ケータリング、スローフード

2013/05/24 0:57 に 松本リサ が投稿

ケータリング

米国ではケータリングビジネスが大はやりである、ちょっとしたパーティーから、大掛かりなイベントまで、食べ物、飲み物、テーブルと椅子、テントなど、あらゆるものを丸ごと持っていくビジネスだ。日本で言えば、会社内のパーティーをやるのに、ホテルの会場など借りたら高く付くので、会社の大会議室にし、ここに業者から全ての飲食物を持ってきてもらう、おまけに司会者、余興、お土産まで全部まとめて持っていく、これがケータリングビジネスである。

米国の話、ある時海岸で千人規模のパーティーを計画した主催者が、メインのメニューとして「ブイヤベース」を所望した、海だから海産物で、いろいろな種類食べられるから、そして秋の開催だったので温かいものが欲しかった。しかし、ブイヤベースというのは一人に一つの器になる。日本のように大ナベからガラガラすくうという発想など無い。そして「全員同時に食べ始められること」という注文も追加した。

ケータリング業者はこのような「注文」が来た場合「無理です」などとはぜぇ〜ったいに言わない、競争が激しいので、すぐに別の業者に行ってしまうからである。オーダーする方はそこら辺も心得ていて、無理難題を言い、どうケータリング業者がやるのかを楽しむという意地悪な所もある。これはオーダーする側としてはわくわく楽しいことである。

「任せて下さい」と軽く言い、心は重く帰ってきたケータリング業者は考えた。千個ある器に、スープと煮込む魚介類、野菜は、それぞれに入れておけばよい、これは準備が大変だが、簡単だ、日本で言えば一人分の小さな寄せなべを千個セットすればいいだけだから。問題は、どのようにしていっせいに火をつけるか、である。顧客にマッチを渡して火をつけさせる、等と手間を省くことを考えてはいけない、粋に、カッコ良く一斉に火を付けなければ次の仕事にも結びつかない。

夏の間業者は考え続けていたのだが、ある花火大会でひらめいた。

涼しくなった海辺にパーティーの日が来た、塀などにする建築用ブロックを二列に並べたラインがうねうねと折り返しながら、長い長い一本の河のようになっている。ブロックの間は15センチほど空いていて、覗くと炭が見え、その下に着火剤があり、更にその下に何やら電線のようなものが一本あるようだ。この上に千個の鍋が延々と並んで乗っている。

大人数がビールとワインでがやがやとパーティーは進み、いよいよブイヤベースイベントの時間になった。ケータリング屋はマイクでそれぞれのグループに指定した鍋の場所に行くように告げた。発注者は一体どうやってこれだけの鍋を一度に煮始めるのか、興味津々。ケータリング屋は全員がほぼ所定の鍋に前に行ったのを待ち、声高らかにブイヤベース鍋スタートの宣言をし、長い河の一番端に出た電線のようなものに火を付けた。

火はネズミ花火のように素晴らしいスピードで走りだした、臭いの少ない導火線だったのだ。1メートルに5個の鍋なので、総延長二百メートルの長い炉にいっせいに火が点き、しばらくすると炭が燃え、ブイヤベース鍋が沸き出した。ケータリング屋は言った「だからこの仕事はやめられないんだよ、スリルとサスペンスの連続だ!」。中発想からの大イベント。キーワード「つなげてみたら? 切ってみたら?

 

スローフード

ヨーロッパの富豪が集まるパーティーに、ある日本人実業家が出たら、日本にまだ来たことの無い人を見つけたので、ぜひ日本も見たらどうですか? と聞いたら、「日本は遠くて行くのが大変だ」と言った。「お金持ちなんですから、ファーストクラスで来れば楽じゃないですか」と言ったら、この富豪は飛行機など使わないそうだ、旅は船を使う。そういえば香港が変換になったとき、イギリスから来たトップは船で香港を出発していた。豪華にゆっくりと、なのである。

ファーストフードの時代になってから四半世紀ほど経つが、数年前から逆にスローフードが世界的流行になってきている。富豪でなくても、誰でもゆっくりしたい時代なのである。

スローフードは、食事をゆっくり楽しもう、伝統的食文化の保存、昔ながらの食材を保存し、生産者を保護していく、等と言った活動である。ゆっくりのんびり料理しよう、にもなる。

人気のあるローストビーフ、ポーク、チキンは、時間がかかる料理だ。時間をかけて煮込んだスープは価値がある。自宅でスモークをかける道具が売れているがこれも時間がかかる。鰻料理屋でオーダーしてすぐ出て来るのはロクな店ではない(オーダーが来てから鰻を割いて炭でじっくり焼くのが本物)。湯葉は作るのに時間と手間がかかるが、ここ数年でジワジワと売れてきている、料理店などで仕入れるには湯葉は高いものになるのだが、需要は伸びている。

早くではない、早いの飽きた・いやだ、ゆっくり行きたい、ゆっくり生きたい。手間ひまかけて調理したら? ゆっくり食べる提案をしたら? 大発想。キーワード「ゆっくりしたら? 時間をかけたら? 手間をたっぷりかけたら?」
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