琥珀色の凍結スープ

2013/05/20 2:01 に 松本リサ が投稿
手作りソーセージを作っている小さな工場に行ったら、氷の替わりに、何やら濁った琥珀色の凍結した塊を入れている。
「スープ入れるの?」と聞いたら、その通り。
ソーセージの作り方は、赤身を挽き、それに脂肪を加える。腕肉には脂肪がある程度入っているが、おいしさ、こだわり志向の強いところでは、赤身の多い挽肉をサイレントカッターに入れてから、スライスした背脂肪をカッティングの最後の方にいれて、脂肪の食感を出すことをしたりする。
サイレントカッターは高速の回転する数枚のナイフでカットをして、赤身、脂肪、それに水を「乳化」させる。ここがソーセージ製造の大きなポイントだ。赤身と脂肪はそのままだと一緒にならないが、水、実際には高速カットの摩擦熱を下げるためにも氷を入れる。
このときの、温度、時間、カッターのスピードがうまくあうと、この相いれない三つのものが一緒になる「乳化する」。これをエマルジョンというが、うまくエマルジョンできるのは12℃ぐらいだ。
さて、エマルジョンのために入れる氷を、ここでは豚の筋や骨からとったスープを凍らせたものを入れているわけだ。豚のスープはラーメンのスープでおなじみで、おいしい。ラーメン店ではスープをどうするかが繁盛店になるかどうかの分かれ道だ。
ソーセージの製造でスープの氷を使うことで、ソーセージも特徴のあるものになる。
その後、薫煙をし、シャワーで洗浄急速冷却をしてからパックすることになる。

この工場に行き、スープの氷を発見し、うまそうだなーと言ったら、「少し持っていきますか?」。こういうお勧め、うれしい。
持って帰って、そのまま冷凍庫に入れ、忘れてしまった。
一ヶ月ぐらい経ったろうか、ビシソアーズ(冷たいじゃがいものスープ)の上に、琥珀色のプルプルしたのが乗っているのが朝食に出てきた。すっかり忘れていたが、思い出した、あのスープ氷をビシソアーズの上に乗っけたのだ。
早速、ビシソアーズ2/3,スープ1/3程度の割合でスプーンにのせ、とろりと口に入れたら、さっぱりしたじゃがいもスープと、濃いラーメンスープの煮こごりのような豚のスープ氷が実に素晴らしいハーモニーだ。
夏はコールドコンソメがレストランでもよく出る。コンソメは牛のスープを冷たくするとゼラチン状になるので、これを透明のグラスに入れてスプーンで食べると暑さが吹っ飛ぶ。

ある鶏肉加工工場で、モミジ(足先)が国内で売れないので、香港に輸出していると言う話をだいぶ以前書いたことがあるが、モミジで作ったスープは実においしい。
日本で売れないのは、見た目が気持ち悪いせいだと思うが、中国台湾香港では珍重する。
味がいいなら、スープに加工して販売すればだいぶ違うのではないかと思うがどうだろうか。モミジの2キロパックを運賃をかけて輸出手間もかけて香港に売るのか、スープに加工して販売して利益を取るか、どうなんだろうか。
 
著者の家で、スープを大量に作ってしまって余ったので、そのまま捨てるのもったいないと、角氷ができる製氷皿に入れ、冷凍したことがある。
スープは塩分もあるのでカチンカチンには凍らないが、ぐしゃっとした感じの半固体になる。
凍ったのを袋に入れて冷凍庫に入れておき、炒め物、鍋物、ソースなどにしばらく使っていた。ちょっとスープ氷を料理に入れるだけで味がとても良くなる。

食肉の処理をしていると、骨、筋など、おいしいダシの素がたくさんとれる。ある高品質の牛肉加工工場で「骨はどうしてる?」と聞いてみた。ここの肉の品質は良く、評判もたいしたものなので、当然引っ張りだこだと思ったらそうでもなく、「骨屋さんに引き取ってもらっている」と言う。
そんなもったいない話はないと思って、デリカテッセンメーカーに紹介したら、牛肉関連の製品に使えそうだと、開発している。
ハンバーグやメンチカツなど牛肉を使った製品にこの牛脂をミックスすると、味が良くなるのだ。
ちなみにここの骨は地元のラーメン店に全部持っていっていると言う、そうだろうな、脂の行き先が決まっていなかったことが奇跡みたいなものだから。

スープの製品化はいろいろとある。濃縮したもの、あるいは汁ダシのようにストレート。乾燥固形化したコンソメ、乾燥顆粒にしたもの。
パッケージは、顆粒や乾燥固形は、瓶に入れたり、スティックシュガーのようにしたもの、真空パックにしたもの、レトルトパッケージにしたもの、缶詰め、自動販売機でも販売できる缶飲料タイプなどいろいろ。
これらのパッケージは、一般の製品と同じで、中味よりもパッケージの方によっぽどコストがかかるが、レストランや大量調理用に冷凍でパッケージをしたらそれほどコストはかからないのではないだろうか。

先日地元吉祥寺のコンピュータ販売ショップをぶらぶらしていたら、レジにおでんの缶詰めが売っていた。なんだこれはと思ったが、すぐにわかった。このところ秋葉原のヒット商品の一つがこのおでん缶なのだ。缶パックも面白そうだ。

骨、筋のスープ化、考えてみませんか。
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