鶏肉の種類と、居酒屋での使い方

2013/05/25 16:38 に 松本リサ が投稿
鶏肉の種類が多くなってきているようだが、基本的には3つのものに整理出来る。

まず一般のブロイラーである。これは鶏肉の生産効率を上げるために、米国で軍隊向けに最初開発されたものである。早く鶏が大きく太るように、飼料と飼育を工夫したものである。現在は53日程度の飼育で肉にすることが出来、低価格食材の秀才みたいなものである。

2番目は、ブロイラーではあるが、飼育日数を多くしたり、飼料を工夫したりして、一般のブロイラーよりも、味、品質、安全性などを追及したものである。これは3番目に説明する「地鶏」まで価格は高くなく、一般ブロイラーよりも1〜2割程度価格が上がる程度にしたものである。
飼育日数を多くすることでどのようなことになるかというと、水分が減って、イノシン酸が増える、という結果になる。水分が減るということは「水っぽく」何なるということになるし、イノシン酸は旨味の元であるから「肉の味がよくなる」ということになる。「75日鶏」「百日鶏」と言うのはこういった意味である。

3番目は一般的に地鶏と呼んでいるもので、有名なものでは、名古屋コーチン、秋田比内鶏、シャモ系などがある。これらの地鶏は価格も高く、流通市場ではスーパーマーケットマーケットというよりもデパートで高級な鶏肉として販売されているものである。しかし、地鶏にロードアイランドレッドなどの普及種をかけあわせたもの(地鶏と普及種のF1)が肉質や生産性から効率がよく、この種類が急速に普及をしている。

鶏肉の種類がわからなくなっているのは、この2番目と3番目が渾然となっていて、わかりにくいということなのである。地鶏と普及種のF1だか、地鶏なのだかがわかりにくいのである。F1にしても、いいものが開発されているし、これらの価格は古くからある銘柄地鶏よりも価格はずっと安い。F1を生産しているところが、自分の生産している鶏肉を「地鶏」と表現したり、同じようにF1を生産しているところが「地鶏の定義があいまいで、市場を混乱させている。誤解の無いように、本当に地鶏でなければ地鶏というべきではない」と言ったり、生産者の間でもかなり混乱をしている。

一般のブロイラーではなく、2番目と3番目の鶏肉を総称して「銘柄鳥」とか「ハイグレードチキン」と呼んでいるのだが、その銘柄はかなりの数に上ってきている。これは「こだわり」「安全性」と言った付加価値を付けた鶏肉がここ数年の間に良く売れてきているので、生産の方も開発をしてきているからである。ほんの一部を紹介するだけで図のようになる。地鶏の名前を出しているものもあれば、産地名をうたっているものもある。

では「銘柄鶏」はどんな工夫をしているかというと、例えば住商飼料畜産と国内の何社かの鶏肉メーカーとが共同で生産している「地養鶏」は飼料に工夫をしている。飼料の中に「地養素」と言う、炭を作るときに出来る「木酢液」や、海草等を入れ、肉に臭みがなく、コレステロールも少なくなるように作っている。佐賀県のヨコオフーズが生産している「三瀬鶏」(みつせどり)は、フランスの高級地鶏を親鶏にして開発されており、飼料は地元の穀類を使って肉の味を良くしている。岩手県の十文字チキンカンパニーの「菜彩鶏」は、抗生物質残留ゼロ、徹底した衛生管理、開放鶏舎、コーン中心の飼料など、安全性と味を追及している。銘柄鳥ではこのようになんらかの工夫をしているが、それが肉に味などの品質になって現れているかが問題で、いくら工夫をしても変化が無ければ無意味である。多く出てきている銘柄鳥は今後淘汰もされていくだろう。

海外からの鶏肉

1996年の鶏肉は、国内が約122万トン、輸入が57.5万トンというところである。肉としての輸入先は、中国、タイ、ブラジル、米国といったところで、94-95年の伸び率では中国とブラジルが伸びている。鶏肉については、衣を付けたり、串に刺して焼き鳥用などの加工をしたものを輸入しており、これがかなり伸びてきている。最も多いのはタイで、中国、米国と続いている。人件費の問題で、加工賃が安いところからのものが増えている。また、かわったところでは名古屋コーチンなどの地鶏をベトナムや米国で生産し始めているところもある。そこで作った肉を日本に輸入するのである。海外に種を持っていってわざわざ作るのは生産コストが安いからである。

居酒屋の鶏肉メニュー

各居酒屋の鶏肉メニューだが、「北の家族」の上位5位は、1.焼き鳥、2、大根サラダ、3.鶏の唐揚げ、4.ポテトフライ、5.冷ややっこ。「庄屋」は、1.焼き鳥、2.おすすめ料理、3.肉じゃが、4.鶏の唐揚げ、5.冷ややっこ。「榮太郎」(名古屋)は、1.ねぎま、2.げそ唐揚げ、3.焼き鳥、4.手羽先から揚げ、5.冷ややっこ。「酔虎伝」(大阪)は、1.焼き鳥、2.焼きそば、3.ポテト盛り、4.若鳥唐揚げ、5.牛タン塩焼き。「養老の滝」は、1.枝豆、2.フライポテト、3.大根サラダ、4.鳥もも唐揚げ、5.長崎ちゃーめん、「相州長屋」(神奈川)は、1.ねぎま、2.つくね、3.手羽先、4.正肉、5.ぎんなん。「宝の蔵」(大阪)は、1.つくね、2.ねぎま、3.かわ。4.もも肉、5.砂肝。「キリンシティ」は、1.シティポテト、2.ホウレン草とベーコンのサラダ、3.チキンバスケット、4.キノコハンバーグ、5.ソーセージの盛り合わせ。「ニューミユンヘン」は、1.若鶏唐揚げ、2.洋定食、3.ソーセージ盛り合わせ、4.蟹のつめ、5.びほろポテト。(以上、「ダイム」「月刊食堂」調査資料から)

居酒屋で使う原料では、低価格対応のものと、品質重視のものの二極化が進んでいる。居酒屋の鶏肉アイテムでは基本的な、焼き鳥、唐揚げを良い味のものにすることと、特徴のある独自のものを出すという2つのことが重要である。ベーシックなメニューを良い味にするためには、原料肉をいいものにすることが一つ。銘柄鶏などにグレードアップをすることと、鮮度のいいものにすることである。著者がよく行く東京吉祥寺のある居酒屋の焼き鳥はとにかくおいしいのだが、これは鶏肉とその鮮度がいいのと、本物の備長炭で肉中温度をぴたりと合わせて焼いているからである。一緒に刺しているネギも品質にこだわっている。

鶏肉の鮮度であるが、鶏肉が最もおいしいのは屠鳥してから12〜24時間がいいとされている。屠鳥直後は死後硬直で熟成もしていないので、硬くて旨味も出ていない。12時間すると熟成が進み、軟らかさも出て来る。そのよい状態が続くのが24時間ぐらいまでで、その後は次第に鮮度、味、ともに落ちていく。しかし、落ちていくスピードは、衛生管理や温度管理が良ければバクテリアの影響が少ないので落ちていくスピードは遅い。
「朝どり」とよく言うが、朝屠鳥したものを夕方食べれば12時間でいい状態だからだ。このためには、産地と直結して、加工も早くなければならない。産地で串に刺したり衣を付けたりといった半加工をしたものをいち早く店に届けるというシステムが必要になる。あるいは、海外加工でも出来るが、産地で加工、半加工した後、急速凍結をしてもかなりいい結果になる。冷凍するには、鮮度のいいうちに凍結することと、早く凍らせることである。トンネルフリーザーや、スパイラルフリーザーを使えば、下手なチルドを店で加工するよりもよっぽどいいものが出来る。

特徴のある独自のものというのは、スパイスやシーズニングをエスニック風にしたり、調理前に醤油ベースなどのタレに漬け込んで肉に下味を付けたり、ロースト、スチーム、ロティサリー(あぶり焼き)といった調理にこだわる方向である。
ある中堅コンビニエンスストアの惣菜なのだが「ウエスト8」と言うシーズニングをかけたチキンスペアリブが何年も売れ続けている、これは、スパイスのミックスもいいが、パパイアやパイナップルの酵素をミックスしているので、肉の旨味を出して、軟らかくもしており、それにエスニック風味がうまくマッチしているからだと思う。調理はバーベキュータイプである。コンビニエンスストアで何年もの間売れ続ける惣菜というのは珍しい。こういったものを居酒屋でも売ったらいい。

総合食品「フードライフ」97/3月号より
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