを購入。まず、鶏ガラでたっぷりとスープをとり、それに骨付きもも肉のぶつ切りを入れて作る。このとき使う塩は我が家では西オーストラリアからの「五百年前の天然塩」を使う、これが又美味い。

このような脂肪であるが、低脂肪ブームで、大分変わってきてしまっている。美味しいものを考えるとき、これからのマーケットは二極化をしていくということが良くわかる。美味しさや味などはあまり関係なく、健康とか便利性に走って行くニーズと、美味しさや品質にこだわるニーズとの二極化である。健康や便利性と同時に低価格の方向に行っている大きな方向があるから、これに合わせた製品の開発と供給がビジネスとしてはひとつの流れになっていく。しかし、美味しさや高品質のニーズが減っているわけではなく、こちらもしっかりとしたマーケットがあるわけであるから、メーカーや販売店の思想として、このニーズ向けのビジネスも有望ということになる。そして、最近はこの中間がうまくいかなくなっているようだ。

次の「ロー」は、ローカロリー。一般のレストランや食品の通信販売などのパンフレット、メニューカードに、カロリーの表示をすることが多くなってきた。美味しいものは食べたいけれど、太りたくはない、そこでそれをバックアップして、カロリー表示をするようになってきたわけである。顧客はカロリーのたし算をしながら1日の食べ物を決めているわけである。たくさん食べるならば、ローカロリーのメニューを選ぶか量を減らすしかない、そういったニーズに対して、製品で応えるか、表示で応えるか、ということになる。

次は、ローコレステロール。これは品質になる。ローコレステロールで美味しいものにするために、食肉の場合は飼料や育成方法の調整をすることになる。

次は、ローソルト、減塩、低塩、無塩、である。塩の混入率というのは、例えばハンバーグで言うと、昔は全重量に対して0.8とか0.9%という時代があったのだが、最近は0.6%程度になってきている。同じレシピで関東が0.6%だったら、関西は0.5%といった具合に、関東と関西では0.1%違うのが好みとしてよいようである。漬物でこの減塩は顕著に製品に現れている。漬物は保存食そのものだったのだが、次第に塩が嫌われるようになり、最近では漬物というよりもサラダ感覚になってきている。そのために漬物メーカーでは衛生管理に十分に注意しなければならなくなってきている。以前ならたっぷりと塩を使っていたのでその塩そのものがバクテリアの繁殖を押さえ込んでいたのだが、「浅漬け」に代表される低塩製品になってきたので、HACCPに代表される衛生管理が重要になってきている。これはまあかえって良いことかもしれない。

塩については、2002年度から塩が完全に自由化になる。97年から一社百トンの枠までならば海外から輸入が出来るようになってきたが、これが完全に自由になる。今まで食品を製造するために使っていた塩はJT,昔の専売公社の塩が主だった。ところがこの塩は低価格であるが、味は良くない。しかし、高品質の塩を使おうとすると、非常に高価格な塩しかなく、良い塩を使いたいメーカーは困っていた。

今までの高級な塩はなぜ高価だだったかというと。JTの塩に、ミネラルなどを加えて、再加工していたから、加工費がかなりかかっていたからである。では全く天然の塩は日本になぜ現在(ほとんど)無いのかというと、1971年に塩業近代化臨時措置法によって従来の塩田が全廃されてしまい、昔からの天然塩の製造が出来なくなってしまったところから来ている。このような歴史の中で、やっと自由化になり、海外の本当の天然塩が低価格で誰でも輸入できるようになってきたのである。

さて、減塩であるが、塩が化学塩の場合と天然の場合とでは体への影響が違う、という見方をする専門化が多い。ということであれば、天然塩を使うことで、ヘルシーな加工方法ということになってくる。又、天然塩を加工品に使うことによって、製品の味が良くなるというのは、実際に天然塩を使っている多くのメーカーの専門家の共通した意見でもある。今までは天然塩は高くて使いたくても使えなかったのが、これからはコスト的に使えるようになってくるのである。前述したオーストラリアの「五百万年前の天然塩」についてはフーズデザインのホームページ<http://www.foodesign.net/salt-main.html>を参照。
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