I = インターナショナル

2013/05/24 1:51 に 松本リサ が投稿
素材の美味しさということで、世界には素朴に美味しいものがあふれている。オーストラリアのアデレードにあるパスタのメーカーは、オーストラリアの大メーカーで、その素朴な美味しさには定評がある。ここで製造しているパスタ類の原料は、直接契約をしている農家から買っており、全てオーガニックかそれに準じた製造をしている。もちろんHACCPも行なっている。生産農家でのHACCPというのは、農薬や化学薬品の使用をコントロールするのがまずあるのだが、オーガニックではそれが無い、あるいは厳しく制限していることになる。農場外からの化学物質の影響もないようにしなければいけない。それぞれの農家での種付けから収穫までの状態と、収穫してからメーカーの工場までのロジスティクス(保管と運送)まで安全に行なわなければならない、そしてこれらは全て記録をとり、履歴が直ぐに取り出せるようにしておかなければならないのだ。

このメーカーの場合、一体どれほどの農家から購入しているのか、大量に製造しているのであるから、膨大な量の農家の管理ができるのか、といったことが心配になりそうなのだが、心配はいらない、何しろすべての農家数は8軒なのだから。たった8軒の農家からの原材料で製造しているのだから、それぞれの農家の巨大さが想像できる。

オーストラリアに滞在していると、ほとんどのところで食べるパンが素朴に美味しい、なんのことは無いただのパンなのだが、どうしてどこに行ってもパンが美味しいのか考えてみると、要するに原材料そのものがただ単に素朴で美味しいからだということに気がつく。


鶏肉については台湾での経験がある。あるとき台湾中部の小さな町への到着が夜遅くなってしまったので、ホテルのレストランが閉まってしまっていた。仕方がないのでほとんど街灯が無い部落のような町を探しても、レストランなどあるわけが無い。そこで柱が傾き、屋根が崩れかけた露店に毛の生えたような食堂に恐る恐る入ったら「鶏」「汁」「麺」という意味に取れるメニューがあったのでそれを注文した。「食中毒用の薬は持っていたな」と確認をして出て来たスープ麺を食べたら、これが実に美味い。鶏肉からとったスープがまるで天国のスープの味である。美味しさの理由は鶏肉の素朴な美味しさだったのである。

さて、この事件から行く先々の町で「露店酷似食堂」に入ったのだが、どこに行ってもおいしい鶏肉に出会うことが出来た。旅行の最後に台北の市場に行き、鶏肉はどうしているのかを見ると、市場への入荷はカゴに入った鶏でバタバタ元気だ。注文が来てから締めて肉にしたり、一羽を生きたまま買って行ったり、カゴに数羽入ったままを買っていったりしている。鶏肉の美味しさは内蔵関係が締めた直後の鮮度の良いときで、肉そのものは締めた後12〜24時間が最も味が出て、鮮度も良くて美味しいのだが、生きたまま買って行けばこれが出来る。そういえば日本も昔はそうだった。鶏そのものも地鶏であるから、味は濃い。

話はさらに続くのだが、帰りの飛行機は日本の航空会社で、機内食のメニューを見ると鶏肉である。何となく気になって、どこの鶏肉で作ったのか聞いてみたら、しばらく調べてから「日本の鶏肉だそうです」ということである。今度はいやな予感がしたのだが、これも調査だと割り切ってその鶏肉メニューを注文して食べたら、実に不味い。何日もの間台湾の美味しい鶏肉を食べ続けてきた後、日本の飛行機に乗った途端、不味い日本の鶏肉の洗礼を受けてしまったのだ。突然腹が立ち、一緒に居た商社の人に「台湾の美味しい鶏をなぜ日本に輸入しないんだ!」とかみついてしまった。日本の鶏肉も美味しいものはいろいろある、しかし価格の点ではみんな高い、台湾の価格とはいわなくとも、まともな価格でおいしい鶏肉を売ってくれないか、ということになってしまった。現実的には安全性や物流の問題があるだろうが、消費者としていえば、まともな価格で美味しい食材が欲しい、ということだけである。


話はまたオーストラリアに戻るが、あるとき西オーストラリア、パースの北から亜熱帯地域までの全く自然な大地を3週間、車で数千キロをぶらぶら走っていたときのことである。パースという大都市ではいろいろ美味しいものはあるのだが、北、つまり田舎に行けば行くほど、レストランでの食事は、美味しくなくなり、肉は硬くてその上大きくなっていく。次第に閉口して、ちょっとした町のスーパーに行って、豆腐、醤油、米、野菜果物、それに肉はラムがタダ同然の価格で売っているのでたっぷりと買い込んだ、1ダースのビールを入れても1万円程度だ。そこから500キロばかり北の「隣町」のリゾートにたどり着いて、キッチンのついたコンドミニアムを借り、早速冷ややっこでビールとワインを飲み始め、買ってきたラムをフライパンで炒め、残った脂でネギを炒めて醤油味ソースにし、薬味は生姜をチーズを削る道具で擦って乗せて食べたら、これが美味い美味い。ラム、ネギ、生姜、それぞれが素朴に美味しいのだ。ここでもまた腹が立ってしまった、オーストラリアのこんな地の果て(アウトバックという)なのに、素材がこんなに美味しい、日本はどうなっているんだ!となってしまったのである。


さて、一体何が言いたいかというと、誰でも海外に旅行に行けるようになってかなり経つが、海外でこのような「素朴な美味しさ」に出会っている人はほとんどだろう。その中には私のように腹が立ってしまったり、どうしてあの安くておいしい食べ物が日本にはないんだろう、あるいは、素朴な美味しさを持った食材はどうして日本は高いんだろう、という疑問を持っている人は多いはずである。こういったニーズに、どう応えることが出来るだろうか。これがインターナショナルというキーワードである。


「鶏卵肉情報」2000/11より
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