HMR業態へのハイグレードポーク売り込みの考察

2013/05/24 2:12 に 松本リサ が投稿
この2〜3年の間に、HMR、あるいは「ミールソリューション」と言うのが米国で急速に発達してきており、それが日本に雪崩のように入り込んできている。HMRというのは、家庭料理をそのまま販売する新しい業態になる。それならば惣菜ではないか、と言うかも知れないが、違う。

HMRはスーパーマーケットの惣菜の高品質化や、拡大とは違う。外食レストランレベルの調理技術を使ったメニューを、小売りする店である。その店では、調理に使っている食材も売る。であるから、スーパーマーケットで生鮮3品を販売していて、その食材を使って惣菜を作るのではなく、考え方はその反対である。レストランで使っている食材を、そのレストランで売る、と言うことになる。もっとはっきり言うと、料理が、レストランレベル、高品質なのである。多くのスーパーマーケットが業務用の食材を仕入れて、それを加熱しただけのものを売っているが、そういったレベルではない。そういったことで、HMRは、惣菜の高品質化、拡大化、ではない。レストランレベルの調理技術を持っているところが、その「料理」を小売りするのである。そして、これを担当するシェフ達が使っている食材、肉、魚、青果、そして調味料も一緒に販売をするのである。

この業態に進むために、まず、デリショップ、総菜店、スーパーマーケットの総菜の強化のポイントを考えてみる。


1.ハイグレード・ドそうざい」


「ドそうざい」の「ド」は、フランス語ではない、「ドロクサイ」の「ド」である。誰でも知っている、親しみのあるそうざいを、少し「ハイグレード」にすることである。

「パレートの法則」というのがあり、8:2の法則と呼ばれている。会社に100人の営業マンが居たら、その中の20人が80%の売上を上げている。という法則である。食肉店で言えば、2割のアイテムが8割の売上をあげている。ということになる。

ミンチ、小間切れ、値頃の焼き肉用やスライス類、これら良く売れるアイテムは、店全体のアイテムの大体2割位なものである。そして、このアイテムの売上は、店全体の売上の8割になっているのが普通である。

デリ、総菜もそうである。コロッケ、トンカツ、鶏の唐揚げ、ポテトサラダ、こういったものが売れ筋である。そこで、これからデリをさらに伸ばそうと思ったら、これらの「2割のアイテム」を良くすることである。

唐揚げならば、通常の唐揚げに加えて、原料の鶏肉を高級なものを使ったり、和風の味、スパイシーな味のものを加えるとか、コロッケだったら、ミートコロッケを出すとか、普通に良く売れているものを、原料、味、メニューの広がりなどによって「ハイグレード」にすることである。売れているアイテムをさらに拡大し、安定的に売上と利益を取るのである。


2.出来立て、あげ立て、それの演出のための自動調理


目の前で揚げている揚げ物はよく売れる。目の前で焼いている焼き鳥は良く売れる。この当たり前のことが、なかなか出来ない。

また、朝から一日に売る揚げ物をまとめて作ってしまっている店もある。まとめて作ったほうが「作業効率がいい」からだそうである。朝揚げたまま夕方まで売り場に放って置いた唐揚げを買わされるお客様はいい迷惑である。

あるデリストアで、作り立てのソーセージを売ろうということになり、インストアでカッター、スタファーを入れたらどうかということになった。ところがそんな場所など無い。そこで、カッティングした原料を工場から運び、ケーシングに詰めるところだけスタッファーを使って、お客様から見えるようにし、それをホットプレートで焼いて試食させながら販売したら飛ぶように売れた。ソーセージは生ソーセージで販売している。

ローストビーフを売るのに、インストアでローストをし、温かい焼きたてのものをカットしながら販売したら、これも売れている。誰でも経験していることだが。クリスマスのチキンを焼きながら販売するとよく売れる。

さて、この当たり前のことを実際に店で行うには、人手の問題と、料理方法を解決しなければならない。以前は難しかったが、最近はタイマーやコンピュータを内蔵して、かなり自動化できるシステムが完成されている。

たとえば、コンベクションスチーマーを使うことにより、バーベキュー、グリル、ローストなどの、オーブンや、グリラーを使った調理と、シューマイなどの蒸す調理を、食材を入れて後はボタンを押すだけで半自動で出来る。

低温調理オーブンを使うことにより、長時間かけてのローストや、シチュー、カレー、角煮などの煮込みを、無人で一晩煮込むことが出来る。店の終了時に食材を入れて温度とタイマーをセットすれば、翌朝来れば出来ているのである。

プログラム内蔵のフライヤーを使えば、揚げ物の食材を入れ、後はボタンを押すだけで自動的に揚げてくれる。8つほどあるボタンに、それぞれ油の温度と揚げる時間をプログラミング出来るのである。食材をフライバスケットに入れてボタンを押すと、自動的にバスケットが油に入り、セットした時間、たとえば2分45秒になると、自動的にバスケットが上がるようになっている。

詳しく書くとデリの調理システムの技術論になってしまうので概略だけにするが、このような新しい調理システムの導入は、けっして難しいものではない、調理の基本さえ知っていれば、今の作業を半分の人員で出来ることになるだろう。同じ人員ならば、2倍の仕事が出来ることになる。その分を、常に出来立てのメニューを売るなり、それを試食販売する時間に使える。


3.温かいものは、温かい状態で売る。


米国のスーパーマーケットでのデリの導入率は91%にもなる。ほとんどのスーパーマーケットでデリを販売しているのである。

全米外食産業の中のテイクアウトの構成のスーパーマーケットのシェアは、3年前は7%だったのが、いまでは12%となり、何と3年間で5%のシェアアップになった。それにかなり貢献しているのがホットデリケースである。

対面のホットデリケースの中の温度は63℃に設定されている。63℃というのは、これ以上温度が低いとバクテリアの問題になり、これ以上高いとオーバークッキングになって、硬く、ジューシーでは無くなってしまう温度である。この実に微妙な温度で保温しておくと、調理食品はある程度の時間おいしさを保ったまま販売できる。

確かに出来立てをすぐに売れるに越したことはないが、全部が全部そうはできない、それをカバーし、しかもクリーンな感覚で販売できるケースがあれば、出来立て販売とうまく連動させることが出来る。


4.和風とシーズニングに力を入れる


和風ブームである。ステーキにしても、どこのレストランに行っても、大体は「和風ステーキ」がある。ステーキソースも和風がある。サラダドレッシングにも和風があり、ファミリーレストランで見ていると、半分近くは和風を注文しているようである。

なぜ和風かといえば、ヘルシーであり、やはり日本人だからである、慣れている味、食べ方だからである。今デリを販売しているならば、「ハイグレード・ドそうざい」の感覚で、和風を開発してみたらいい。いくつかはヒットするアイテムになると思う。

和風の唐揚げ、和風のソース、和風のタレ、和野菜を使う、そして和風のネーミングである。

シーズニングもこれから伸びる味である。シーズニングとは、塩、調味料、ミックススパイスを混ぜたものであるが、エスニックブームが始まり出して来て、シーズニングをかけたチキンバーベキューとか、スペアリブ、ステーキが売れて来ている。自分の店独自のおいしいシーズニングを開発するといい。全てをミックスしたものを作っておけば、規定量をただ振り掛けるだけでいいから、作業も楽である。


5.ミンチを使ったアイテムを強化する


とくに利益、鮮度の店から、ミンチを使ったアイテムが強力でない店は、利益が取りにくい。ミンチ関連のメニューがよく売れていれば、ミンチ用の端材が常に使われていることになる。さらに売れれば、ひき材が新たに必要になる。

こうなれば、精肉の方でのミンチはいつも新鮮なものになる。変色をし始めたような鮮度の落ちたミンチが全く無くなり、いつもその日に挽いた新しいミンチになるからである。

そうなると精肉、生肉の売り場全体の鮮度が良くなる。明るい売り場になる。その上、ミンチを使ったデリが良くなる。そのデリを買いにお客様が来れば、鮮度のいい精肉まで売れることになる。これこそ最大の販促になる。

ミンチを使ったデリのアイテムは無限である。ハンバーグ、ミートボール、野菜肉詰め、ミートソース、ミンチカツ(メンチカツ)、ミートローフ、ソーセージ・・・・・。

味付けもいくらでも工夫が出来る。味付けについては、ワンタッチで出来るように、独自のシーズニングを作っておくことである。

いまでは粉になっていないものは無いくらい、あらゆるものが粉末やフレークになっている。玉葱などの野菜もフレークになっている。それらを使って、ミンチに、シーズニングと、牛乳又は水程度を入れたら、実においしい味のミンチデリのベース、味付けのミンチが出来るようにしておき、それを使ってミンチのデリを作るのである。

また、それをベースにして、ペパーを加えたホットな味を作ったり、カレーを入れたりといった拡充も簡単にできる。


6.これこそ他店には負けない、というアイテムをひとつ作る


唐揚げでもいい、ハンバーグでもいい、何でもいいから、何かひとつ「絶対に自身がある」アイテムを育て上げるのである。これがひとつあれば、それだけでお客様は来てくれる。

一時のティラミスブームではないが、ティラミスを食べたいためにイタリア料理にいく若い女性がずいぶんいたように、アンパンが欲しいから銀座木村屋に行くように、そんな魅力のあるアイテムを、たったひとつでいいから作れたら、強力な販促になる。


7.日変わりアイテムが、簡単にできるように


頻繁に通ってもらうお客様をつかんでおくためには、季節、週、天候、祭事などによって、「あの店に行ったら、いつも何か面白いものがある」と言われる日変わりアイテムを工夫することである。

とは言っても、それによって複雑なオペレーションになってしまっては、何にもならない、そのためには、ひとつの基本アイテムから、もうひとつ余計に出来るようにするのである。

たとえば、ローストビーフを作っていたとすると、ローストビーフをスライスしたアイテムは常に作るのだが、それに加えて、今日はサラダ野菜とドレッシングを使ってローストビーフサラダ、今日はパンを使ってローストビーフサンドイッチ。今日は御飯を使ってローストビーフ丼や焼き肉丼、今日はキュウリとかカイワレ大根をローストビーフのスライスで巻いてローストビーフアペタイト、といった具合にするのである。

こうすれば日変わりのアイテムは出来るし、ロスもなくなるし、第一ローストビーフのスライスよりも、それで工夫したメニューの方が利益が取れる。そして、作業も、基本アイテムにひとつだけ加えるだけだから、そんなに複雑なものではない。


8.残り物から作るアイテムのノウハウを持つ


あるスーパーマーケットのデリストア部門では、精肉で残った肉を取り出し、それに新しい肉材料を加えて、一日に8アイテムのデリを作ることになっている。なぜ8アイテムかというと、デリケースに置ける日変わりアイテムの場所が8アイテム分しか無いからなのだが、その8アイテムは、55のメニューアイテムから作ることになっている。

残った肉をチェックして、55のアイテムとてらし合わせて、その中から8つのアイテムを作るわけである。この方法だと、精肉の方のロスは無くなるし、日変わりアイテムも出来、一石二鳥である。


9.女性スタッフ


デリの非常に強力な米国フロリダのパブリックスでは、デリ部門は女性がやっている。なぜ女性かというと、「女性スタッフ、特に主婦、主婦経験者は、食材をいかにうまく売り切るかに大変すばらしいセンスを発揮する」ということである。

家庭の冷蔵庫を見てみると、実に色々な食材がある、肉、魚、野菜、調味料、その他。そういった食材を、悪くしないうちに、捨てないで、全てをおいしく食べるために、色々な工夫を主婦、女性はする。

「男は捨てることしか考えない」とパブリックスのデリプランナーは言うが、確かにダメなものは捨てないと店にはいいものは並ばないが、しかし、その前に、余ったらどうする、売れなかったらどうする、という工夫をすることが大切なことになる。

こういったことはマニュアルによっては出来ないが、主婦のセンスがあれば出来るのである。

東京新宿の三井ビルに出来たレストラン「シズラー」は、そのオペレーションシステムも話題になっているが、フレンドリーなサービスもすばらしい、なぜ出来たかというと「マニュアルを無くした」からであるという。自由な、自分のセンスによってフレンドリーなサービスを行うようにしたことが成功したということだが、デリのシステムに「普通の主婦」のセンス、工夫を入れたら、売れるメニュー、ロスの出ない調理が出来る。


10.セットパッケージ


閉店間際に、おかずセットなどにして売り込むことだけではなく、ランチセット、晩酌セット、お弁当セットと言った、工夫をしたセットを積極的に作ることである。残り物をただパッケージに詰めたことがありありのセットを、閉店間際に慌てて売ることよりも、もう少し前から、余り安売りをしないでもいい時間から、セットパックを工夫することである。売りきりのための「やっつけセット」より、メニューに合わせた心のこもったセットを早目に作ることである。


鶏卵肉情報センター「養豚情報」2000/1月号より
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